中村日銀委員:前回の量的緩和政策は「効果小さかった」

日本銀行の中村清次審議委員は4日 午前、福岡市内で講演し、日銀が2001年から06年にかけて行った量 的緩和政策は「効果は小さかったように思う」とした上で、デフレを 脱却するためには「生産性向上を反映した中長期的な所得増加期待を 高めていくことが肝要だ」と述べた。

中村委員は「量的緩和政策では、日銀当座預金残高の積み上がり に比べ、市中銀行から民間への貸し出しは増加せず、直接的なデフレ 脱却策としての効果は小さかったように思う」と言明。流動性の供給 を増やすなどの施策だけでは、わが国がデフレから脱却できるとは考 えにくいとの見方を示した。

金融政策運営については「先行きの政策の選択肢について、あら かじめ特定の手段を念頭に置いたり、逆に排除することなく、常に経 済・金融環境の状況変化に対応して、最も適切な金融政策を行わなけ ればならない」と語った。日銀は昨年12月1日に開いた臨時の金融政 策決定会合で、金利0.1%で期間3カ月の資金を約10兆円供給する新 しい資金供給手段を導入した。

中村委員は財政政策については「最近では政府債務の持続可能性 に関する懸念が世界的に高まりつつある」と指摘。「わが国も足元の財 政状況をみる限り、決して対岸の火事として安穏としていられない」 とした上で、「中長期的な財政再建策について真剣に検討し、持続可能 なバランスが取れた成長につなげていく必要がある」と述べた。

下振れ要因が若干大きい

景気については「経済活動は持ち直しているとはいえ、生産や輸 出の水準は依然として低いだけでなく、改善の動きも内外の政策効果 に支えられている面が強く、自律回復力は弱い」と指摘。先行きにつ いても「海外経済の回復は緩やかにとどまる可能性が高く、わが国経 済の本格的な回復も相応の時間を要すると考えられる」と述べた。

リスク要因については「緩和的な金融環境や各国の積極的な景気 刺激策等を背景に新興国や資源国の経済成長が上振れる可能性がある 一方、米欧のバランスシート調整の帰すうや、企業の中長期的な成長 期待の動向などの下振れ要因がある」と指摘。上下のリスクのバラン スは「金融危機のショックが極めて大きかっただけに、下振れリスク が引き続き若干大きいように思われる」と語った。

日銀は先月26日の金融政策決定会合で経済・物価情勢の展望(展 望リポート)の中間評価を行い、消費者物価指数(除く生鮮食品、コ アCPI)前年比は「原油価格高の影響などから見通しに比べてやや 上振れて推移する」との見方を示した。政策委員の見通しの中央値は 2010年度が昨年10月末のマイナス0.8%からマイナス0.5%へ、11 年度はマイナス0.4%からマイナス0.2%へ上方修正された。

物価の下落圧力は短期間には解消せず

中村委員は「本年4月以降に予定されている高校授業料の実質無 償化などの措置はCPIのマイナス幅を拡大させる可能性があるが、 こうした制度変更に伴う一時的な要因については、その影響を除いた 上で、基調的な物価動向をとらえていくことが必要だ」と述べた。

その上で、「経済の回復が緩慢なものにとどまるとの見通しの下で は、供給に比べて大幅に不足している需要は早急には回復せず、短期 間に物価の下落圧力が解消できるとは考えられない」と語った。三菱 UFJ証券の長谷川治美シニア債券ストラテジストは「デフレ克服に は生産性向上という日銀の主張が120%正しいとしても、政府が追加 の金融政策対応を強く求めた場合、日銀がそれを拒み続けることはか なり困難とみられる」としている。

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