日本航空が事実上の経営破たんに 陥ったのに伴い償還期限に達していない同社の社債がデフォルト(債務 不履行)となった。政府支援を受ける企業の発行する社債がデフォルト になるのは過去に例がない。市場関係者からは、これからの社債の投資 には公共性の有無に関係なく企業の裸の財務力を自ら見極める力量が 問われるとの指摘が出ている。

日航の会社更生法申請・受理を受けて、スタンダード・アンド・プ アーズ(S&P)と格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所 (JCR)は、日航と日航インターナショナル2社の格付けを「D」に 引き下げた。「D」は債務不履行に陥っている信用状態を示す。

S&Pは発表資料の中で「更生計画が認可された後に、その後の債 務履行能力に基づいて両社の格付けを見直す予定。旅客収入の見通し、 人件費や燃料費などのコスト削減の実現性、資金計画などを注意深く検 証していく」と述べている。

社債670億円がデフォルト

日航が19日夕、東京地裁に会社更生法の適用を申請して受理され たのを受けて、企業再生支援機構は同社に対して出資を含め経営再建の ための支援を行うことを表明した。日航債を保有する投資家に対する元 本と利息の支払いは当面凍結される見通し。

ブルームバーグ・データによると、日航と傘下の日本航空インター ナショナルが過去に発行し、未償還の国内普通社債とユーロ円建て新株 予約権付転換社債(CB)の残高は計約670億円に上る。

公募社債のデフォルトは、昨年6月に破たんした日本エスコン債 (SB、80億円)以来で7カ月ぶり。デフォルト社債の額では、2001 年9月破たんのマイカル債(SB・CB、約3200億円)に次いで2番 目の大きさとなる。

裁判所が会社更生法の申請を受理した時点で、申請企業の債務の 支払いは自動的に停止する。無担保社債の保有者に対する利払いや元 本の返済額がどの程度になるかは今後の債権回収率次第ということに なる。

これまで、政府は経営破たんした日本長期信用銀行や日本債券信用 銀行を一時国有化して公的資金を注入したが、両行が発行した金融債は 保護されて、デフォルトしなかった。事業会社では、ダイエー、エルピー ダメモリなどが政府の支援を受けたが、社債はデフォルトに至っていな い。

日航債の残高

市場の日航債の残高は、無担保社債が4本で計470億円、無担保 ユーロ円CBが202億円2900万円。

債権回収のリスクを取引する日航のクレジット・デフォルト・スワ ップ(CDS)は「クレジット・イベント(清算事由)」のひとつである 会社更生法の適用申請を受けて清算の手続きが行われる見通し。スイス の銀行UBSは19日、日航の会社更生法申請がCDS取引の清算事由 に該当するかどうかの判断を国際スワップデリバティブ協会(ISD A)に求めた。ISDAの判定委員会がこの件について、21日に協議 する予定だ。

日航債の国債に対するスプレッド(金利上乗せ幅)も一段と拡大 している。2018年1月満期の第9回債(100億円)では、企業再生支 援機構が日航再建で会社更生法による再建案を提示されたとの報道が 広まった昨年12月末まで国債+1000ベーシスポイント(1 bp=0.01%)だったのが、報道直後には一気に4300bpまで拡大した。

格付けへの影響

日航や日航インターナショナルの格付けでは18日まで、国内外の 格付け会社で債務不履行を示唆する「C」まですでに引き下げられてい た。13日に社債格付けをCCCからCCに引き下げたS&Pは、債務 整理に社債は含まれない事業再生ADR(裁判外紛争解決)や私的整 理による再建から法的整理の可能性が出てきたことを格下げの理由と している。

日航破たんは、今後の格付け付与にも影響を与えそうだ。ムーディ ーズのコーポレートファイナンス担当の沢村美奈アナリストは、今回 のような法的整理は想定しておらず、政府支援はデフォルトを回避する ものではなかったと言い、「政府支援のあり方が変わったことを今後、 航空業界の企業の格付けに織り込ませていく方針だ」と語った。

政府支援を受けた国内の企業が法的整理を申請して社債がデフォ ルトになるのは日航が初めて。UBS証券の後藤文人クレジット調査 部長は、「公的支援などの外部サポートを過大評価するべきではなく今 後は企業の資金繰りや財務内容といった企業のファンダメンタルズの 見極めという投資の基本に立ち戻ることが重要だ」と語る。

社債投資は原点回帰

ドイツ証券の村田昭仁クレジットアナリストは、日航社債のデフォ ルトの社債市場への影響について、「投機的等級となってから半年も経 っており、既に処分している投資家が多く、保有簿価も引き下げられて いることから、影響は限定的だろう」と言う。

村田氏はまた、「元国策企業で特殊な事例とは言え、最近、デフォ ルトが身近に感じられるようになっている中、企業再生の方法でも事業 再生ADRなど新たな方式もみられることから、投資家は再生法ごとの 相違点などをしっかりと見極める必要があろう」と話した。

●日本航空が発行した社債(残高あるもの)と格付け推移

◎日本航空の社債(2010年1月19日時点で残高がある社債のみ)
(1)日本航空(発行時は、持ち株会社の日本航空システム)
    回号  発行額   年限  発行日    満期
SB 第1回債 100億円  10年  2003.12.18  2013.12.18
SB 第3回債 100億円   7年   2004.2.4      2011.2.4
ユーロ円CB  1000億円  7年  2004.4.5   2011.3.25
        現在の残高は、202億2900万円
(2)日本航空インターナショナル(発行時は日本航空)
第9回債 100億円  20年  1998.1.22   2018.1.22
第11回債 170億円  10年  1998.3.5    2010.3.5

◎格付け(2010年1月19日午後7時45分時点)
(1)日本航空
S&P:SD(債券格付けは、CC)→D(債券格付けもD)
R&I:CC→D
JCR:C→D
(2)日本航空インターナショナル
ムーディーズ:Ca
S&P:SD(債券格付けは、CC)→D(債券格付けもD)
R&I:CC→D
JCR:C→D
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