大幅なコスト削減と急拡大、トヨタのリコールの背景か

トヨタ自動車の渡辺捷昭前社長は、 社長就任後初めて米国の投資家と会談した際、日本の自動車最大手のト ップとして似つかわしくないことをした。自身の実績を誇ったのだ。

就任後3カ月に満たない2005年9月12日、渡辺氏はニューヨー クの金融業界関係者らと向き合っていた。同氏はこの場で、自らが策定 したコスト削減計画により6年間で100億ドル(約8940億円)余りを 節約できたと説明した。

同氏は「CCC21」と呼ばれる原価低減プロジェクトを推進。そ の後も、全開発工程の費用低減と、部品コストの一段の削減などを通じ てさらなる原価低減を目指す「バリュー・イノベーション」を始めた。

トヨタのトレードマークである着実で漸進的な原価低減策「カイゼ ン」からすれば強力なステロイド剤のようなこれらの計画を同社取締役 会は推進し、投資家は喝采(かっさい)を送った。だが、コスト削減と 事業急拡大への執着ぶりは、長くその品質の高さで評価を得てきた同社 が世界で850万台のリコール(無料の回収・修理)を発表し、米国の 議員や弁護士から集中砲火を浴びている理由の一端を説明している。

「乗っ取られた」

北米トヨタ自動車社長を務め、トヨタ本体初の米国人取締役にもな ったジム・プレス氏は、「経済性を重視し創業者一族に反する略奪者に 数年前に乗っ取られたことが、同社の問題の根源だ」と語った。

同氏は、具体的な名前は明らかにしなかったものの、そうした幹部 が「顧客第一の視点を守り続けるのに必要な性質を持ち合わせていなか った」と指摘した。プレス氏は、不本意な配置転換を受け、07年に退 社した。

トヨタの北米部門の広報担当バイスプレジデント、ジム・ワイズマ ン氏は、「コストを削減すれば自動的に品質も低下するというのは真実 ではない」とし、すべての自動車メーカーはコスト削減を重視している と述べた。

トヨタ広報の岩崎三枝子氏によれば、現在トヨタ副会長を務める渡 辺氏はこの件に関するインタビューの申し入れを拒否した。

渡辺氏はまたニューヨークでの会談で、トヨタは設計完了から生産 までの期間を約12カ月と、業界平均の24-36カ月よりも短縮できる と述べた。

豊田章男社長の方向性

09年6月に同氏の後を継いだ豊田章男社長は今週、こうした変更 が製品の不具合につながった可能性を認めた。

また昨年9月、投資家との会合で、豊田社長は成長目標が同社を痛 めてきたと述べたと、現場にいたトヨタ幹部1人が明らかにしている。 同社長は、年間の世界販売台数を最高70万台引き上げ、従来の3倍余 りとする目標が、社内のエンジニア陣の能力が追いつかなくなるほど生 産を加速させ、開発作業を部品供給業者に外注することが多くなったと 述べたという。

豊田社長は、傷付いたトヨタのイメージ改善と社内プロセス見直し を表明した。ただ過去の経営トップの行動は、同じく創業者一族の豊田 英二元社長が1973年の第一次石油ショック後にコスト削減を説明する 際に使った言葉、「乾いたぞうきんをさらに絞る」に沿っている。

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