日銀は新型オペ拡充か、政治の強い圧力に批判の声も-17日に決定

【記者:日高正裕】

3月15日(ブルームバーグ):日銀が16、17日開く金融政策決定 会合では、ブルームバーグ・ニュースの調査で有力日銀ウオッチャー 17人の大勢が新型オペの拡充による追加緩和を予想した。デフレの長 期化が見込まれていることから、たとえ追加緩和に踏み切っても、日 銀は引き続き強い風圧にさらされる公算が大きい。市場からは、政治 の強い圧力に対して批判の声も出始めている。

日銀ウオッチャーの多くが予想しているのは新型オペの規模拡大。 同オペは日銀が昨年12月1日の臨時会合で導入したもので、全適格担 保を対象に期間3カ月の資金を0.1%で供給する手段。残高は2月末 時点で9.6兆円。これを5兆円ないし10兆円拡大するとの見方が強い。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は「企業金融支援特別オペの分を新型オペに振り替えて全体の供給額 を15兆円程度にするのか、20兆円程度にするのかで、緩和姿勢の違 いが分かる」と指摘する。特別オペの残高は2月末時点で5.8兆円な ので、上積み額を5兆円にとどめれば、新型オペの数字は増えるが、 実態は現状と変わらない、と岩下氏は指摘する。

新型オペの期間延長については、今回は見送られるとの見方が強 い。大和総研の田谷禎三顧問は「企業金融支援特別オペを今月で終了 させることを考えれば、新型オペの金額を今月拡充しておくことは自 然だろう。今回は金額の拡大のみにとどめ、より長めの資金供給にま では踏み込まないのではないか」と予想する。

景気指標には明るさも

5日の一部報道とその後の株価の上昇などを受けて、追加緩和は すっかり織り込まれてしまった格好で、HSBC証券の白石誠司チー フエコノミストは「3月に実施しなかった場合、期末直前に為替・株 式市場の期待を裏切る形になるリスクがある」と指摘。日銀は「政府 の強い要請もあり、期末前の決定を重視する」とみる。

追加緩和観測とは裏腹に、足元では明るい指標も増えている。J Pモルガン証券の菅野雅明調査部長は「1月の消費総合指数が予想外 の上昇を示したほか、景気ウオッチャー調査や商工中金調査など中小 企業景況感の改善傾向が明確になり、機械受注の底入れが確認できた」 と指摘。これらは「当初懸念されていた景気対策効果のはく落に伴う 景気下押し圧力がかなり限定的なことを示唆している」という。

金融緩和観測が高まる布石となったのは1日の衆院財務金融委員 会でのやり取りだ。菅直人副総理兼財務相は「消費者物価は今年いっ ぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べた上で、 日銀に「より努力をお願いしたい」と要請した。亀井静香金融・郵政 担当相も、日銀は「直接国債を引き受けて財源を作るということをや ったら良い」と発言するなど、日銀に対する緩和要請が相次いだ。

政治の圧力は「強烈」

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「閣僚の金融政策に 対する圧力の強さは、近年の他の先進国の政治家の言動には見られな い強烈なものだ」と驚く。その上で「高齢化社会によって、いずれ日 本国債の何割かを海外投資家に保有してもらう必要が生じる。日本の 政府・議会が規律を持っていることを印象付けていかないと、国債を 彼らが購入する際は高いプレミアムを要求してくるだろう」と語る。

昨年11月の政府のデフレ宣言に対する批判も根強い。シティグル ープ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「政府が『デフレに陥って いる』とわざわざ宣言する場合、それに対する一定の対策もセットで 発表するのが正攻法だ。昨年11月は政府がそれをやらなかったことで、 一時的にせよデフレ予想を強めてしまった可能性が高い」と指摘する。

信州大学の真壁昭夫経済学部教授は「GDP(国内総生産)の6% を超えるデフレギャップを抱えたまま、金融政策だけでデフレの勢い を止めることは難しい。政府が『デフレはマネーの問題であるため、 日銀の政策に期待する』と言っている間は、デフレ状況に本格的な歯 止めが掛かることは困難だ」と語る。

「憂慮の念を禁じ得ない」

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「景気回復 を反映して市場金利が上昇し、円高傾向になることは、急激なもので はない限りは極めて自然な現象だ」と指摘。「景気の悪化が続いてい るのならまだしも、循環的な回復が始まっている中でさらなる金融緩 和や円安誘導を行うのは、経済の新陳代謝を阻害するだけでなく、景 気回復の家計部門への波及を再び阻害するのではないか」という。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「新型オ ペ拡充が遅かれ早かれ終わってしまう場合、日銀がどういう政策に追 い込まれていくのか、憂慮の念を禁じ得ない」という。日銀の政策の 副作用が小さければ許容範囲内だろうが、「仮に政策的な意味合いが あっても、それ以上に副作用が大きいものであれば、日本経済にとっ て最終的には悪い結果につながってしまうのではないか」としている。 ============================================================= 利下げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年4-6月】モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコ ノミスト ============================================================= 利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2011年1-3月】三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長、 信州大学真壁昭夫教授

【2011年7-9月】野村証券の松沢中チーフストラテジスト、シティ グループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト

【2011年10-12月】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノ ミスト、日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミ スト、JPモルガン証券の菅野雅明調査部長、第一生命経済研究所の 熊野英生主席エコノミスト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエ コノミスト、大和総研の田谷禎三顧問

【2012年1-3月】モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコ ノミスト

【2012年4-6月以降】三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテ ジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、HSBC証券の 白石誠司チーフエコノミスト、クレディスイス証券の白川浩道チーフ エコノミスト、バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフス トラテジスト、ゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフエコノ ミスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                     10   10   10   10   11   11   11   11
                    3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末
-------------------------------------------------------------
調査機関             17   17   17   17   17   17   17   17
 中央値             0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
 最高               0.10 0.10 0.10 0.10 0.35 0.35 0.50 0.50
 最低               0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
-------------------------------------------------------------
三菱UFJ 石井     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
日興コーディアル岩下     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30
みずほ証 上野       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.50
東短リサーチ 加藤   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
第一生命経研 熊野   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
BNPパリバ証 河野  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
モルガンS証 佐藤      0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
三菱UFJ景気研 嶋中  0.10 0.10 0.10 0.10 0.35 0.35 0.35 0.35
HSBC証 白石     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
大和総研 田谷       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
信州大 真壁         0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.30 0.50 0.50
野村証 松沢         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25
シティG証 村嶋     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.30
バークレイズC証 森田   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
ゴールドマンS証 山川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

アンケート回答期限は12日午前8時。「日銀サーベイ」金利予想、 経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを15日朝に送信しています。

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