米AIG救済の核心に潜むゴールドマン-元凶CDO組成で最大関与

米下院監視・政府改革委員会が保 険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の公的 支援をめぐる公聴会を1月に開催した時、最も注目を集めたのはガイ トナー財務長官に対する国民の厳しい目だった。

議員らは、ガイトナー長官がニューヨーク連銀総裁を務めていた 時期に大手金融機関を裏口から救済し、事実を隠ぺいする措置を指揮 したと批判。同長官は金融システム崩壊を回避するための適切な対応 だったと反論した。

ブルームバーグ・マーケッツ誌(4月号)は、公聴会ではより重 要だった可能性のある事実が見落とされていたと指摘する。下院監 視・政府改革委の有力メンバー、ダレル・アイサ議員(共和、カリフ ォルニア州)は、公聴会の記録として住宅ローン担保証券(MBS) を列挙した5ページにわたる文書を提出した。米ゴールドマン・サッ クス・グループや仏ソシエテ・ジェネラルなどの金融機関がAIGと 契約した計621億ドル(約5兆6550億円)相当のクレジット・デフ ォルト・スワップ(CDS)の保証対象となったMBSだ。

このCDS取引でAIGは破たんの瀬戸際に追い込まれ、公的資 金により救済された。救済措置を水面下で取りまとめたニューヨーク 連銀は、1年余りにわたりこの文書の完全な公表を見送ってきた。公 表を希望したAIGの要請にも応じなかった。

作家で元投資銀行家のウィリアム・コーハン氏は、こうした情報 公開の欠如は、政府が金融危機の原因の適切な説明を妨害してきた事 実を裏付けていると指摘する。米証券会社ベアー・スターンズの失墜 を描いた著作があるコーハン氏は「この秘密主義は、救済が場当たり 的なものだったことを示す新たな例だ」との見方を示した。

特定されたCDO

アイサ議員が公表した文書は、AIGが保証した債務担保証券 (CDO)を具体的に特定することにより、2008年9月のAIG救済 をめぐる論争の核心に切り込んだ。同社の格付けが引き下げられ、C DOの価値が急落する一方で、デリバティブ(金融派生商品)の一種 であるCDSを保有する金融機関は担保を回収したのだ。

この文書により、CDOのパフォーマンスがいかに悪かったのか が初めて衆目にさらされた。一部には名目価値の75%を超える損失を 被ったものもあった。しかも、AIGからCDSを購入した金融機関 と、そのCDSで保証されるCDOの組成を担当した金融機関がほと んどの場合同一だったことも、同文書とブルームバーグの集計データ が示している。

元スワップ・トレーダーで、現在はストラクチャード・ファイナ ンス・コンサルタントのダニエル・カラッチ氏は、金融機関は価値が 大幅に低下した証券に対する保証を、そもそもなぜAIGから取り付 けることができたのかを説明しなければならないと指摘。また住宅ロ ーン会社を傘下に持つ金融機関に対しては、CDOに組み込まれたロ ーン債権の質に関するインサイダー情報の入手がなかったかどうか、 説明を迫るべきだと訴えている。

文書で明らかになった具体的な証券とブルームバーグのデータに よると、AIGが保証する対象となったCDO621億ドル相当の172 億ドル分をゴールドマンが組成、この規模はどの金融機関よりも大き かった。バンク・オブ・アメリカに後に買収されたメリルリンチは132 億ドル相当を、ドイツ銀行は95億ドルをそれぞれ担当していた。

こうした詳細は、ニューヨーク連銀が事実を覆い隠そうとした理 由を示唆しているとデューク大学ロースクールのジェームズ・コック ス教授はみている。「ゴールドマンのため、あるいは投資銀行がリスク にさらされるとのマクロ上の懸念から、ゴールドマンを守ろうとした のかもしれない」と指摘した。同社の広報担当マイケル・デュバリー 氏はコメントを控えた。

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