野田日銀委員:低金利で債務増を長期間続けられる保証ない

日本銀行の野田忠男審議委員は4 日午前、大津市内で講演し、「わが国の長期金利は1%前半で安定的 に推移しているが、こうした水準を維持しながら、債務を増加させる ことを長期にわたって続けられる保証はない」と述べ、政府に対して 財政規律を確保することが重要だと訴えた。

野田委員は「財政バランスの悪化が長期金利を上昇させ、金融政 策の効果を減衰させるリスクにも市場の意識が高まっている」と指摘。 「事実、ユーロ圏加盟国の中で最も深刻な財政問題を抱えるギリシャ では長期金利が上昇した。財政の持続可能性への信頼がひとたび失わ れると、市場の評価が急落するリスクを如実に示している」と語った。

さらに、日本が巨額の財政赤字を抱えながらも長期金利が安定し ている要因として、国債発行のほとんどが国内居住者による需要によ って賄われていることが指摘されているとした上で、「今後の高齢化 などの財政負担を考えれば、先行きもそれを賄うだけの貯蓄超過を国 内だけで確保し続けていくことができるか不確実性がある」と述べた。

1日の衆院財務金融委員会で、菅直人副総理兼財務相が消費者物 価指数について「今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行しても らいたい」と言明。日銀に対し「より努力をお願いしたい」と要請。 亀井静香金融・郵政担当相が日銀は「直接国債を引き受けて財源を作 るということをやったら良い」と述べるなど、16、17日の金融政策決 定会合を前に日銀に対する要請が相次いでいる。

長期国債買い入れのリスク

野田委員は日銀の長期国債の買い入れについて「副作用に注意す る必要がある施策」と指摘。「長期国債の買い入れが財政ファイナン スと誤解され、長期金利が実体経済の見通しから乖離(かいり)して 上昇するという副作用が発生するリスクがある」と述べた。

その上で「長期金利の上昇リスクは、多くの先進国が直面してい る重大なリスクであり、米英の中央銀行が昨年、国債買い入れに踏み 切った際に、長期金利が直後の一時的な低下の後、大きく上昇した事 実を放念してはならない」と語った。

日銀に量的緩和の再開を求める声も出ている。野田委員は量的緩 和の効果について「2001年の量的緩和政策採用時のように、金融シス テムに大きな不安がある際には、その不安を和らげ、金融市場を安定 させるという効果を発生させる」としながらも、「経済主体の支出活 動を刺激し、物価を上昇させるという効果は非常に限定的だ」と述べ た。

高まる政治圧力

野田委員はさらに「現在は、かつての量的緩和政策のように、日 銀の当座預金残高に目標を設けて資金供給を行うという方法をとって はいないが、市場の需要を満たす流動性を十分供給してきており、市 場における流動性に対する安心感を与えているという点では、かつて の量的緩和政策と同様の効果を発揮している」と述べた。

UBS証券の道家映二チーフストラテジストは「日銀としては、 福井前総裁時代の量的緩和策に匹敵する政策対応を既に実施済みと考 え、追加緩和策の必要性は乏しいとの認識だろう」とした上で、「た だ、日銀は市場との対話よりも政治向けのアピールを優先しよう。仮 に政府が追加経済対策に踏み切れば、日銀への政治圧力はさらに強ま ろう」とみる。

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