日航:株式上場最終日、半世紀の歴史に幕-稲盛体制で再建

日本航空は19日、株式が証券取引 所で取引される最終日を迎え、株価は1円の売り気配で終えた。東京 証券取引所は20日付で日航株の上場を廃止、日航は上場から49年目 で取引所から撤退する。ナショナル・フラッグ・キャリアとして、戦 後の日本と世界の空をつなぎ、一時は輸送統計で世界首位となったこ ともある。

日航は1月19日に会社更生法適用を申請、裁判所に受理された。 負債総額はグループ2社を含め2兆3222億円、金融機関を除く事業会 社で過去最大の経営破たん。企業再生支援機構の管理下で、政府の協 力を仰ぎながら運航を継続、法定3年以内の再建を目指す。

日本航空株式会社として1951年に資本金1億円で設立、61年に 東証に上場。その後、世界の航空競争で生き残りを目指し、国内3位 だった日本エアシステムと2002年に経営統合し、持ち株会社を設立、 04年には両社の完全統合体制が発足した。

日航の株価は昨年9月に100円台半ばから急落、11月に100円を 割り込んだ。今年1月末には終値で1円となり、その後は、売買を頻 繁に繰り返すデイトレーダーを中心とした投機的な一部投資家のマネ ーゲームの対象となった。09年3月末の時点で株主は約38万人。

上場廃止について、独立系投資顧問会社のバリューサーチ投資顧 問の松野実社長は「投資家からすれば国に裏切られたと感じる向きが 多いのではないのか」とし、「日航は政治的な意味合いを強く帯びた会 社であったのは事実。結局、経営者、従業員、組合、そして政治家や 官僚を含め広い意味で甘えの構造ができてしまい、それに埋没した格 好だ」と述べた。

東証常務を経てコーポレート・ガバナンス支援事業などを手掛け るENアソシエイツの代表取締役、早稲田大学大学院客員教授の長友 英資氏は「当事者から充分な情報開示が行われないまま、上場廃止の 日を迎えてしまったことは非常に残念だ」という。

再建には難題が山積

日航は現在、管財人の支援機構とともに再建計画を策定中だが、 それを仕切るのは、日航会長に1日就任した京セラ名誉会長の稲盛和 夫氏。京セラ、第二電電(現KDDI)を創業し世界的な巨大企業に 育てた稲盛氏だが、今回の再建には難題が待ち構えており、前途多難 が予想される。

三菱UFJ証券の姫野良太アナリストは「国や省庁に守られた環 境の中にいた日航が、今後は同業他社とのフェアな競争の中で、一定 のプレゼンスを発揮できるのかは疑問」と指摘。再建で「最も難しい のは人員削減の実施」とし、「日航には8つの労働組合があり、再生に 必要な削減を実際に稲盛氏の陣頭指揮で実施できるのかはやや不安が ある」という。また、「同時に安全を担保した中で実施しなくてはなら ず、極めて高度な知識が要求される施策だ」との見方を示す。

日航は17日、8つの組合に5%減額などを柱とした人件費削減策 を提示、4月1日から実施の方針。この中では人員削減に触れず、3 月中にも人員削減案を各組合に提示する見通し。日航と支援機構によ る再生計画では今後3年間で約1万5700人規模の人員削減を実施す る。最大労組のJAL労働組合の高橋秀次本部書記長も18日、「それ なりの規模で削減案が出てくることは覚悟している」とコメントした。

稲盛氏の評価はさまざま

長友氏は日航再建について「経営者の手腕のみでなく、従業員全 体でいかに必死の努力を傾注するかに掛かっている」とし、「稲盛氏の 呼び掛けに応える覚悟があるかどうか、一人ひとりの社員がその行動 で国民に示してほしい」と語った。

野村証券金融経済研究所の村山誠シニアアナリストは、法定3年 の再建期間について「本当は5年程度ほしいところだろう」と述べな がらも、「支援機構と稲盛氏による再建は3年で一定の成果を上げる」 と予想する。日航会長への稲盛氏の抜てきは正しい判断だったとし、 稲盛氏がシンボル的な存在として認知されていくだろうとみている。

一方、松野社長は稲盛氏の抜てきについて、適切だったのか疑問 の余地もあるという。稲盛氏は大企業を創業した大経営者であり、そ の成功は否定のしようがないが、それが日航再生にどこまでつながり、 生かされるのかは疑問と指摘する。稲盛氏が携わったメーカーと航空 会社では戦略が根本的に異なることもあり、日航再生が容易に実現す ると考えるのは危険との見方を示す。

民主党は過去の経営責任など検証へ

民主党の大久保勉参院議員は、日航再建に関して「公的資金とい う国民のお金を投入する以上、公正で明確な手続きを踏む必要がある」 とし、以前の自民党政権と国土交通省による問題先延ばしは「もう許 されない」と強調した。

日航をめぐっては、民主党が過去の経営責任と政官業のもたれ合 い関係を検証するプロジェクト・チーム(PT)を24日に立ち上げる 予定。民主党はPTをてこに、経営破たんの経緯や旧経営陣の責任に などを本格追及する。

大久保議員とともにPTの中核メンバーとなる白眞勲参院議員は 「日航がこのように破たんに至るまでの根本的な経緯を明らかにする 必要がある」とし、この活動が「日本の今後の航空行政を刷新する一 翼としたい」と抱負を述べた。

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