トヨタ社長、引責論に結び付かず、改革のチャンス-投資家

一連のリコール(無料の回収・修 理)問題に関し、トヨタ自動車の豊田章男社長は米議会の公聴会で、 業容の急拡大に社内体制が追いつかなかったことを認め陳謝した。投 資家らは公聴会での説明に一定の評価を与えており、トップの責任問 題に及ぶことはないとみている。

豊田社長が日本時間25日に米公聴会で行った説明内容に関し、ア ドバンストリサーチジャパンの遠藤功治マネージングディレクターは 「当初の想定より印象は非常に良かった」と評価。冒頭の陳謝などに 「豊田社長の正直な態度が評価されている印象」があり、意見が相違 したまま終わった電子制御スロットルの問題についても「トヨタ側が 正々堂々と主張しており、マイナス要素ではない」としている。

東海東京調査センターの加藤守アナリストは「目新しさがなかっ た」とした上で、「マスコミが取り上げる新事実がないわけだから報道 が鎮静化の方向に向かうと予想され、結果として効果的だった」とみ ている。ただ、「市場としてはこれで株価に反映されるわけではなく、 販売面などを見極めていくだろう」としている。

公聴会までは批判を強めていた米議会からも一定の評価を与える 声が上がっている。下院監督委メンバーのダレル・アイサ議員は「米 国民は今回の公聴会で、トヨタおよび米当局がしっかりと対策を取っ ていくという約束を取り付けた」と電子メールでコメントした。

25日午前のトヨタ株は前日比2.1%高の3345円で始まり、同

0.6%高の3295円で午前の取引を終えた。

立て直しのチャンス

約30億ドル(約2700億円)を運用するアトランティス・インベ スメント・リサーチのエドウィン・マーナー社長は公聴会前に、豊田 社長について「就任早々トラブルには見舞われたが、完全な敗北を喫 したわけではない」とし、むしろ「就任早々、体制立て直しのチャン スを得た」と指摘した。

豊田社長はトヨタグループ創業者の豊田佐吉氏の曾孫に当たる。 1984年にトヨタ入社、商品企画や品質管理担当などを経て、2009年6 月に社長に就任。昨年10月の講演では、販売低迷で赤字のトヨタの現 状について「慢心があり」、「企業の凋落(ちょうらく)で存在価値が 消滅する一歩手前の段階にある」という認識を示していた。改革の取 り組み成果を出す前に、一連のリコール問題が出てきた。

マーナー社長は、米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長が米 公聴会で、ユーザーからの苦情を受けて関連情報を日本に送ったと繰 り返し主張するばかりだったと述べ、「こういう姿勢だから物事が迅速 に進まない」と指摘。また、KBC証券の自動車担当アナリスト、ア ンドリュー・フィリップス氏は「トヨタは地域間の情報共有や協力体 制をしっかりと確立させる必要がある」と語った。

顧客視点が欠けていた

豊田社長が米公聴会で証言した内容はこうした指摘を受けた形と なっている。リコールの背景として「これまで安全、品質、量という 順番だった優先順位が混乱し、以前のように立ち止まって考えること ができなくなっていた」ことを挙げた。

リコール認定については、日本の本社の「お客様品質部」で判断 することになっているが、「顧客視点が欠けていた」として、今後は各 国・地域ごとに技術的な問題にも対応して判断するように改革する方 針を表明。その上で、「すべての車に私の名前がついている。この名前 にかけて信頼回復に取り組むことをお約束します」と誓った。

米国トヨタ自動車販売に37年在籍し、外国人初の取締役で社長も 務めたジム・プレス氏は「豊田社長は今のトヨタを救える唯一の人物 だ」と語った。今のトヨタに欠けている顧客視点を持っており、「トヨ タの企業文化である美徳を具体化していくことができる」とみている。

トップとして改革断行こそ急務

日本では経営陣の刷新で再出発した例がある。2000年にリコール 問題から経営陣の責任追及に結び付いた三菱自動車や、食中毒事件の 対応で批判が集中した雪印乳業などがその例だ。

企業の危機管理などが専門の大阪経済大学の岡田晃客員教授は 「トヨタの一連の問題は、過去、社長交代劇に結び付いた日本企業の 不祥事とは性格が違う」と指摘する。「死亡例まで隠ぺいする悪質なも のというより、技術問題に固執して対応が後手に回った印象」と述べ た上で、「米側では政治的な色彩も帯びて報道が過熱しているが、冷静 な議論に戻ると本質も見えてくる」という。

トップ交代について、岡田氏は「問題を受けてすぐに辞任という のは、企業の危機管理上、むしろまずい」と述べ、「海外からは悪い意 味で日本的な責任の取り方とみられるリスクもある」という見方を示 した。また、アドバンストリサーチジャパンの遠藤氏も「企業イメー ジなど総合的に考えると、創業家出身で、就任して1年にもならない 豊田社長が辞任する可能性は低い」とみている。

投資会社のマーナー社長は「厳しい追及を受けることで、社内改 革に理由が付けられる」と述べ、豊田社長が改革を実行しやすくなる という。しかし、「1年後に改革の成果が表れていない場合は、そのと きこそ辞任すべきだ」とし、改革が急務と強調した。

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