日銀の選択肢は国債か外債か、強まる圧力-「果敢な行動」と白川総裁

急激な円高でデフレ懸念が強まる 中、政府は日銀に対して圧力を強めており、日銀にとってはゼロ回答 では済まない情勢になっている。白川方明総裁は昨日、名古屋市で講 演し、金融市場の安定を確保するために必要と判断される場合は「迅 速、果敢に行動する」と表明した。次なる一手は、量的緩和の復活か、 長期国債の買い入れ増額か、はたまた外債の購入か。

先月27日の東京外国為替市場は一時、1ドル=84円台と14年4 カ月ぶりの円高となり、株価も急落した。平野博文官房長官は30日午 前の会見で、鳩山由紀夫首相と白川総裁が近々会談することを明らか にし、「日銀が量的緩和ということに判断されようとしているのかどう かを含めての意見交換だとわたしは理解している」と述べた。

菅直人副総理兼国家戦略相は27日夜の民放テレビで「米国などは 量的緩和がかなり浸透している」ことや、現在の円高の一つの要素と して、実質金利が米国より日本が高くなっていることを挙げ、「そうい う意味でまさに金融もここは頑張ってもらわなければならない」と語 った。日銀に対する政治の包囲網は着実に狭まっている。

白川総裁は30日の会見で、量的緩和政策を求める声に対して、「日 銀は現在、潤沢に資金を供給しており、市場の安定に努めている。も ちろん金融市場は生き物なので、市場の安定を確保するためにどうい うやり方が一番良いか常に考えていきたい」と語った。

量的緩和と時間軸の可能性は小さい

白川総裁は20日の会見でも量的緩和政策の復活について問われ、 持続的な物価の下落は需要の弱さの結果生じる現象であり、「需要自体 が不足しているとき、流動性を供給するだけでは物価が上がってない」 と述べ、否定的な見方を示している。

日銀は2001年3月に量的緩和政策を導入した際、「消費者物価指 数(除く生鮮、コアCPI)の前年比が安定的にゼロ%を上回るまで 続ける」と約束した。JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「日銀 が取り得る選択肢の1つは、時間軸効果による長期金利低下策」とし ながらも、「長期金利水準は既に1.2%台と低水準なので、低下余地は 限られている」と指摘、時間軸の効果は限定的との見方だ。

有力な選択肢の1つが長期国債の買い入れ増額だ。日銀は3月18 日の金融政策決定会合で「厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張 が続く可能性が高い。このような状況下、日銀は金融市場の安定を確 保するため、引き続き積極的な資金供給を行っていく」として、長期 国債買い入れ額を月1.4兆円から1.8兆円に増額した。

国債買い入れ増額の可能性

白川総裁は30日の講演後の質疑応答で「金融市場に再び混乱があ ると判断されれば積極果敢に行動する」と述べた。その後の会見で、 市場の安定確保のために長期国債買い入れ増額が再び選択肢になるか と問われ、「日銀としては、その時々の金融経済情勢を踏まえ、最適な 政策を常に考えていく」と述べ、その可能性を排除しなかった。

日銀は長期国債の買い入れについて、保有する長期国債の残高を 日銀券発行残高以下にとどめる、いわゆる日銀券ルールを定めている。 白川総裁は3月18日の会見で「追加的な買い入れ余地はかなり限定さ れる」と述べ、一段の買い入れ増額には否定的な見方を示した。日銀 券ルールの存在は、長期国債の一段の買い入れ増額の障害になるので はないか、という質問に対し、白川総裁は次のように答えた。

「われわれは資金を潤沢に供給していくため、どういう調節の枠 組みが最も適切かを常に考えている。中央銀行に課された使命である 円滑な金融調節を行っていく上で最適な政策を追求していくことであ り、それ以外に障害があるというわけではない。中央銀行の使命遂行 という点に照らして判断していく」。従来の銀行券ルールに必ずしも固 執しないとも受け取れる発言だ。

外債購入の可能性

三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「金融危機の再 燃への不安が払しょくし切れず、さらにコアCPIの低下が続く状況 の下、円高進行への懸念もあり、12月と来年3月に日銀の国債買い入 れの増額が予想される」とみる。

一方、財務省が為替介入に及び腰の中、ウルトラCとして浮上す るかもしれないのが、日銀による外貨建て債券の購入。その可能性に ついて問われ、白川総裁は「為替市場介入の代わりとして外債購入を 考えてはどうか、という質問であれば、為替レートに影響を与えるた めに行う外貨の買い入れについては、政府が行うと日銀法に書いてあ り、日銀としては法律に従って行動する」と述べた。

日銀法では資金供給の手段として外債を購入することまで否定さ れているのか、とのさらなる質問に、白川総裁は「為替レートの水準 に影響を与えることを目的とする買い入れについては、日銀が行うこ とができないと規定していると私自身は理解している」と述べ、資金 供給手段としての外債購入には言及しなかった

須田美矢子審議委員は02年6月にブルームーバーグ・ニュースの インタビューで、日銀による外債購入について「日本銀行法では否定 されていない」と述べている。須田委員は2日、甲府市内で講演と会 見するが、要注目だ。

--取材協力 広川高史 伊藤辰雄 Editor:Hitoshi Ozawa,Kenzo Taniai

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