【日本株週間展望】一段安、円先高観で収益不安-リスクマネー収縮」

12月第1週(11月30-12月4日) の日本株相場は一段安となりそうだ。米低金利政策の長期化観測を背 景にドル安・円高傾向が続いており、輸出企業の収益不安が高まって いる。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国で政府系企業の資 金繰り危機が表面化するなど、新興国への投資リスクも浮上し、リス クマネーも収縮気味だ。

三菱UFJ投信株式運用部の高田穣次長は、「ドバイの件で市場の 不透明要因が増した。読みきれない部分が多いが、金融市場で再びク レジットクランチ(信用収縮)のような話になると衝撃が走るかもし れない」と警戒する。

11月第4週の日本株は大幅安。日経平均株価は前の週末比416円 (4.4%)安の9081円で終了した。終値で投資家の長期な平均売買コ ストである200日移動平均線(9371円)を5月26日以来、約半年ぶ りに下回り、下値不安が漂う。仮に7月安値(9050円、13日)を割る と、「目先の底値と思われていた3月安値(7054円、10 日)が底値で なくなる危険性が出てくる」と立花証券の平野憲一執行役員は懸念す る。

14年ぶりの円高水準

日本株の足を引っ張っているのが為替相場の円急伸だ。米国の低 金利継続観測を背景にドル安が進行し、27日の東京外国為替市場では 円相場が1ドル=84円83銭と、1995年7月以来の円高値を更新した。 9月の日銀短観で示された大企業製造業の2009年度の想定為替レー トは1ドル=94円50銭。想定より10円近く円高となり、輸出企業の 業績への影響が警戒されている。

ビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦・最高経 営責任者(CEO)は、「米国は紙幣を大量に印刷しており、財政支出 は拡大している。経済運営を平時に戻す『出口戦略』が見えてくるま でドル安傾向は続くだろう」と予想。来年にかけて1ドル=80円台を 試す場面があっても不思議ではないという。

下値を模索する日本株とは裏腹に、米株式相場は高値を更新し続 けている。感謝祭前日の25日、ダウ工業株30種平均は昨年10月来の 高値を更新。年初来上昇率は19%に達した。一方、日経平均は2.5% 高にとどまる。

大和総研の野間口毅投資戦略部部長は、「米株高の背景には、超低 金利政策による過剰流動性がある。この結果、低金利でドルが売られ て円が買われ、日本株が出遅れた。この構図はしばらく続く可能性が 高い」と予想する。

このところドル安を加速させたのが新興国リスクだ。ドバイの政 府系投資持ち株会社、ドバイ・ワールドが25日、約590億ドルの債務 について返済延期を債権者に対して求めると発表。資金繰り危機が表 面化し、大型開発で急成長してきた中東への信用不安が一気に広がっ た。その結果、リスクマネーが収縮し、ドル売りに拍車をかけた。主 要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル・ インデックスは26日、08年8月以来の低水準に沈んだ。

デフレ

円高に加えて、日本がデフレ状況にあることも積極的に上値を追 えない要因だ。日本政府は20日の11月の月例経済報告で、焦点だっ た物価の判断について「緩やかなデフレ状況にある」とし、06年6月 以来、3年5カ月ぶりに「デフレ」を認定した。

農林中金全共連アセットマネジメント運用部の中村一也次長は、 「政府は『デフレ宣言』をしたが、物価の番人である日本銀行は金融 緩和などデフレ対策に消極的だ」と指摘。「政府と日銀の認識の違いが あらためて浮き彫りになっており、これは株式相場にとってネガティ ブ」と懸念する。

輸出企業の収益悪化、海外からの安価な輸入品流入など円高はデ フレ状況を悪化させる可能性が高く、株式市場に資金は入りにくい。 東京証券取引所が27日に発表した11月第3週(16-20日)の投資主 体別売買動向(東証、大証、名証1・2部合計)によると、外国人は 8週ぶりに売り越した。金額は983億円。

テクニカルは買いシグナル

もっとも、テクニカルで見ると、日本株は売られ過ぎの水準にあ る。東証1部の騰落率レシオ(25日移動平均線)は27日に57.68%と、 昨年10月以来の60%割れとなった。経験則では120%超で相場の過熱 感を示し、70%以下では押し目買いが入りやすいとされる。

いちよし投資顧問の秋野充成運用部長は、「ドバイショックをきっ かけに新興国市場から投資資金が逃避し、世界的に出遅れている日本 株に向かう可能性もある」と予想する。

第1週に発表される経済指標は、国内では30日に10月の鉱工業 生産、3日に法人企業統計調査が予定されている。米国では1日に11 月の供給管理協会(ISM)製造業景況指数、2日に11月のADP雇 用統計とベージュブック(地区連銀経済報告)、3日にISM非製造業 景況指数、4日に11月の雇用統計が発表される予定だ。

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】
●みずほ投信投資顧問の荒野浩理事
  「相場に下方バイアスのかかりやすい状況が続く。ドバイ政府系
企業の債務返済延期が正式に決まれば、中東とのつながりが強い欧州
経済への打撃は大きく、再び世界的な金融混乱に陥る可能性も低くな
い。売られ過ぎを示すテクニカル指標が相次ぎ、『陰の極』でセオリー
では買いのタイミング。しかし、ファンダメンタルズ面での不安材料
が重なる上、下値サポートラインとなってきた日経平均の200日移動
平均線を大きく割り込み、チャート的に崩れ、買い出動できずにいる」

●カブドットコム証券・河合達憲マーケットストラテジスト
  「下落が続きそう。リスク許容度の低下、急激な円高への警戒に
より株式市場への資金流入は減少しそう。ドバイ・ワールドの債務繰
り延べ要請を受け、中東に進出する建設やプラント関連銘柄では工事
代金が回収できないとの懸念が払しょくできず、下がりやすい。為替
相場は一時1ドル=84円台まで進み、輸出関連企業は買いにくい」

●東洋証券情報部の大塚竜太部長
  「27日は引けにかけて投げも出たようで、下げがきつかった。も
っとも、RSI(株価相対力指数)や騰落率レシオなどテクニカル指
標を見ると、日本株はリバウンドしてもおかしくない水準まで下げて
いる。円高で輸出株には手を出しづらいが、好業績の内需関連、円高
メリットのある銘柄は堅調に推移しそうだ」

--取材協力:浅野 文重、河野 敏 Editor:Makiko Asai、Shintaro Inkyo

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