外堀埋められた日銀、新型オペ上積みで急場しのぐか-16、17日に会合

16、17日の日銀金融政策決定会合 を前に追加緩和観測が高まっている。日銀はゼロ回答は難しいとの見 方が市場では強いが、経済物価情勢に大きな変化がないことから、技 術的とも言える新型オペの上積みで急場をしのぐ可能性が出ている。

複数の関係者が選択肢として挙げるのが、新型オペを少なくとも 5兆円追加する案。同オペは全適格担保を対象に期間3カ月の資金を

0.1%で供給する手段で、残高は約10兆円。これとは別に、3月末で 終了する企業金融支援特別オペの残高が2月末時点で5.8兆円あり、 その大半を新型オペで吸収すれば、実際上は技術的な修正に過ぎなく ても、金融緩和の強化という体裁を一応、整えることができる。

政府はデフレ脱却を当面の政治課題に掲げており、金融政策への 期待を高めている。日銀が今回、新型オペの拡充に踏み切っても金融 緩和観測はくすぶり続けるとみられる。4月1日に公表される日銀企 業短期経済観測調査(短観)など企業や家計のマインド指標を確認し た上で、日銀は必要なら一段の金融緩和も辞さない構えだ。

山口広秀副総裁は先月24日の講演で「物価下落幅が縮小するテン ポは若干遅いような印象を受けている」と指摘。「経済・物価動向や金 融情勢の変化などによって、必要があると判断する場合には、適時適 切な対応を講じていく」と述べた。野田忠男審議委員も4日の講演で 「必要と判断される場合には、迅速・果敢に行動したい」と語った。

景気の堅調さを示す指標も

こうした発言が続く中、5日の一部報道をきっかけに追加緩和観 測が浮上。これを好感して、日経平均株価は週末を挟んだ5、8日の 2日間で400円以上の大幅高となった。アールビーエス証券の西岡純 子チーフエコノミストは「メディアが大々的に報道し、『ゼロ回答はも はやなし』との観測が市場で形成されてしまった」と指摘する。

しかし、白川方明総裁は1月26日の会見で、先行きの経済成長率 は「見通しにおおむね沿って推移する」と指摘。さらに、上下のリス クは「おおむねバランスしている」と述べており、景気はほぼ日銀の 想定通りに推移している。むしろ、最近は景気の堅調さを示す指標も 多く、悪化していた雇用市場にも明るさが見えつつある。

東海東京証券の斎藤満チーフエコノミストは「ここへきて、日本 の雇用市場に底入れ、持ち直しの動きが見られるようになった。求人 倍率は底入れし、失業率も低下が見られるようになっている。回復の すそ野が広がれば、輸出と生産に偏っていた景気回復がより安定した ものになる」と指摘する。

唐突な金融緩和観測

物価についても、野田委員は4日の会見で「少なくとも物価下落 率の幅が1月の想定に比べて大きいとか小さいとはっきり言えるほど の動きは今のところ観察できていない」と言明。須田美矢子審議委員 も10日の講演で、物価を含めたリスクは「上下両方向にほぼバランス した状態にある」と述べ、追加緩和の必要性に疑問を投げ掛けた。

第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「そうした審 議委員の認識と、観測報道の間にはやや距離感がある」と指摘。「審 議委員発言から追加緩和に動かされる様子がうかがわれなかったので、 にわかに観測報道が発表されて、追加緩和が既成事実のように市場価 格に織り込まれていく様子は、唐突感がある」と語る。

実際、ある日銀幹部はブルームバーグの取材に対し、「報道には本 当に驚いた。情勢判断に変わりはないのに政策変更が必要なのか」と 困惑気味だ。そこで浮上しているのが、3月は追加緩和とも技術的調 整ともとれる措置にとどめ、4月末の経済・物価情勢の展望(展望リ ポート)公表時に必要ならもう一段の金融緩和に踏み切る案だ。

次の次の一手に関心

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「早い段 階で新型オペ拡充というカードを使い切ってしまうと、その後さらに 緩和措置を打ち出す必要が生じた場合、実に苦しい立場に追い込まれ る」として、日銀の苦しい胸の内を忖度(そんたく)する。展望リポ ートでは物価のマイナスが今後数年続くことがあらためて示される見 通しで、デフレを許容しないという姿勢との間で整合性が問われる。

今回、新型オペの技術的な上積みにとどめた場合、野村証券の松 沢中チーフストラテジストは「メディアはともかく市場が追加緩和と 受け止めるとは思えない」という。日銀への風圧は今後も続く見込み で、新型オペの期間延長や長期国債買い入れ増額、物価安定の一段の 明確化など、次の一手に市場の関心が集まり続けるとみられる。

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