鉄鉱石トレーダー、価格システムの「転機」に賭ける-市場は18兆円

インターバンク・ブローカーで世 界最大手、英ICAPの鉄鉱石ブローカー、アンディ・ストリックラン ド氏は、約5000マイル(約8000キロメートル)離れた中国での事業 をいかにして獲得するか構想を練っている。

ストリックランド氏は鉄鉱石スワップを扱っている。このスワップ を利用すれば、鉄鋼原料の鉄鉱石の買い手や売り手は価格を数カ月前に 固定することができる。自身のチームの人員を2人から8人に増やし、 近くのデスクで電話の受話器に向かってブローカーらが忙しく叫び声を 上げる石炭チームと同じ規模にすることを目指している。鉄鋼メーカー が固定価格での供給契約に依存する代わりに個別委託による買い付けを 選好する動きが強まるなか、取引の拡大を狙う。

ストリックランド氏は「可能性は非常に大きい。転機に到達するき っかけが必要なだけだ」と語る。

このデリバティブ(金融派生商品)を扱うブローカーやトレーダー の人員拡充は、鉄鉱石取引が流動性や出来高で他の商品に匹敵するよう な市場に発展する可能性を見込んでいる。

クレディ・スイス・グループによると、鉄鉱石取引は年間約2000 億ドル(約18兆円)と、原油に次ぐ市場規模を擁する。クレディ・スイ スの鉄鉱石ディーラー、フィリップ・キリコート氏(ロンドン在勤)に よると、鉄鉱石スワップ市場は向こう2年間に10倍に拡大し年間3億 6000万トン相当に達する可能性がある。

2008年5月に取引が始まったこの市場のパイオニアらにとって、 市場拡大の見通しが事業の裏付けとなっている。ドイツ銀行の金属取引 担当の世界責任者、レイ・キー氏やクレディ・スイスの投資家セールス 担当の世界責任者、カマル・ナクビ氏は、世界最大の鉱山会社、英・オ ーストラリア系BHPビリトンに促され、スワップの提供を開始した。 BHPは鉄鉱石の価格設定方法に不満を抱いている。

信じられないほどの規模

キー氏(37)は「鉄鉱石は、金融界でこれまで存在していなかった 最後の現物商品市場の1つだ」と指摘。鉄鉱石取引を1980年代の原油 に例え、「その規模は信じられないほどだ」と話す。

キリコート氏によると、年次契約に関する合意が期限を迎えても更 新されなくなり、年次指標価格に基づいて販売される鉄鉱石の割合は、 現時点の70%から5年間で40%に縮小する見通しだ。BHPはウエス タンオーストラリア州産鉄鉱石のうち指標を利用して価格を設定する割 合を09年7-12月(下期)に54%と、1-6月(上期)の68%から引 き下げた。

鉄鋼需要が第2次世界大戦以降で最大の落ち込みを示したことを受 け、アジアの鉄鋼メーカーは09年に値下げを要求。価格は7年ぶりに 引き下げられた。鉄鉱石生産大手、ブラジルのヴァーレや英豪系リオ・ ティント、BHPは、日本と韓国の鉄鋼メーカーと33%の値下げで合 意した。

変動率の上昇

中国の鉄鋼メーカーにとって、この値下げ幅は十分ではなかった。 鉄鉱石供給各社と世界最大の鉄鋼生産国である中国との価格交渉は暗礁 に乗り上げたまま終わり、指標価格は正式に承認されることなくスポッ ト市場の開放が進んだ。

キー氏は「交渉がどれほど厳しいものになるか、誰も予言できない と思う」と述べた。同氏は07年にドイツ銀に入社。それ以前は米モル ガン・スタンレーで貴金属担当の世界責任者として5年間勤務した。

価格変動率の上昇も現物鉄鉱石やスワップの需要拡大につながった。 ICAPのストリックランド氏は「指標価格設定システムは長期的には 支持し難い。市場心理は月ごとに変化している」との見方を示した。

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