国債市場は「チキンレース」に、3つの長期化-シティG証

2010年度の国債市場では、利回り の上昇(価格は下落)が近いと恐れて売却を急ぐと、その後の金利収 入を失う打撃の方が深刻な「チキンレース」になる-。シティグルー プ証券の佐野一彦チーフストラテジストは、国債増発や財政悪化への 懸念は根強いものの、国内景気の緩やかな回復とデフレ、日本銀行に よる金融緩和のいずれもが長期化するため、国債利回りの上昇は限ら れると予想した。

佐野氏は10日午後、顧客向けセミナーで講演し、長期金利の指標 とされる新発10年物国債利回りは1999年以降、おおむね1-2%で 推移してきたと指摘。ただ、世界的な金融危機後の景気・物価・利上 げ見通しを考慮すると、1%台後半が「コアレンジ」になるには時間 がかかり、10年度は大幅で持続的な金利上昇には至らない「我慢の1 年になる」との見方を示した。

10年債利回りの水準については「今月末までに1.2%を割り込む との見通しを維持する」と発言。来年度は1.15-1.65%で推移すると 予測した。3月末まで1.2%台を維持した場合には、金融緩和で金利 低下圧力がかかる中期債が焦点となり、10年債は11年3月まで1.2 -1.55%にとどまるだろうと述べた。

新発10年債利回りは11日、1.3%程度で取引された。昨年6月 11日には一時1.56%と08年10月以来の水準に上昇。11月10日にも

1.485%をつけたが、12月1日には約11カ月ぶりに1.19%まで低下す る場面があった。09年度まで3年続けて6月にピークを記録。佐野氏 は、7月の参院選前の金利上昇は1.4%前後が目安との見方も示した。

利回りピークは秋

国債利回りがピークをつける時期は、11年度予算の議論が活発に なる10-11月を第1候補と予想した。11年度の新規国債発行額は50 兆円台、発行総額は180兆円を超える見通しでリスクプレミアムが拡 大しやすい半面、企業収益の改善で税収見積もりが上振れする可能性 なども指摘。来年度の国債需給が大きく悪化することはないと分析し た。

日銀は1月26日、昨年10月末にまとめた「経済・物価情勢の展 望」(展望リポート)の中間評価を公表。消費者物価指数(生鮮食品を 除くコアCPI)上昇率については、政策委員による見通しの中央値 が11年度にマイナス0.2%だった。

昨年12月1日には、臨時の金融政策決定会合で、政策金利の0.1% で3カ月物の資金10兆円を供給する追加緩和策を決定。白川方明総裁 は記者会見で「広い意味での量的緩和だ」と説明した。同月18日には、 望ましい物価動向に関する「中長期的な物価安定の理解」について「ゼ ロ%以下の値は許容していない」との声明を出した。

日銀利上げ、12年度か

佐野氏は、日銀の利上げは「11年度までは考えにくい。早くて12 年度、場合によっては13年度になる可能性もある」と話した。財政再 建に直面する鳩山由紀夫内閣が来年度、国債市場での需給悪化懸念に つながるほどの大型景気対策を打つとは考えにくいとも予想した。

鳩山内閣が編成した10年度一般会計予算案は2日、衆院本会議で 可決され、憲法の規定により年度内成立が確実となった。総額92兆 2992億円、新規国債発行額は44兆3030億円で、いずれも当初予算と しては過去最大。税収は37兆3960億円と前年度当初比18.9%も減っ た。

国債と借入金、政府短期証券を合わせた「国の債務残高」は昨年 12月末に871兆5104億円と過去最大。政府が1月25日に国会に提出 した資料によると、国の債務残高は10年度末で973兆1626億円に達 する見通しだ。

日本の格下げ、要注意

シティグループ証券の江夏あかねシニアクレジットアナリストは 同セミナーで、日本の国債など(ソブリン)の格付け引き下げがあり 得るとの見方を示した。米格付け会社スタンダード・アンド・プアー ズ(S&P)は1月26日、日本の外貨建て・自国通貨建て長期ソブリ ン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更したと発表 した。

江夏氏は、S&Pは過去、格付け見通しを引き下げたソブリンの 約58%を半年程度で実際に引き下げたと指摘。「今後、注意を要する」 と強調した。ギリシャの財政危機に関しては、国債の償還が相次ぐ4 -5月が山場になると予想した。

同社の村嶋帰一チーフエコノミストは、円・ドル相場は11年半ば にかけて1ドル=90円程度を中心に推移すると予想。急激な円高や円 安が進む可能性は低いとの見方を示した。日銀の追加金融緩和によっ て円高圧力が抑えられる半面、米連邦準備制度理事会(FRB)の利 上げ初期には米株式・債券市場が不安定化しがちだと指摘した。

円は対ドルで昨年11月27日、84円83銭と95年7月以来の高値 を記録。今年1月8日には93円77銭に下落し、3月4日には88円 14銭に上昇した。11日午後1時時点では90円29銭。

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