【日本株週間展望】下落へ、国際マネー変調で世界株安と円高を警戒

2月第2週(8-12日)の日本株 相場は下げが続きそうだ。ギリシャなど欧州の財政リスクへの不安や、 米国の景気不透明感などを背景に投資家のリスク許容度が低下、世界 の金融市場を揺さぶっている。日本株は相対的に底堅く推移してきた が、為替の円高は輸出企業の収益を押し下げるため、影響は不可避だ。

東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長は、「今はファンダ メンタルズより株式需給が勝っている局面。リスク投資の巻き戻しは ある程度のタームで続くため、相場低迷は2月いっぱい続くかもしれ ない」と警戒する。日経平均は心理的節目の1万円で強く抵抗するだ ろうが、いったん9900円程度までの下げもあると同氏は予想した。

2月1週の日本株相場は、米国株や為替など日本株を取り巻く環 境が安定するなかで、発表される企業の第3四半期(09年10-12月) 決算がおおむね良好だったことから、株価指数は前週末の水準を上回 って推移していた。

しかし、スペインとポルトガルがギリシャと同様に財政赤字の削 減で困難に直面するとの懸念が投資家の間で強まり、4日に両国をは じめとする欧州株が急落。米国でも失業保険申請件数が予想外に増加 し、雇用改善や景気回復に対する楽観的な見方が後退、株式や商品相 場が大きく下げた。為替市場で円が急騰したことも手伝い、日本株相 場は週末5日に急落。日経平均株価は前週末比1.4%安の1万57円と、 昨年12月10日以来の安値水準で終えた。

海外に敏感体質、日本代表にも懸念浮上

ラウンドロックキャピタルアドバイザーズの糸島孝俊チーフ・フ ァンドマネジャーは、5日の急落で「日本株が外部環境に左右されや すいことを再確認した。第4四半期(1-3月)で見た場合、円高や 米国株安、中国株安が加速しなければ、日経平均は1万円を中心に上 下1000円の範囲で推移するだろうが、目先は下に向きやすい」と見る。

オバマ大統領が1月に提案した商業銀行によるヘッジファンド投 資禁止や、自己勘定取引抑制などを柱とする金融規制案に対する警戒 は強い。中国の金融引き締め姿勢も、世界経済が同国への依存度を高 めるなかでは影響が懸念される。投資家のリスク許容度が高まる要因 は見当たらない。

海外発の不安要素に加え、国内発の懸念材料も出てきた。トヨタ 自動車のリコール(無料の回収・修理)問題だ。リコールの対象は米 国を中心に全世界で約800万台に膨らみ、過去最悪。販売面にも影響 が出ており、同社の1月の米自動車販売台数は前年同月比で16%減少 した。台数を伸ばした日産自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM) などと対照的となった。

ゴールドマン・サックス証券は4日、トヨタの業績予想を下方修 正し、投資判断を「中立」に下げた。アナリストの湯澤康太氏は投資 家向けリポートで、「今後数カ月はネガティブなニュースフローが続き、 月次販売への影響を見極めることになるだろう」との見解を示した。

どうなるブランド力、頼みは好業績

トヨタは日本を代表する国際企業で、株式時価総額1位だ。いち よし投資顧問の秋野充成運用部長は、1月に1兆4666億円を買い越し た海外投資家の投資先が、トヨタやホンダ、ソニーといった誰もが知 る銘柄であることを挙げ、「実際に工場などを見学して分析し、個別銘 柄に投資するというより、日本株自体を買っている印象。トヨタの問 題で日本の製造業全体のブランド価値が低下すれば、こうした買いは 止まり、相場全体に影響する可能性がある」と危惧している。

不安材料には事欠かないが、企業業績の良さは健在だ。ファンダ メンタルズの良さが株価に反映されにくいのは、昨年秋と同じ。企業 の第2四半期(7-9月)決算が発表された当時は、企業の大型増資 が相次ぎ、株式需給の悪化がファンダメンタルズに勝る形で日本株は 世界のなかで独歩安となった。

しかし、その後増資ラッシュが一巡すると、株価は業績好調を次 第に織り込んで上昇、12月と今年1月は世界市場をアウトパフォーム した。第1週で主要企業の第3四半期決算発表がひと段落した今回も、 目先の株価は弱含むと見られるものの、企業業績を相場の下支え役と して期待する向きは多い。

好決算銘柄を丹念に

水戸証券投資情報部の岩崎利昭課長は、「発表内容を精査し、業績 期待が持てる銘柄に資金が向かうだろう」と予想。具体例として電子 部品関連企業、内需関連のなかでもともと強い企業を挙げる。需給が ひっ迫している電子部品関連では、TDKや京セラ、村田製作所など が通期予想を上方修正した。

ラウンドロックキャピタルの糸島氏も、輸出産業を中心にリスト ラを着実に進め、在庫もコントロールできている点を評価。「トップラ インが伸びてきたなか、費用抑制も効いており、来期業績への期待が 持てる。指数が弱含む局面ではこうした個別銘柄を、中身を確認しな がら選別投資することが大切」と強調した。

デンソーが上方修正するなど、自動車関連も業績好調が確認され たが、トヨタのリコール問題が明るみに出て「第4四半期以降の業績 に与える影響が懸念され、買いにくい」と岩崎氏は言う。

第2週は、足元の景気を確認する経済指標の発表が相次ぐ。8日 は1月の企業倒産と景気ウォッチャー調査、9日は1月の工作機械受 注、10日は1月の企業物価指数と中古車販売、09年12月の機械受注 などが予定されている。海外では、11日に1月の米小売売上高と12 月の企業在庫の動向が明らかになる。

【市場関係者のコメント】 ●みずほ証券・投資情報部の高橋幸男マーケットアナリスト 「米国の金融規制や欧州の財務リスク、中国の金融引き締め策といっ た3つの問題を抱えている。財政リスクはギリシャ、ポルトガル、ス ペインに広がり、簡単に終わりそうもない。トヨタのリコール問題は、 ブランドイメージ悪化による販売への影響が読めない。自動車業界は すそ野が広く、生産を注視する必要がある。一方、2010年3月期の業 績予想を上方修正する企業が増え、経済指標も良い数字が出ており、 これらが評価されて買い戻されることも予想される。

●ユナイテッド投信投資顧問の井上淳最高投資責任者(CIO) 「米新金融規制案、ギリシャの財政リスク、中国の金融引き締め強化 は、簡単に解決できる問題ではないと、相場は受け止め始めている。 金融規制案が実現すれば、金融機関はビジネスモデルの変更を迫られ る。ギリシャの問題も、一度失った信認は簡単に戻らない。金融市場 にとって国債の安定は絶対必要条件。インフレとは違う意味で不安定 になれば、金融市場は不安定にならざるを得ない。相場は底値を確認 できない状況」

●日興コーディアル証券エクイティ部・西広市部長 「欧州発のリスク資産離れ、世界的株安の動きが出てきたほか、現在 は改善するとの見方が多い国内の企業業績も、急激な円高で先行きに 不透明感が広がってきた。世界の主要株価指数が直近の安値を下回っ てきたことも不安材料だ。5日に日経平均は1万36円から反発したが、 これは昨年11月から1月に1900円上昇した分の半値押し水準。抵抗 が出てくる水準だが、フィボナッチで見ると61%水準は9800円。昨 年11月上旬にもみ合った同水準をもう1度見に行く可能性が残る。米 小売売上高、日本の機械受注、損保など金融機関の決算に注目する」

●水戸証券投資情報部の門馬且康課長 「12日のSQ(特別清算指数)に接近するが、1月SQからの下落率 はTOPIXの5%に対して日経平均は6.9%と下げが大きい。ただ 日経平均への影響が大きい銘柄ではソニーや日立製作所などの値持ち が良くなり、京セラやファナックもさらに下値を売る理由に乏しい。 外部要因から日経平均は一時1万円を割り込んでも、週末時点で1万 円をキープできるだろう。ユニ・チャームなどアジア消費から恩恵を 受ける銘柄や、パソコン関連の日本電産など個別で選別色を強めたい」

●ニッセイ基礎研究所経済調査部の伊藤さゆり主任研究員 「スペインの財政リスクが意識され、ドル・ユーロ相場が動いたよう に、各国が財政プランを提示する時期とあって09年度の実績や10年 度の成長率予測を見て相場が動く可能性は高い」

--取材協力 鷺池 秀樹、浅野 文重、長谷川 敏郎、常冨 浩太郎 Editor:Shintaro Inkyo、Makiko Asai

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