【コラム】ギリシャに出動するゴーストバスターズは誰だ-M・リン

「誰に電話するの?」は、1984年 の大ヒット米映画「ゴーストバスターズ」の決めせりふだった。ギ リシャとスペイン、ポルトガルが最悪の事態に陥れば、われわれは このせりふを再び聞くことになり、欧州の納税者はその答えを知り たがるだろう。助けを求める電話の相手は欧州連合(EU)か、欧 州中央銀行(ECB)、それとも国際通貨基金(IMF)か。

ECBのトリシェ総裁はじめ欧州の当局者は、ユーロ圏諸国が ソブリン債危機でIMFに支援を要請するのは屈辱的との姿勢を示 唆。欧州の問題は欧州で解決すべきだと訴えている。

その点こそが間違いだ。プライドを振りかざしている時間はな い。緊急資金支援をまとめ上げなければならない場合、それを主導 するのはIMFであるべきだ。IMFは専門知識が豊富で、あらゆ る批判を受け止めることができる。これに対して、ユーロという共 通通貨設立ルールの中には「救済」条項はない。

ここ数週間、ギリシャの巨額財政赤字問題への取り組みでIMF の資源と技能に支援を仰ぐ案が、同国を中心にあちこちの場でもて あそばれた。ギリシャの財政赤字は国内総生産(GDP)の

12.7%に達している。同国のパパンドレウ首相は先週3日、IMF が今回の危機解決に向け何らかの役割を担う可能性に言及。「その 投機的性格故に市場がわれわれの望むような反応を示さない場合、 最後のよりどころとなるのはIMFだ」と語った。

「適切」でない

トリシェ総裁は翌日の4日、わざわざその可能性を排除する行 動に出た。同総裁はフランクフルトでの記者会見で、IMFに支援 を求めるのは「適切」でないとの認識を示した。大半の欧州諸国指 導者も同意のようだ。ドイツのショイブレ財務相は、IMFの代替 機関として欧州版となる「欧州通貨基金(EMF)」の創設を支持 している。

はっきりさせておく必要があるが、巨大な財政赤字を抱えてい るのはギリシャだけではない。ポルトガル、スペイン、アイルラン ド、やや小規模ながらイタリアも同様だ。これらの国はどこも債券 市場で攻撃を仕掛けられかねない。瀬戸際の状況で、赤字補てんの ための資金調達に向けて債券を発行するのはほとんど不可能だろう。 そうした状況に陥った場合、誰に支援を求めるのか明確にしておく ことが必要だ。

IMF主導の支援に対し、EUやECB当局者が消極的なのは 理解できる。通貨ユーロは、強い国の強い通貨を意図して誕生して いる。IMFという組織は通常、混迷する貧しい国に乗り込む。ユ ーロ加盟国がIMFに頭を下げる事態に陥れば、屈辱的であるのは 間違いない。ユーロ圏全体としての評判にも傷がつきかねず、地域 の将来も脅かされかねない。

危機には専門家

しかし、そうしたプライドは捨てて、IMFに登場を願うべき だというのには十分な理由がある。

第一に、IMFは世界の資本市場で信用を失った国々への対処 法について専門的知識を持つ。IMFはそうした状況に取り組むた めのスタッフと経験を有している。ECBや検討されつつあるEM Fもそうした専門性を築き上げることは可能かもしれないが、正直 なところ、誰でも心臓発作に見舞われたら心臓病の専門医師団に診 察してもらいたいだろう。教科書を開いて、急ごしらえで勉強して 処置に当たるという医師に診察を頼むだろうか。危機にあっては経 験を積む余裕はないのである。

第二に、IMFの処方せんは厳しいものになるだろう。財政赤 字削減が必要なユーロ諸国はすべて、歳出の大幅カットが必要にな る。賃金削減と雇用喪失、定年延長といった、アイルランドが歳出 抑制のため掲げている政策に類似した対策が求められる。そうした 政策は国民から人気がない。そんなとき「悪玉」になるのはIMF がうってつけだ。IMFがすべての批判を受け止め、EU・ユーロ 圏当局から国民の怒りをそらしてくれることだろう。

救済せず

第三に、IMFに支援を求めれば、救済規定を盛り込まなかっ たルールを改正しなくて済む。加盟国は金融危機の際に互いを救済 する必要はないとの立場でスタートした。これは重要だった。ドイ ツの納税者は、財政への責任感で劣るギリシャやポルトガルのため に資金援助したくはない。ドイツ国民がそれを強いられれば、ユー ロ圏はもはや加盟し続けたいクラブではないと結論付けかねない。

IMFに支援を求めることは、そうした事態をうまく回避する ことにつながる。同組織には世界の主要先進国が加盟し、資金を拠 出している。欧州の一部諸国の支援で緊急融資を取りまとめる必要 が生じても、救済するのはユーロ圏メンバーということにはならず、 全世界ということになる。

電話の相手

もちろん、現在の危機をユーロ圏内部で解決することも可能だ。 ユーロ圏諸国は、一つの経済協力圏の一つの家族であることを目指 している。互いに助け合うことに積極的でないとしたら、大した家 族とは言えない。

しかし、IMFによる支援はそれ以上に理屈に合っている。今 こそ、その道を選択すべきだ。そうすれば、債券市場でユーロ加盟 国が再び攻撃に見舞われた際、誰に電話をかければよいか明白とな る。(マシュー・リン)

(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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