投資家のリスク許容度に改善の兆し、新発債が低格付け製造業まで拡大

社債市場で、投資家のリスク許容度 に改善の兆しが出ている。A格付けの社債に比べ信用度が低い、BBB 格製造業の新発債が売れ始めているためだ。市場関係者からは、投資家 の関心が信用度から実質的な投資利益に移りつつあるとの指摘が聞かれ る。

工作機械を手掛ける牧野フライス製作所は12日、国内普通社債(S B)100億円を法人向けに販売した。社債市場では、2008年9月のリー マン破たん以降、BBB格の製造会社の発行は難航していたが、今年1 月に三菱マテリアルが起債したのに次いで、牧野フライス債が2件目と なった。

ドイツ証券の村田昭仁クレジットアナリストは、「高格付け債の利 回りのスプレッド(基準金利への上乗せ幅)が大幅に縮小する中、牧野 フライス債のスプレッドは投資妙味がある水準。製造業のBBB格付け の債券の本格的な復活ののろしと言えよう」とコメントした。

主幹事の日興コーディアル証券によると、発行日19日の牧野フライ ス債は年限が5年で表面利率が1.73%。発行価格は100円だった。ブル ームバーグ・データによると、発行利回りは、民間の金融機関同士の代 表的な取引金利である円建てスワップレートを98bp(1bp=0.01%)上 乗せした水準で、牧野フライスよりも少し格付けが高いオークマが昨年 12月に発行した社債50億円の+70bpよりも高く設定された。

牧野フライスの社債発行は、08年7月の起債(100億円)以来、1 年8カ月ぶり。当時はJCRからのA-格付を取得しての起債だった。 しかし、JCRは09年8月、牧野フライスを受注の回復力が弱く低水準 にとどまるリスクを払拭できないとの理由で格下げした。今回のスプレ ッドは前回の+25bpを73bp上回った。

スプレッド

日興コーディアルのデット・シンジケート部担当者は当初、対スワ ップレート比+95bpから100bpのレンジで投資家に需要調査を行い、最 終的には+98bpで決まったという。牧野フライスの収益回復期待や表面 利率の絶対水準などが評価されて、信託銀行、信用金庫、信用組合など に販売できたという。

ただ、一部の生命保険の債券運用担当者からは、牧野フライス自体 は投資対象として評価するものの、スプレッドでは、100bp以上は欲し かったとの声も聞かれ、全業態が参加する起債ではなかったようだ。

工作機械受注は09年1月から4月まで前年同期比でマイナス80%超 と過去最低水準に落ち込んだが、中国やインドなどアジア諸国の景気回 復とともに、09年12月からプラスに転じている。牧野フライスでも、2 月の工作機械受注高が前年同月比3倍の30億600万円となり、08年11 月以来1年3カ月ぶりに30億円の大台を回復した。

流通市場

社債の流通市場でも投資家の購入意欲が示唆されている。日本証券 業協会の売買参考統計値によると、牧野フライスが08年7月に発行した 13年7月満期の社債はスプレッドが+100bpから+105bpで推移してい たが債券価格の上昇(利回りは低下)で現在は+95bpまで縮小した。

牧野フライスをBBB+に格下げしたJCRは12日の発表資料で「 今後の受注もアジア自動車業界や米国航空機業界の設備投資などにより 回復基調をたどる見通し。10年3月期の連結営業利益は赤字見込みだが 11年3月期についてはコストダウンも手伝い、大幅に改善していくと考 えられる」との見解を示した。

JCRの発表資料によると、財務面で当面はフリーキャッシュフロ ーの赤字が続く見通しだが、潤沢な手元流動性を保ち、資金面での特段 の懸念はないという。同社が財務省に提出した発行登録追補書類による と、社債で調達した資金は今年10月に満期を迎える社債の償還資金に充 当する。

牧野フライス総務部広報課の丸山敦マネージャーは、同社が12日に 起債をした理由について「市場環境の好転や借り入れとのバランスを考え て社債発行に踏み切った」と説明している。

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