日銀総裁:為替相場は不安定化-情勢踏まえ最適な政策追求

日本銀行の白川方明総裁は30日 午後、名古屋市内で会見し、為替相場は「不安定化していると思って おり、その動向と影響を重大な関心を持って見ていきたい」と述べた。 長期国債買い入れ増額については「その時々の情勢を踏まえ最適な政 策を常に考えていく」と述べ、その可能性を排除しなかった。

白川総裁は「為替市場の変動、ボラティリティが高まることは望 ましくない」と言明。円高が経済に与える影響については「ここにき て追加的な円高は回復途上にある企業マインドに影響を与える可能性 があるものとして認識している」と指摘。その上で「今、われわれ自 身の景気の判断が変わったということではないが、マインド面に与え る影響についてはしっかり見ていく必要がある」と述べた。

政府は20日、3年5カ月ぶりにデフレを宣言した。10月の消費 者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年同月比2.2%下落した。 為替相場では円高が進行しており、27日の東京市場で一時、1ドル= 84円台と1995年7月以来、14年4カ月ぶりの円高となった。

平野博文官房長官は30日午前の会見で、鳩山由紀夫首相と白川総 裁が近々会談することを明らかにした。官房長官は「日銀が量的緩和 ということに判断されようとしているのかどうかを含めての意見交換 だとわたしは理解している」と述べ、日銀が量的緩和の判断をするか どうかも含めての意見交換を行うとの考えを示した。

市場安定確保のため最適な政策を追求

白川総裁は「日銀としては政府との間で十分な意思疎通を図って いくことは大事だと考えている」と言明。鳩山首相との会談では「政 府の経済、物価に関する見方をうかがうとともに、日銀の見方もしっ かりお伝えする。その上で、政府との間で十分な意思疎通を図った上 で、最終的に日銀の判断において金融政策を行っていく」と述べた。

量的緩和政策を求める声が一部で出ていることについては「日銀 は現在、潤沢に資金を供給しており、市場の安定に努めている。もち ろん金融市場は生き物なので、市場の安定を確保するためにどういう やり方が一番良いか常に考えていきたい」と語った。

日銀は3月18日の金融政策決定会合で「厳しい金融経済情勢を背 景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日銀は金 融市場の安定を確保するため、引き続き積極的な資金供給を行ってい くことが重要」(声明文)として、長期国債買い入れ額を月1.4兆円か ら1.8兆円に増額した。

国債買い入れ増額の可能性

白川総裁は30日の講演後の質疑応答で「金融市場に再び混乱があ ると判断されれば積極果敢に行動する」と述べた。その後の会見で、 市場安定確保のために長期国債買い入れ増額は選択肢になるかという 質問に対し、「日銀としては、その時々の金融経済情勢を踏まえ、最適 な政策を常に考えていく」と述べ、その可能性を排除しなかった。

日銀は長期国債の買い入れについて、保有する長期国債の残高を 市中に出回る日銀券発行残高以下にとどめる、いわゆる日銀券ルール を定めている。日銀券ルールは長期国債の一段の買い入れ増額の障害 になるのではないか、という質問も出た。

白川総裁は「われわれは資金を潤沢に供給していくため、どうい う調節の枠組みが最も適切かを常に考えている。中央銀行に課された 使命である円滑な金融調節を行っていく上で最適な政策を追求してい くことであり、それ以外に障害があるというわけではない」と言明。 「中央銀行の使命遂行という点に照らして判断していく」と述べた。

外債購入の可能性

日銀が資金供給の手段として外貨建て債券を買う可能性について も問われ、「為替市場介入の代わりとして外債購入を考えてはどうか、 という質問であれば、為替レートに影響を与えるために行う外貨の買 い入れについては、政府が行うと日銀法に書いてあり、日銀としては 法律に従って行動する」と述べた。

日銀法では積極的な資金供給手段として外債を購入することまで 否定されているのか、という質問に対しては「先ほども申し上げた通 り、為替レートの水準に影響を与えることを目的とする買い入れにつ いては、日銀が行うことができないと規定しているとわたし自身は理 解している」と指摘。資金供給の手段として外債購入を排除している かどうかについては言及しなかった。

政府の経済政策への評価については「中央銀行総裁という立場と してコメントするのは適切ではない」とした上で、「日銀としては、物 価安定の下での持続的な成長経路への復帰を中央銀行の立場から全面 的に支えていきたい」と語った。

白川総裁は20日の会見で、持続的な物価の下落は需要の弱さの結 果生じる現象であり、「流動性を供給するだけでは物価が上がってな い」と述べ、金融政策には限界があるとの見方を示した。一方、藤井 裕久財務相は24日の会見で「需要が不足していることは間違いない」 としながらも、財政は「主たる役割」ではなく「金融の役割も大事だ」 と述べ、日銀が主導的な役割を果たすべきだとの考えを示した。

--取材協力 広川高史 Editor:Hitoshi Ozawa,Masaru Aoki,Keiichi Yamamura

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