中国は年5%の元高容認も、6月にも利上げ-野村資本市場研の関氏

野村資本市場研究所のシニアフェロ ー、関志雄(かん・しゆう)氏は、中国が景気の過熱化や資産バブル進 行を未然に防ぐため、6月にも利上げを実施した後、人民元相場の高め 誘導に踏み切るとの見方を明らかにした。当局が相場を誘導する管理フ ロート制の下で、年率4-5%程度の元上昇を容認するとしている。

1月の預金準備率引き上げに続く、一連の引き締め政策によっても 中国の景気が今年鈍化することはなく、昨年の8.7%を上回る9.5%程 度の経済成長を達成できるという。関氏は5日、ブルームバーグ・ニュ ースのインタビューに応じた。

日米欧など先進国が景気低迷から脱し切れないのに対し、中国経済 は4兆元(約50兆円)もの大規模な景気対策や元安・緩和政策をテコ にして急速に上向き、昨年10-12月期には2けた成長を回復した。昨 年12月時点で前年比1.9%増にとどまる消費者物価(CPI)につい て、関氏は成長ペースに合わせて今後、上昇が加速すると指摘。「成長 かインフレ抑制かといえば、そろそろインフレ抑制がメーンになってき ている」として、中国が出口政策に乗り出すと分析する。

関氏は利上げのめどについて「CPIで4%が一つの目安」と指 摘。中国人民銀行は6月にも金融引き締めに転じ、政策金利(1年物貸 出基準金利)を現行の5.31%から0.27%引き上げるという。物価動向 次第では追加利上げもあり得るとしている。

関氏は1957年、香港生まれ。香港中文大、東大大学院を修了後、 香港上海銀行や野村総合研究所、経済産業研究所を経て現職。「チャ イナ・アズ・ナンバーワン」などの著作で知られ、「日本での現代中国 経済研究の第一人者」と評価する声も出ている。

為替政策の出口戦略

ただ、関氏は利上げには象徴的な意味合いがあっても、それだけで はインフレ抑制には不十分だとして、中国当局は元高阻止の為替政策に ついて「出口戦略の議論を考えないといけない」と話す。関氏による と、2007年にインフレが加速した当時も、当局はインフレ抑制のため に元高を容認した模様だという。

中国は05年7月に人民元のドルとのペッグ(連動)制を放棄。元 相場を2%切り上げると同時に、当局が元売り介入の強弱で相場をコン トロールする管理フロート制に移行した。08年6月までの3年で元の対 ドル相場は約21%上昇したが、その後、元高の動きは完全に止まり、現 在までの1年8カ月は1ドル=6.83元程度で横ばいに推移している。

関氏は08年6月以降、元高の動きが止まったことについて、「サブ プライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題が表面化したことに 伴う危機対応策」とみており、元高阻止の解除には「誰がみても世界的 な危機が去ったといえるかどうか」が判断材料になると指摘。米国の雇 用情勢改善も目安の一つに挙げた。

今回の人民元の許容上昇幅について、関氏は「年率4-5%程度」 とみる。ペッグ制放棄後、08年までの間に元は年率10%以上も上昇し たことがある。関氏は、かつては割安感の解消のため大幅に上げる必要 があったが、今や「均衡水準に近づいたので、上げ余地も小さくなって くるという発想もそろそろ必要だ」と指摘。今回の上昇幅は10%には届 かないと予想する。

過剰流動性と資産バブル

一連の引き締め政策が必要だと考えられる背景には、不動産価格 の急騰など資産バブルの進行もある。世界的な経済危機を背景にして、 中国は08年以降、急速な金融緩和に踏み切り、元売り介入で市場にあ ふれた資金を放置する「非不胎化介入」も続けた結果、過剰流動性が 発生した。

都市部住宅価格は08年11月を底に急上昇し、09年12月は前月比 で年率19.6%上昇を記録した。関氏は「出口戦略を早くやるのは悪い ことではない。そうでないと不動産バブルが弾けて不良債権の山ができ る」と、予防的引き締め策の意義を強調。引き締めても不動産価格の下 落幅が20%を超えない限りは「銀行にとってそこまでの心配はない」 という。

一方、株価については、バブルは発生していないとの認識を示し、 「引き締めても株価のハードランディング(急落)はない」とみてい る。上海総合指数は07年10月に6000超のピークを付けた後、急落。 08年11月を底に回復基調にあり、現在は2900近辺で推移している。

1月に中国人民銀が預金準備率を0.5%引き上げた際、中国の株価 下落を引き金に世界同時株安などリスク回避の動きが強まったが、関氏 は「過剰反応だ。市場の反応はマイナスでも、マクロ政策運営という意 味では高く評価すべきだ」と指摘している。

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