10-12月期の実質GDPは年率4.6%増-3期連続でプラス

昨年10-12月期の日本の実質国内 総生産(GDP)1次速報値は、前期比年率4.6%増と3四半期連続 でプラス成長となった。世界経済の回復に伴う輸出の拡大や政府の経 済対策の延長による個人消費の増加に加え、設備投資の増加も寄与し た。今年1-3月期もプラス成長が見込まれるものの、政策効果の減 退で成長率は鈍化するとの見方が民間エコノミストの間では多い。

内閣府が15日発表した四半期別国民所得統計によると、10-12 月期の実質GDPは前期比1.1%増と、事前予想を上回った。自動車 や薄型テレビの販売が好調でGDPの約6割を占める個人消費は

0.7%増と3四半期連続で増加した。設備投資も1.0%増と7期ぶりに プラスに転じた。輸出は5.0%増加した。これに対し、公共投資は1.6% 減と2期連続で減少した。住宅投資も3.4%減と4期連続のマイナス となったが、減少率は前期から縮小した。

津村啓介内閣府政務官はGDP統計の結果を受け、「民間消費や 設備がプラス寄与をしていることは、内需の自律的な回復につながっ ていく可能性はある」と語った。景気の「二番底」については「懸念 が薄らいだ可能性がある」としながらも、「下押しリスクになる金融資 本市場の動向や失業率、物価の動向を見極めながら、景気が『踊り場』 に差し掛かることがないよう」政策対応をしていくとの姿勢を示した。

昨年7-9月を下方修正

マネックス証券の村上尚己チーフエコノミストは統計発表後、G DPの伸び率が事前予想を上回った理由として、個人消費の高い伸び と7-9月期が下方修正された反動増が表れたことで「ほぼ説明でき る」と指摘。1-3月期については「さすがに政策効果はいったん息 切れするため、消費の勢いは鈍化する」と指摘した。昨年7-9月の 実質GDPの前期比伸び率は今回ほぼ横ばい(0.01%増)と、第2次 速報値の同0.3%増から下方修正された。

日本の最大の輸出先となった中国の昨年10-12月期のGDPは 前年同期比10.7%増で、2007年以来の高い伸びを記録した。同期の米 国のGDPも前期比年率5.7%増加した。また、中国の1月の輸出は 前年同月比21%増、輸入も同85.5%増と大幅な伸びを示しており、世 界経済の回復傾向を裏付けた。輸出主導で持ち直しつつある日本経済 に追い風だが、内需はなお脆弱(ぜいじゃく)で、自律的回復には至 っていない。

日本と中国

2009年暦年のGDP成長率は実質で前年比5.0%減、名目で同

6.0%減とそれぞれ比較可能な1955年以降で最大の下落率を記録した。 09年暦年の日本の名目GDPは5兆849億ドルで、同年の中国の名目 GDP4兆9090億ドルを3.6%上回り、辛うじて日本は世界第二位の 経済大国の地位を維持した。

ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査によると、10-12 月期の実質GDPの予想中央値は前期比0.9%増、年率換算では3.5% 増だった。マネックスの村上氏は1-3月期のGDP成長率は10-12 月期の高成長からの反動減が懸念されるが、年率1.0%前後のプラス 成長を維持するとみている。

ドル円相場は午前11時3分現在、1ドル=90円18銭前後。統計 発表直前は同90円06銭前後だった。日経平均株価の午前の終値は、 前週末比40円73銭安の1万0051円46銭。債券先物市場の中心限月 (3月限)は同23銭高の139円60銭。

設備投資の修正予想も

これまで出遅れていた設備投資は好材料が出てきた。内閣府が10 日発表した昨年12月の機械受注統計によると、船舶・電力を除く民需 (コア機械受注、季節調整値)は前月比20.1%増、10-12月期も前期 比0.5%増と7四半期ぶりの増加に転じた。

ただ、昨年7-9月期の設備投資は1次速報段階で前期比1.6% 増だったが、需要側の統計である法人企業統計を加味した2次速報で は同2.8%減と大幅に下方修正された。このため、10-12月期も同様 の修正があると予想するエコノミストが多い。供給側の設備投資の関 連指標では、資本財出荷が10-12月期に前期比11.5%増、振れの大 きい輸送機械を除いても同11.4%増加している。

第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは設備投資につ いて「2次速報で多少、下方修正される可能性があることには注意が 必要だが、売り上げや収益の底打ちを受けて設備投資は下げ止まりつ つあると考えられる」と指摘。さらに「設備投資は製造業にけん引さ れる形で先行きも緩やかに増加する可能性が高いだろう」とし、「こ れまで大幅な落ち込みが続いていた設備投資がプラスに転じるだけで も、景気への影響は大きい」との見方を示した。

内需・外需

10-12月期の輸入は前期比1.3%増だった。この結果、輸出から 輸入を引いた外需の成長率への寄与度はプラス0.5%となった。同期 の輸出数量は対米国向けが同12%、欧州向けが同8.0%、対アジアが 同5.1%それぞれ増加した。一方、内需はプラス0.6%だった。

内閣府が今回から、輸出と輸入に関する季節調整方法を変更した 結果、外需とGDPをそれぞれ0.2ポイント程度押し下げた。100年 に一度と言われる08年9月のリーマン・ショックに伴い、同年10- 12月期と09年1-3月期のGDPは急減した。これを通常の季節性 とみなすと、翌年以降に出る数値が高く出る可能性があるため、同期 間を異常値とみなして、数値の変動をなだらかにする狙いがある。

大和総研の熊谷亮丸シニアエコノミストは「日本経済は2010年度 初頭にかけて経済対策効果の息切れ等から一時的に『踊り場』を迎え る可能性」があると指摘する一方、鳩山政権が昨年12月に閣議決定し た「緊急経済対策(財政支出7.2兆円)」の効果などもあり、「景気 二番底」は回避されるとの見通しを示した。

農林中金総合研究所の南武志主任研究員は「引き続き中国などア ジア新興国向けの輸出は期待できるものの、これまで打たれた経済政 策の効果一巡や息切れ、秋以降に進行した円高による悪影響が懸念さ れる」とした上で、1-3月期以降は「一時的に回復が足踏みするリ スクもある」との見方を示している。

個人消費の動向

内閣府が需要側と供給側の統計を総合して指数化した消費総合指 数は10-12月期に前期比0.5%増加した。雇用・所得環境は厳しい上、 昨年11月に政府がデフレ宣言を出したこともあり、消費者マインドは 一時的に悪化したが、経済対策効果もあり個人消費は健闘した。

新家氏は個人消費については「所得の減少が続くなかで意外な健 闘を見せているといって良いだろう」と述べる一方、「足元では消費 者マインドの改善が頭打ちになるなど、消費の先行きについては懸念 材料も出てきている」と指摘。「政策効果の限界的な押し上げ効果が今 後弱まってくることもあり、個人消費は今後、減速感を強めてくる可 能性が高いだろう」とみている。

名目GDP

鳩山政権が重視している名目GDPは前期比0.2%増、年率換算 では0.9%増と7四半期ぶりのプラスとなった。名目GDPを実質G DPに変換する際に用いられる物価指数のGDPデフレーターは、10 -12月期に前年同期比で過去最大となる3.0%低下した。国内需要デ フレーターは同2.9%減と過去3番目の下落率だった。

津村政務官はデフレ認識について、「GDPデフレーターのマイ ナス幅が拡大しているので、引き続きデフレは深刻な状況にある」と 語った。一方で、「今後、自律的な回復が軌道に乗っていく中で、需給 ギャップも解消されて、デフレ傾向が改善方向に向かうことが期待さ れる」と語った。

三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは 名目GDPが「プラス成長に転じたことは明るい材料だ」とする一方、 GDPデフレーターの下落率が拡大しているため、「デフレ基調を裏 付ける数字の一つと言えるだろう」としている。

政府は昨年12月末に、環境、健康、観光などを柱として2020年 度までの10年間に、平均で名目成長率3%以上、実質成長率2%以上 を前提としたと新成長戦略の基本方針を決定した。政府は今月10日、 成長戦略策定会議(議長:鳩山由紀夫首相)を開催。5月に主要施策 の方向性を決め、6月ごろに工程表を含む全体像を取りまとめること を確認している。

政府が1月に閣議決定した10年度経済見通しの前提となる09年 度の成長率は、実質2.6%程度の2年連続のマイナス成長を見込む。 内閣府は残る1-3月期に実質1.8%減(年率換算6.9%減)で、見通 しを達成できると試算している。

--取材協力:Minh Bui,Sachiko Ishikawa Editor: HitoshiOzawa,Norihiko Kosaka

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