「水」ビジネス最前線、周回遅れ挽回なるか-大手商社巻き返しに躍起

大手総合商社が水事業を強化してい る。100兆円市場への成長が見込まれる世界の水事業。しかし水道事業 の民営化が先行した欧米の企業と比べて日本企業の取り組みは周回遅 れとも指摘される。実績を積み上げ、企業の合併・買収(M&A)を狙 うなど巻き返しに躍起となっている。

住友商事の山埜英樹水事業チーム長は2月中旬、バーレーンに飛ん だ。同国政府が実施したムハラクでの下水処理場の新設・運営事業の入 札に参加するためだ。「リーマンショック以降しばらくプロジェクトが 止まっていた中で出てきた規模的にもまとまった案件」といい、サウジ アラビアなど中東全域への進出の足掛かりとして受注に期待を寄せる。

同案件は日量10万トンの処理量を持つ施設を建設し、2013年から 25年間にわたり操業するもの。下水管の敷設も含んでおりグローバル・ ウォーター・インテリジェンスによると、受注規模は2億5000万ドル (約230億円)。住商は仏の水処理会社デグレモンなどと組んで応札。 結果は6月ごろ判明する。

同入札にはメキシコで世界最大規模の下水処理場の建設、運営の事 業契約を1月に結んだばかりの三井物産も参加した。同社はメキシコで 下水処理場などを10カ所で展開。水事業を統括するプロジェクト開発 第一部の若菜康一室長は「主体的に水事業を展開できる力がついてきた」 と中東のほか中国やベトナム、ブラジルなどでの事業展開に意欲を示す。

水メジャーとの差

人口増や経済発展に伴い水需要も拡大。東レは2005年に60兆円だ った水事業の市場規模は25年には111兆円に拡大すると予測。なかで も施設の管理・運営事業が100兆円を占める。しかし日本企業はその部 分に入りこめていないほか「ある程度の実績がなければ入札すら参加で きない」(大和証券キャピタル・マーケッツ・汎アジア調査推進部の秦 大二郎アナリスト)。

そうした中、早期の拡大を狙いM&Aの検討も進む。1980年代から 水道事業の民営化を進めた英国。その英水事業会社の買収を丸紅は狙っ ている。水事業での丸紅出資分のサービス対象人口は約350万人。「3 -5年で1000万人まで拡大したい」と環境インフラプロジェクト部の 櫻庭敬介部長代理は語る。世界の民間水事業会社でトップ10前後の位 置までの引き上げを狙う。

同社はメキシコで海水淡水化と再生水処理、チリやペルーでは上下 水道の運営を手掛ける。昨年11月には中国安徽省の総合下水処理会社 の株式30%を取得すると発表、同国での下水処理事業に参入する。

ほかでは三菱商事が荏原製作所、日揮とともに「和製水メジャーグ ループ」として総合水事業会社を4月に発足させる。伊藤忠商事は仏ス エズなどと共同で豪州での海水淡水化事業を2012年から開始予定。双 日は中国河北省で産業排水の再利用事業を11年から始める。

ただ現状での収益貢献はまだわずか。世界最大の水道事業会社、仏 ベオリア・エンバイロメントの水事業の利益は1000億円を超える。そ れに対し商社の中で先行している丸紅の水事業の収益でも10億円程度 にとどまる。野村証券の成田康浩シニアアナリストは「案件を積み上げ 存在感を高めれば将来の収益機会は広がる」と注目する。

「青いゴールド」と形容されるなど資源としての水の重要性は高ま るばかり。仏では1990年代初めにベオリアなどが海外進出した際、当 時のシラク大統領が自らトップセールスを行った。世界では国を挙げた 取り組みが進み、大和証券CMの秦氏は「成長のカギを握る要素は国家 の支援体制」と指摘。いかに事業規模を拡大させるかが今後の課題だ。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE