【コラム】ギリシャ丸ごとお買い上げという巨大バブル-W・ペセック

不動産に株式、融資。中国は間違 いなくバブルを抱えている。しかし奇妙なことに、中でも最も巨大 なバブルにほとんど関心が払われていない。

中国の外貨準備高は2009年に、ノルウェーの国内総生産(GD P)を上回る規模の増加をみせた。中国の2兆4000億ドル(約 218兆円)の外貨準備はそれ自体がバブルで、拡大が続いている。 この「外貨準備バブル」とでもいうべきバブルは実際のところ、ア ジア全域に広がる現象となっている。この金融面での「軍拡」を、 強さの源と考えることはやめるべきだ。政府当局者の公式発言以上 に、この問題が急速に深刻化している理由は3つある。

第一に、それは巨大で、拡大を続けるねずみ講だ。この問題は、 財政危機に直面しているギリシャが中国に救済を要請しているとい った観測が市場に広がるところまで、不条理が進む新局面に至って いる。結局のところ、国や地域がもし身売りという事態になれば、 中国は昨年積み上げた外貨準備(4530億ドル)でギリシャとベト ナムを買って、さらにモンゴルを取得する余裕があるのだ。

国際通貨基金(IMF)の当局者が、最近何を考えているか想 像してみる必要がある。IMFの支援パッケージには、「自国経済 を秩序立ったものにせよ」などといった厄介な注文が付く傾向にあ る。中国による支援であれば、資源があるかどうかと地政学的視点 からの審査だけで済むだろう。中国が米モルガン・スタンレーなど ウォール街の大手金融機関に命綱を投げるのを、われわれはすでに 目の当たりにしている。国家丸ごと救済が次のステップのように思 える。

自作自演

中国の巨額の外貨準備が世界に与える影響力は日ごと高まりつ つある。厄介なのは、中国が自作自演のわなにはまっていることだ。 中国をはじめアジアの国・地域は米国債を買い続けており、大幅な 損失を計上することなく、投資を引き揚げることがさらに困難にな ってきている。そのため、アジア諸国は米国債を買い増し続けてい る。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS) のアナリスト、デービッド・シモンズ氏(ロンドン在勤)は「比類 のない大規模な外貨準備であり、行き場がない」と語る。

中国は外貨準備の運用先を米国債から、ほかの資産や商品へと 分散することを目指している。この巨万の富を十分に吸収できるほ ど懐の深い市場は一体どこかが問題だ。金、原油、ユーロ圏の債券 か。はたまた、マドフ一族の新たなねずみ講か。

悲劇的結末

中国がしようとしていることは、一台のフォルクスワーゲンに エアバスの超大型旅客機「A380」をねじ込もうとするようなもの だ。すべてのねずみ講と同様、終わりは容易に見えず、その結末は 悲劇的なものとなりかねない。ドル相場が崩壊すれば、損失を最小 限に抑えようとする各国中銀による米国債のろうばい売りで、今回 の米国発の信用危機以上に世界の金融市場は動揺するだろう。

第二に、外貨準備は死に金だ。通貨を準備しておくという知恵 は1997年のアジア危機に端を発している。投機的な投資家は、タ イの外貨準備が乏しいと気付き、その見方は正しかった。そうした 投資家がタイの通貨バーツに攻撃を仕掛け、アジア金融危機へとつ ながった。各国政府は2000年以降、二度と同じ誤りを繰り返さな いと肝に銘じ行動してきた。

アジア経済は欲張り過ぎている。バーツ切り下げから10年目に 当たる07年7月、アジア開発銀行の黒田東彦総裁は域内経済にと って大きな懸念は外貨準備の加速度的増加だと指摘した。同総裁の 言葉に耳を傾ける者がいなかったのは、非常に残念だ。

とてつもなく巨額

こうした巨額の資金は、インフラ整備や教育・医療制度の向上、 温暖化対策に利用することも可能だ。これほど大規模な資源が、不 適切な用途に回されている例を知らない。アジア諸国は資金のより 良い活用ができるはずだ。

第三に、外貨準備は過熱リスクを高めている。通貨当局がドル を買う際は自国通貨を売る必要があり、国内のマネーサプライ(通 貨供給量)は増加する。当局が次に行うのは、国債を売って自国経 済から余剰資金を吸収することだ。これは、しばしばインフレ加速 につながり得る手法だ。この戦略は高くつく。

アジア地域のリスクは確実に、インフレ方向に傾いている。中 銀は現時点で、利上げを通じて自国経済から流動性を吸収するかど うかの検討に注力している。しかしそれ以上に、外貨準備の動向が いかにその目標に対立するものとなっているかに注意を払うべきだ。

各国中銀は難しい任務に直面している。自国経済に大打撃を与 えることなく、また政治家らと衝突することもなく、過剰流動性を 吸収する必要がある。アジアはようやく、一部の経済保護政策がど れだけ中銀の仕事を増やしているか、気付きつつある。同地域は 10年以上にわたり輸出業者を支援するために自国通貨を低位に抑 制してきた。その政策が地域経済に与える副作用を無視するのは愚 かなことだ。

ドバイ・ショックが世界経済に与えた影響を考えてみればよい。 中国の成長率が8%を下回る可能性がほのめかされたらどんなパニ ックを引き起こすか考えるのもいい。だが、アジア最大の巨大バブ ルからもたらされるかもしれない混乱に比べれば、そうした失望感 など見劣りがする。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコ ラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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