長期国債「早く」買うべき-財政リスク織り込み、景気鈍化-野村証

野村証券の松沢中チーフストラテジ ストは、公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率が主要国 で最悪である日本の財政リスクは国債相場に「相当反映されている」 と見る。むしろ、2010年度前半は国内景気の持ち直しが弱まるため、 長期金利は低下(価格は上昇)すると予想し、投資家に「早い段階で」 国債への投資を行うべきだと推奨した。

松沢氏は1日午後、都内で講演し「秋までは運用の中心は国債に なる」と発言。利回り低下をデュレーション(保有資産の平均年限) の長期化で補うべきだと述べた。日本の国債市場は「世界的に見ても ボラティリティー(変動率)の低い市場だ」と指摘。10年物国債利回 りが「1.3%台に残っているうちに」買い進めるのが賢明だと話した。 10年債利回りは6月末に1.2%に低下するとの見通しを示しているが、 一時1%まで下がる場面もあると予想した。

鳩山由紀夫内閣がまとめた10年度の一般会計予算案の総額は92 兆2992億円で、新規国債発行額は約44兆3000億円。いずれも当初予 算としては過去最大となった。機関投資家などに入札方式で販売する 国債の市中発行額も過去最大の144兆3000億円。政府が1月25日に 国会に提出した資料によると、国債と借入金、政府短期証券を合わせ た国の債務残高は10年度末で973兆1626億円に達する見通しだ。

長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは1月8日に一 時1.365%と、昨年11月13日以来の水準に上昇(価格は下落)した が、その後は金利が低下。米格付け会社スタンダード・アンド・プア ーズ(S&P)が26日に日本の外貨建て・自国通貨建て長期ソブリン 格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げたが、27日には1.305%と 約1カ月ぶりの低水準となった。

危機的だが、織り込み

松沢氏は、日本の財政が「危機的な状況にあるのは確か」だが、 国債利回りには供給過剰懸念のプレミアム(金利の上乗せ分)が「す でに相当反映されている」と分析。指標として10年債と20年債のス プレッド(利回り格差)を挙げ、足元の80bp(1bp=0.01%)を上回 ったのは1998年末から99年初にかけての「資金運用部ショック」や 08年3月の米証券ベアー・スターンズ破たん時のみだと指摘した。

利回りが20年債で2.2%を超えた場合には、生命保険会社などが 「非常に早いペースで」投資を増やすとも予想した。

松沢氏は、財政の持続性を考える場合には「日本経済全体のバラ ンスを見るべきだ」と語った。経常収支の黒字が年間15兆円程度、G DPの約3%にも及ぶと指摘。経常収支は「輸出-輸入」だが、足元 の日本では、「民間部門の貯蓄-財政赤字」でもあり、高齢化に伴う貯 蓄率低下も企業部門の黒字増加が補っていると説明。世界的な金融危 機直後の一時的なショック時を除くと「国全体のバランスはあまり変 っていない」と述べた。

10年債で1%前半が自然

成長力が弱くインフレ予想も低調な日本経済にとって、中立的な 金利水準が下がっている点も注視すべきだと、松沢氏は指摘した。

日本銀行は昨年10月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展 望リポート)で、日本経済の潜在成長率は「0%台半ば」と推計した。 松沢氏は、市場が織り込む期待インフレ率は足元で0.7%前後だと指 摘。両者を合わせると約1.2%となり、10年債利回りで「1%台前半 という金利水準は自然な姿だ」との見方を示した。

将来の政策金利を予想して短期金利を取引するオーバーナイト・ インデックス・スワップ(OIS)市場は、米・英・欧州は利上げに 向かうが日銀は金利を据え置くと想定していると指摘。松沢氏自身は、 日銀の利上げは「11年後半になるまで視野に入ってこない」と予想し た。

日銀は「もぐらたたき」

松沢氏は、日銀の政策対応は金融危機を通じて「かなり変化した」 と述べた。足元では伝統的な金利操作ではなく、昨年11月の急激な円 高のように経済・物価見通しからの下振れをもたらしかねない「リス クイベントを、もぐらたたきのように個別につぶしていく」政策対応 になっていると指摘した。

日銀は昨年12月1日、臨時の金融政策決定会合で、政策金利の

0.1%で3カ月物の資金10兆円を供給する追加緩和策を決定。白川方 明総裁は記者会見で「広い意味での量的緩和だ」と説明した。

今後は、資金供給期間を6カ月に延長し一段の市場金利低下を促 したり、長期国債買い入れ額の引き上げなどを実施し、円高・株安を 起点とする実体経済の悪化を抑止する可能性があると語った。

松沢氏は、日銀が量的緩和政策を採っていた01年3月から06年 3月までは、10年債利回りで「1.2-1.6%が非常に強い」取引レンジ になっていたと述べた。ただ、98年や03年の国内金融危機に加え、 量的緩和導入時には1.2%を一定期間下回ったとも指摘。日銀による 次の金融緩和局面で10年債利回りが1%に向かう可能性があると予 想した。

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