【書評】中国の2.4兆ドルの外貨準備、解消策はケインズが教えます

2つの数字を話題にしよう。6771 億ドルと2兆4000億ドルだ。米政府が講じた金融救済・景気対策な どが15兆ドル相当と指摘されるなか、もはや衝撃的な数字ではない が、この話題にお付き合いいただきたい。

6771億ドルは2008年の米貿易赤字。2兆4000億ドルは中国の 外貨準備高だ。米国からドルを吸い上げて中国側にため込む大陸間の 掃除機を想像してほしい。

このままでは長期的にどちらの国にもプラスの効果をもたらさ ないと、ポール・デービッドソン氏が新著「ザ・ケインズ・ソリュー ション(原題)」で指摘する。信用市場の崩壊を受け、世界の金融シ ステムをいかに再構築するかを建設的に考察する内容の書物となっ ている。

デービッドソン氏は「ジャーナル・オブ・ポスト・ケインジアン・ エコノミクス」の編集者。新著では30年間に及んだ規制緩和が経済 に打撃を与えた理由を探るとともに、これをジョン・メイナード・ケ インズが提唱した方法でいかに修復できるかを示す。世界各国の政府 がケインズ主義の景気刺激策に頼るなか、システムが危機から受ける 影響を少なくするため、この経済学者の提案を振り返る時期だろう。

第2次世界大戦末期に向け、ケインズは国際的な新たな通貨制度 に向けた案を作成。その中には貿易不均衡を是正する仕組みも含まれ ていた。そこで例の6771億ドルと2兆4000億ドルだ。

景気刺激策

米国は何年間も輸入超過を続けたが、もはや6771億ドルをそこ につぎ込む余裕はない。デービッドソン氏は「米国人がこの6770億 ドルを国内で生み出された製品やサービスに費やしていれば、米経済 に多大な刺激となっただろう」と指摘する。この貿易赤字は後に6959 億ドルに修正された。オバマ大統領が昨年2月に署名した7870億ド ルの景気刺激策の約9割に相当する規模だ。

貿易不均衡は神のなせる業ではない。中国が安く大量生産できる 理由は低賃金のほか、労働者が保護されず、社会的な安全網がないた めだ。米国への輸出品を確実に魅力的にするため、人民元も安いまま だ。

このままでいいのだろうか。いや、そんなことはない。2兆4000 億ドルもの外貨を積み上げるかわりに、中国は米国や他の貿易相手国 から製品やサービスを購入できるはずだ。そのようにさせてはどうか というのが、基本的にケインズが貿易不均衡を終わらせるために考え た提案だ。

ケインズは超国家的な中央銀行も思い描いたが、デービッドソン 氏はもう少し控えめに、国から国への支払いをチェックする決済機関 を提案する。この国際機関は、稼いだ外貨のため込みを各国にさせな いことを目的とする。貿易不均衡是正の責任を黒字国に負わせ、余剰 な外貨準備を持つ国々に赤字国への支払いを義務付ける。黒字国は外 国製品の購入や直接投資・援助はできるが、中国がこれまでしてきた ような「赤字国に貸し付けをして赤字国に負担をシフトさせること」 は出来ない仕組みだと同氏は説明する。

金の卵を産むガチョウ

これに中国が賛同する理由は、金の卵を産むガチョウを殺すリス クがあるためだ。デービッドソン氏は人民元が完全に交換可能となる シナリオを想定。米貿易赤字の規模を考えれば、人民元の対ドル相場 は外国為替市場で上昇し、中国製品は米市場で値上がりする。同氏に よれば、これによって米インフレ率は上昇。米連邦準備制度理事会(F RB)は利上げを余儀なくされ、米国民の支出は減少。両国は企業利 益の低下と雇用減少に見舞われる。中国では政治的に不安定となる可 能性もあり、「明らかにこのシナリオは米国民にとっても中国の労働 者や企業にとっても良くない」という。

決済機関の考え方は資本規制や資産の押収・再配分といった不安 を引き起こすほか、債務国に負わせる規律が不透明。それでも、この 考え方を少なくとも検討すべきだと思える2兆4000億の理由を私は 考えつくことができる。(ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この 書評の内容は同氏自身の見解です)

著書情報:

“The Keynes Solution: The Path to Global Economic Prosperity” is from Palgrave Macmillan (196 pages, $22,

14.99 pounds). To buy this book in North America, click here.

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