米国の長短金利差は拡大へ-FRBの資産売却にらみ

米連邦準備制度理事会(FRB) が政策金利を引き上げずに前例のない景気刺激策を解除し始める場合、 米国債の投資家にとって過去の事例は参考にならないようだ。

金融政策が変更されれば、米国債の長短金利差が縮小ではなく拡 大につながる可能性があり、こうした状況は少なくとも1980年以降で 初めてとなる。プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー) 18社の一角であるドイツ銀行によると、FRBがバランスシートに保 有する2兆2900億ドル(約204兆円)の証券を売却するとの見通しに 加え、米財務省による過去最大規模の国債入札を受けて長めの債券利回 りは上昇が続く見通しだ。

利回り曲線のスティープ(傾斜)化は企業や住宅購入者の借り入 れコストを押し上げる一方、記録的な低金利で運用難の状況にあったフ ァンドマネジャーらを引き付けることになりそうだ。2010会計年度 (09年10月-10年9月)の米財政赤字は過去最大の1兆6000億ドル に膨れ上がる見通しであることから、オバマ米大統領はその穴埋めなど で国債に投資資金を引き付ける必要に迫られている。

モルガン・スタンレーの米金利戦略責任者、ジェームズ・キャロ ン氏(ニューヨーク在勤)は「FRBの長期にわたる低金利維持政策で、 短めの金利は長期的に低めの水準にとどまるだろう」と予想。「FRB が低金利を維持する中で、供給量とインフレに対するリスクプレミアム は上向く可能性がある。それに伴い利回り曲線の期間プレミアムは上昇 し、それを反映して10年債利回りも上がるだろう」と分析した。

米国債の2年債と10年債の利回り格差(スプレッド)は2月18 日に過去最大の2.94ポイントに拡大。26日は2.80ポイントに縮小し た。先週1週間では2年債利回りが10ベーシスポイント(bp、1b p=0.01%)低下し0.81%。政府が1260億ドルの中長期債入札を実 施したものの、10年債利回りは16bp低下し3.61%だった。

FF金利誘導目標

FRBはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を08年12 月以降0-0.25%に据え置いている。米財務省による過去最大級の借 り入れで2年債と10年債のスプレッドは07年6月のほぼゼロから拡 大している。

ドイツ銀はスプレッドが3ポイントに拡大し、10年債利回りは年 央までに4%に上昇すると予想。モルガン・スタンレーはスプレッドが 4-6月(第2四半期)までに3.25ポイントに達し、10年債利回り は4.5%を付けるとみている。

スプレッドは先週、FRBが公定歩合を0.5%から0.75%に引き 上げたことから縮小した。FRBは08年9月のリーマン・ブラザー ズ・ホールディングス破たんを受けた金融貸し出しと証券買い取り措置 でバランスシートを1兆ドル強増加させただけに、公定歩合の引き上げ を受けて投資家の間では次のFRBの政策に関心が強まっている。

バーナンキFRB議長は先週、公定歩合引き上げはFF金利誘導 目標引き上げに向けた準備を意味してはいないと言明。半期に1度の議 会証言では、景気回復は「初期段階」で借り入れコスト上昇に耐えられ るほど力強くないため「長期にわたり」FF金利誘導目標を低水準に維 持するだろうとの見通しを示した。10日には、「短期的には」資産を 売却する考えはないとの見解を示していた。

スティープ化圧力

ただ、1月26-27日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事 録によると、FRB当局者らはバランスシートをどう縮小していくかを 議論し、一部メンバーは近い将来の資産売却を主張した。

ドイツ銀行の米金利調査担当責任者、ムスタファ・チャウデュリ ー 氏はFRB当局者が「資産売却の選択肢を残したことは、FRBが 出口戦略に近づいても利回り曲線のスティープ化の圧力は続くことを示 唆している」と指摘した。

利回り曲線は通常、FRBの利上げ開始に伴いフラット(平たん) 化する。ブルームバーグが集計したデータによると、80年以降の金融 引き締めサイクルでは最初の利上げの前後3カ月はフラット化していた。

04年の5月以降の利上げサイクルでは、スプレッドは1.9ポイン トから9月までに1.51ポイントに縮小。同年3月時点のスプレッドは

2.27ポイントだった。ユナイテッド・ネーションズ・フェデラル・ク レジット・ユニオン(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、ク リストファー・サリバン氏は「このような状況を通して、われわれは未 踏の領域に踏み込んでいる」と指摘した。

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