鳩山首相が原発・新幹線のトップセールス-韓国などに出遅れ反省

トヨタ自動車がリコール問題で 苦境に立たされる中、鳩山由紀夫首相が自動車と並び日本の基幹技 術である原子力発電所や新幹線などの海外へのトップセールスに本 腰を入れ始めた。アラブ首長国連邦(UAE)の原発受注で実績を 挙げた韓国などに比べると出遅れは否めないが、新興国などのイン フラ整備を日本企業のビジネスに結びつけることで、日本の経済成 長につなげるのが狙いだ。

「やはり他の国に比べて、国を挙げてのトップセールスが十分 ではなかったと反省をしている。これからはトップセールス的にし っかりとやるということで頑張っていきたい」。鳩山首相は3日の参 院予算委員会で、ベトナムなどで計画されている新興国・途上国の 原子力発電所建設計画を日本企業が受注できるよう政府として全面 支援していく考えを強調した。

UAEの原発建設計画は昨年12月に韓国電力公社(KEPCO) が率いる韓国企業中心のグループが200億ドル(約1兆7856億ドル) で受注。日本の日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE) の連合などが敗退する一方、韓国は受注に至る過程で李明博大統領 が親書や電話攻勢などでトップセールスを展開した。

城西大学の霧島和孝教授は鳩山首相によるセールス外交につい て「遅すぎた感じがする。日本は政治的後押しがない中で企業が単 独でやってきた。新興国での大規模インフラを企業単独で売り込む のは難しく、国の後押しも必要だ」と強調した。

首相は3月に入ってベトナムのグエン・タン・ズン首相に原子 力発電所の建設計画に対する親書を送付したほか、2月に来日した ケニアのオディンガ首相には日本の原子力発電システムの導入を促 すなど巻き返しに必死だ。外務省担当者によると、首相は今年1月、 ブラジルのルラ大統領に対しても同国の高速鉄道に関する親書を送 った。

新成長戦略

鳩山内閣は、韓国側がUAEの原発受注を発表した3日後の昨 年12月30日、新成長戦略(基本方針)を決定。「アジア経済戦略」 の項目の中で、「新幹線・都市交通、水、エネルギーなどのインフラ 整備支援や環境共生型都市の開発支援に官民挙げて取り組む」と明 記した。建設業の海外展開も含め、これらの取り組みは「アジアを 起点に広く世界に展開していく」方針も掲げた。

三菱UFJ投資戦略運用部の石金淳(きよし)・シニアストラテ ジストは、首相が進めるトップセールスについて「原子力発電の技 術供与ができるのは日本が一番、日本の新幹線は世界一だ。今、日 本の国益は何かを考えた時に政治家として当たり前のことをやって いる。やらないと困る」と指摘する。

当面の目標となるのはベトナムの原子力発電所建設計画の2期 工事とブラジルの高速鉄道計画だ。

ベトナムの1期工事はロシアが取ったが、日本は、UAEでの 敗退を踏まえた体制整備も進めている。直嶋正行経済産業相は3日 の参院予算委員会で、韓国の勝因について「韓国電力公社という電 力会社が全面に出て、後々の運用の面を含めて商談したと聞いてい る」と指摘。その上で、「設備を作った後の電力の運用も含めてきち んと提案できるような、いわゆるシステム輸出という形で対応でき るような方策で今後努力をしたい」と語った。

その方策として浮かんでいるのが政府と東京電力や関西電力な どが出資する新会社の設立構想。原発が完成した後の運転段階での 技術指導などのアフターケアを保証するもので、5日付の読売新聞 朝刊などが伝えた。平野博文官房長官は同日午前、閣議後の会見で、 「最終のものは承知していないが、政府としてもバックアップして いこうという流れの中でそういう議論が今、されている」と検討中 であることを認めている。

一方、ブラジル当局によると、同国の高速鉄道計画は180億ド ル(約1兆6000億円)を投じて今年下期からサンパウロとリオデジ ャネイロを結ぶ高速鉄道の建設を始める予定だ。外務省担当者によ ると、日本政府はここでも受注を目指している企業連合への金融支 援を検討している。三井物産、三菱重工、東芝、日立製作所などが 中心となると2日付の日本経済新聞朝刊は報じている。

1960年から64年にかけて首相を務めた池田勇人氏は、フラン スのシャルル・ド・ゴール大統領から「トランジスターラジオのセ ールスマン」と揶揄(やゆ)されながらも、任期中に日本は経済協 力開発機構(OECD)に加盟し、先進国の仲間入りをした。

池田氏は所得倍増計画を発表し、日本経済の成長にまい進した が、鳩山首相は、新成長戦略で「2020年度における我が国の経済規 模(名目国内総生産)650兆円程度を目指す」という数値目標を掲 げ、トップセールスに励むことになる。

--取材協力:Tsuyoshi Inajima、Chris Cooper、岩谷多佳子Editor: Hitoshi Sugimoto, Tetsuki Murotani 参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 広川高史 Takashi Hirokawa +81-3-3201-8641 thirokawa@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 東京 Bill Austin +81-3-3201-8952 billaustin@bloomberg.net

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