メルセデスの新型スーパーカー:気高い「飛翔する鳥」-H・ハーパー

その車は2つの「翼」を持ち、飛 ぶように走る。

メルセデス・ベンツの新型スーパーカー「SLS AMG」。価格 は20万ドル(約1800万円)。「マツダ・レースウェイ・ラグナセカ」 (カリフォルニア州)の急坂を登り、頂上近くでカーボンセラミック 素材のブレーキを踏み、アスファルトの上を右から左へと滑る。そし て、超大型の「くちばし」をらせん状の下り坂に向ける。

坂を下ると、胃が落ちていくような感覚があり、喜びが込み上げ てくる。まさに飛翔する鳥のようだ。

ファッションデザイナー同様、自動車メーカーもインスピレーシ ョンを求めて自社の過去を振り返る(あるいはあからさまに過去から 拝借する)ことを好む。1950年代の驚くほど美しい「300 SLガルウ イング」のように、そうした標的になる車はそう多くはない。丸みの あるしなやかな車体と跳ね上げドアが特徴のガルウイングは、オーク ションで50万ドルの値が付くものもある。

すべてのスーパーカーには独自のニッチ(すき間)市場がある。 フェラーリ「430 スクーデリア」はレース向け、ベントレー「コンチ ネンタルGT」はリゾート地の海岸を走るのに向いている。SLSは 成金趣味とみられるきまり悪さを感じないで有名レストランに乗り付 けることもできれば、ラグナセカを猛スピードで疾走することもでき るという気品を兼ね備えている。

デザイン優先

メルセデス・ベンツの前回のスーパーカーは、英マクラーレン・ オートモーティブと共同開発したが、今回は傘下のチューニング部門 AMGに開発させた。ドイツ・アファルターバッハを拠点とするAM Gは既存車種をより軽量化するとともに、一層の高速化、そしてより パワフルになるよう改良している。AMGが車を最初から設計したの は今回が初めて。

SLSは今春発売される。付属品なしで20万ドル弱の推定価格は 驚きだ。「安い」という言葉は奇妙に聞こえるが、これはメルセデスの 「SL65 AMGコンバーティブル」と同程度で、SLRマクラーレ ンの50万ドルよりかなり割安だ。

過去と未来に片足をそれぞれ乗せて生まれたSLRは300 SL ガルウイングのようなシンプルな美しさを欠いている。エンジンを収 納だけならノーズは大きすぎ、垂直のグリルによって細長い車体が一 層細長く見える。コックピットは、極端に後ろにあるように見え、サ イドウインドーは小さい。独特な輪郭だが、V字型の後部は「アキュ ラ」セダンを思い起こさせる。

SLSは両側のドアが空に向かって開け放たれている時が一番美 しい。勝利のVサインのようだ。もっとも、最高速度が時速197マイ ル(時速約317キロ)では、ドアを開けたまま走行できないのが残念 だ。(ジェーソン・ハーパー)

(ジェーソン・ハーパー氏は、ブルームバーグ向けに自動車に関す るコラムを執筆しています。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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