年度末は円安に歯止めか、海外留保の本国送金やIPO絡みの需給観測

米国の景気改善期待や日銀の金融 緩和観測などを背景に、外国為替市場では円安が進んでいるが、年度末 が近付く中、日本企業の海外法人から本国への配当などの送金が本格化 し、一段の円安に歯止めをかける可能性がある。

8日に発表された1月の国際収支によると、日本企業が海外で得た 利益の本国送金が反映される「配当金・配分済支店収益・受取」は 1881億円だった。これは2006年から08年の3年間の1月平均の約3 倍で、JPモルガン・チェース銀行為替資金本部の佐々木融チーフFX ストラテジストは、「年度末に向けて海外留保利益の本国送金が加速し ている可能性を示唆するもの」と指摘している。

佐々木氏は3月の送金額の見通しについて、「海外における日本企 業の利益が右肩上がりで増えているのに加え、海外留保利益の本国送金 は例年3月に最大となる傾向がある。また、今回は税制改正後、初の年 度末となるので、送金額は前年3月(約8000億円)を上回る可能性が ある」と分析、1月同様、送金額が過去平均の約3倍、「1兆5000億 円規模になってもおかしくない」とみている。

日本政府は、海外にとどまっている企業の内部留保の還流を促し、 経済活性化につなげるため、昨年4月から海外子会社から受け取る配当 利益の95%を非課税としている。経済産業省によると、日本企業の海 外子会社における内部留保残高は06年度末時点で17兆円超。その後 も留保残高は増加している可能性が高く、足元では20兆円程度に達し たとの見方もある。

IPO絡みの円買いの思惑も

こうしたレパトリエーション(本国への資金回帰)に加えて、市場 では第一生命保険が実施するIPO(新規株式公開)に絡んで、海外投 資家から円買いが発生するとの観測も浮上している。

第一生命は、4月の株式会社化と上場に伴い、発行済み株式1000 万株のうち国内で460万9535株、海外で249万6635株を売り出す。 同社はブックビルディングの仮条件を12万5000~15万5000円に決 定。売り出し価格は19日に発表され、需要状況によっては10万株追 加される。

NTTスマートトレードの工藤隆市場情報部部長は、「実際にどの 程度出るかはわからないが、市場ではIPOに絡んだ大量の円買いが出 るとの思惑が出ている」とし、3月末に向けてはレパトリに絡んだ円買 いも見込まれるだけに、「目先は投機的な円買いが強まる可能性がある 」と話す。

円は週明け8日に対ドルで1ドル=90円68銭と2月23日以来の 安値を付けたが、その後は下げ渋る展開となっており、この日の東京市 場では90円近辺で推移している。

JPモルガン・チェース銀の佐々木氏は、ドルが再び弱含み始める 中、円買いの需給要因も考えれば、「年度末に向けてドル・円は下落し やすい環境にあり、再び87円方向に向かう可能性もある」と指摘して いる。

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