【日本株週間展望】1万円攻防、米国出口でマネー逆流も-景気支え

2月第4週(22-26日)の日本株 相場は、日経平均株価が1万円の節目をにらんで安くなりそう。1月 中旬以降の世界的な株価調整につながった3つのリスクへの警戒がほ どけてきたところに、米国の公定歩合引き上げが水を差した。金融緩 和で株式市場に流れ込んだマネーの逆流が、再び懸念され始めている。

東海東京証券エクイティ部の倉持宏朗部長は、「株式投資の側から は、これまでの世界的な経済刺激策の動きが解消されていくように見 える」と指摘。米国を中心とした海外勢の投資資金引き揚げの可能性 に加え、国内でも年度末に向けた持ち合い解消売りなどが出やすく、 「需給面で厳しい」と見ている。

ギリシャの財政赤字問題、オバマ米大統領の金融機関に対する規 制強化姿勢、中国の預金準備率引き上げは、世界の株式市場で最近不 安視された3つのリスク。このうち米金融機関の規制で目立った新材 料はなく、ギリシャ問題では欧州連合(EU)指導部がギリシャへの 支援姿勢を見せ、過剰な不安は後退した。16日のEU財務相会合で具 体的な支援策は発表されなかったが、大和総研投資戦略部の野間口毅 部長は「ギリシャの財政危機が差し迫ったものではないことの裏返し」 と話す。

一方、中国人民銀行は12日に2カ月連続となる預金準備率の引き 上げを表明。上海株式市場が旧正月で19日まで休場と、投資家の反応 を探るには不透明さを残すが、ひと足先に17日から再開した香港ハン セン指数が同日の取引で上昇。預金準備率引き上げは「不動産価格の 上昇をけん制したものだった可能性が高く、経済そのものの流れを変 えるものではないと判断された」と野間口氏は言う。

今年最大の上げから一転、米公定歩合上げが直撃

3つの懸念後退は欧米など海外株式、国際商品市況の上昇を通じ て日本株市場の参加者にも安心感を与え、17日の日経平均は前日比 272 円高と今年最大の上げ幅を記録した。相次ぐ米経済統計の改善傾 向も支援し、代表的なチャート分析の1つである均衡表を見ても、抵 抗帯の下限で踏みとどまり反発余地を探る気配だったが、19日に212 円安の1万123円と急落、一挙に楽観ムードに暗雲が立ち込めてきた。

米連邦準備制度理事会(FRB)は18日に公定歩合を従来比0.25 ポイント引き上げ、0.75%に設定した。FRBのデューク理事は「金 融政策見通しの変更を意味しない」と強調。アトランタ連銀のロック ハート総裁も、米経済の回復基調はなおぜい弱で、引き上げは早期引 き締めを意味するものではないとの認識を示したが、金融緩和からの 本格的出口戦略への地ならし的動きが中国に続き米国でも見え、市場 では昨年からの過剰流動性相場の変調につながるとの懸念が浮上。日 本や香港などアジア株の下落を招いた。

勢い失う海外勢買い

日本株相場の温度は、東証1部売買代金の約6割を占める海外投 資家が調節している。中華圏の旧正月、米国が祝日休場だった15、16 日の売買代金は、大発会の1月4日以来の低水準に沈んだ。主要国と の対比で出遅れを修正する動きから、海外勢は昨年12月、今年1月と 2カ月連続で1兆円以上を買い越したが、足元はその勢いを失いつつ ある。

米バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチが毎月まとめ る世界のファンドマネジャー調査でも、2月は日本株をオーバーウエ ート(アンダーウエートを引いたネット)とする比率が1月から5ポ イント増えたものの、割安と見る比率も低下、メリルリンチ日本証券 の菊地正俊株式ストラテジストは、海外勢の「日本株への見方は横ば い」と分析する。企業決算も一巡し、「日本独自の株高要因がないため、 世界の投資家による最近の日本株の評価改善は相対的なもの」と受け 止める。

米国の公定歩合引き上げは、19日朝の東京外国為替市場で一時1 月14日以来となる1ドル=92円台のドル高・円安を演出した。東海 東京証の倉持氏は「日本の輸出関連株などにはプラスの側面もある」 というが、海外勢の動きには慎重にならざるを得ないようだ。

大台割れには買い、米首脳やトヨタ社長証言

ただ、東京証券取引所が18日に発表した投資部門別売買動向によ ると、約2カ月ぶりに日経平均が1万円の大台を割り込んだ2月2週 の局面では、外国人が3週ぶりに買い越したのに加え、個人、年金資 金などを反映している信託銀行、投資信託など国内勢も総じて買い方 に回った。米国、中国の金融引き締めショックが海外市場でうまく吸 収されれば、節目接近の場面で下げ渋る展開が予想される。

2月4週の日本株相場、金融市場に影響を与えそうな材料は、国 内では26日に1月の鉱工業生産、全国消費者物価指数が発表され、海 外では23日に米国の2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、 ドイツのIfo景況感指数、25日に1月の米耐久財受注の公表などを 控える。また週を通じ、バーナンキFRB議長をはじめ米政策当局首 脳の議会証言、講演なども多数。

24日には、世界的リコール(無料の回収・修理)問題に揺れるト ヨタ自動車の豊田章男社長が、米下院監視・政府改革委員会の公聴会 で証言する予定。米議会によるトヨタ・バッシングの度合いも日本株 の方向性を左右しそうだ。

【市場関係者の当面の日本株見通し】
●富国生命投資顧問の桜井祐記社長
  「FRBは公定歩合を引き上げたが、景気刺激策の途中であり、
どんなメッセージを出しているのか、見極めが必要。3月期末を控え、
投資家は損失を防ぐ目的で、積極的な売買が行えないことも、相場の
動きが鈍くなる要因。日経平均は1万円を挟んだ小動きで、低調な売
買が続くだろう」

●日興コーディアル証券の宮原浩之エクイティ部部長
  「日経平均レンジは9900円から1万300円を想定。春節明けの中
国株が焦点だが、香港ハンセン指数の下げから判断し安く始まりそう。
日本株への影響も否めず、日経平均は1万円割れの可能性がある。た
だ、米国が出口戦略の入り口に立ったのは、当局が景気底割れはない
と判断したため。日本の金融緩和圧力から為替も円安に向かう可能性
が高く、円高による業績下方修正リスクの後退から下値は堅い」

●岩井証券イワイリサーチセンター長の有沢正一氏
  「米国の公定歩合の引き上げは、日本株にとっては悪い話ではな
い。米景気が回復している証拠で、為替はドル高・円安方向に向かう。
リスクマネーの収縮懸念から短期的にはインパクトがあるが、景気回
復に伴う実需買いが入ると見る。ただ、週明けの中国株の動向には警
戒が必要。引き締めの初段階でマーケットが過剰に反応してしまうと、
政策当局は今後手を出しづらくなり、中国景気に悪影響が出る」

--取材協力:長谷川 敏郎、常冨 浩太郎、浅野 文重 Editor:Makiko Asai、Shintaro Inkyo

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