財務相:人民元、実力からみて安い-ドル・ペッグ見直しを

藤井裕久財務相はブルームバーグ・ ニュースのインタビューで、欧米諸国から中国の人民元改革を求める 声が強まるなか、人民元は中国経済の実力に比べて安いとの認識を示 し、切り上げの必要性を示唆するとともに、対米ドル・ペッグ(連動) 制を見直すべきだとの考えを示した。

藤井財務相の発言は、日本も欧米諸国と歩調を合わせる姿勢を明 確にしたものだ。財務相は「人民元は経済の実力から見ても安いとい うふうに評価されても仕方ない」と述べるとともに、「今、人民元は 米ドルとペッグしている。そういう状況が必ずしもいいとは思えない」 との見方を示した。インタビューは25日に行った。

中国政府は現在、人民元をドルと事実上連動させている。世界的 な金融危機や景気低迷を背景に、2008年7月以降、対ドルの人民元相 場を1ドル=6.83元付近で維持している。これに対し、欧米諸国を中 心に過小評価された人民元相場が世界的な貿易不均衡の一因になって いるとの見方が強い。

ガイトナー米財務長官も19日、中国経済における輸出依存度が低 下しているとして、同国が人民元相場の柔軟化を進めると「強く確信 している」と述べ、中国政府にくぎを刺した。また、コリンズ次期米 財務次官補(国際問題担当)は20日、人民元について「明らかに過小 評価されている」と述べた。

一方、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁やユーロ圏財務相 会合の議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼国庫相ら、欧州 連合(EU)の金融・ 財務責任者は28日に訪中し、人民元の米ドル に対する上昇を容認するよう中国側に求める予定だ。中国外務省の 張志軍次官は24日、同国が人民元相場の柔軟性を高めると述べた。

保護主義回避へ正当な考え方

カリヨン証券の加藤進チーフエコノミストは、「中国はいまや世界 中にいろんな商品を輸出して貿易黒字を稼ぎ出している。WTO(世 界貿易機関)、いわゆる貿易の自由化を進めてきた流れからすると、 人民元が異常に安く置かれることによって、世界的な保護主義の動き、 貿易制限の動きが高まる可能性がある」と述べた。

その上で、「中国が貿易黒字、外貨準備をため込んでいるという 現状からすれば、人民元を固定化して安く置いているために、そうい う現象が表れているというのは一つの事実」と指摘。「本来であれば、 為替が貿易不均衡を是正するために動くはずだが、為替が変動しない ので、貿易収支の不均衡が永続化してしまっている」とし、「為替で だめなら保護主義、関税をかけるとか、そういう競争になってしまう。 それを回避するというのは一つの正当な考え方」との見解を示した。

輸出をだめと言ったことない

藤井財務相はまた、ガイトナー長官が強調している強いドル政策 に触れ、「対米ドル・ペッグの問題はあるが、米ドルを強くすること は間接的に人民元を強くすることにもなる。そういう考え方を取って いきたい」と、人民元をめぐる日本としてのスタンスを説明した。

円相場については、「水準について論じることは一切いけない」 と明言を避けた。ドル円相場は26日午後零時10分(日本時間)現在、 1ドル=87円24銭前後で推移している。

鳩山政権が目指す内需主導型の経済構造への転換には時間がか かるため、当面の景気回復は従来通り外需主導型になるとの見方に 対して、財務相は「新興国を中心にアジア経済は相当強く伸びている。 そういう時には外需という形を取る。輸出をだめだと言ったことは 一度もない」と述べ、外需も引き続き重要な役割を果たすと指摘した。

その上で、「過去の経済運営は過剰に輸出に頼っていた。外需と 内需のバランスを取るために、国の資源配分を変えなければならない。 若干時間がかかるのは間違いないが、同時にアジアを中心とした外国 市場の強力な回復を見ていってもよい」との認識を示した。

デフレ対策は「財政・金融一体で」

政府の「デフレ宣言」を受けた対策については「財政・金融一体 でやらなければならない。金融だけに任せる問題でもないが、金融も 非常に大きな影響力を持っている」と強調。「日銀がどう考えられるか は日銀の問題だ」としながらも、「日銀の現状認識は政府と同じと考え ていただいてよい」と述べ、日銀に適切な対応を求めた。

今月10日に一時1.485%に上昇した長期金利はデフレ宣言に伴う 低金利政策の長期化観測から1.2%台まで下がっている。藤井財務相 は「政府が非常に国債市場の信認を重視していることが理解されてい る」と説明。長期金利が上がれば中小企業への貸付金利や住宅ローン 金利の上昇につながるほか、政府が検討している金融機関の貸し渋り 対策も「減殺される」と述べ、強い警戒感を示した。

来年度国債発行44兆円枠は「可能」

藤井財務相はさらに、来年度予算編成に向けて「長期金利の動向 は非常に重要な判断要因だ。国債市場がどう反応するか。基本的にそ の信認を得るという観点を常に持って取り組む」と強調。来年度の新 規国債発行額を44兆円以下に抑えることは「可能だ」と明言した。

また、95兆円に上る来年度予算の概算要求総額を削減するため、 マニフェスト(政権公約)に掲げた新政策の所要額7.1兆円を減額し なければならないと指摘。高速道路無料化に必要な6000億円の大幅削 減のほか、全額国庫負担を前提に2.3兆円を計上した子ども手当につ いて「負担関係を検討することで国費として減らせる余地がある」と 述べ、地方自治体や企業へも負担を求める可能性を示唆した。

事業仕分けを進めている仙谷由人行政刷新担当相が92兆円以下 への削減を目指していることについては、「国債市場が信用を失うよ うなことがないよう削減を図る」と述べるにとどめた。

--取材協力 Rebecca Christie, Meera Louis, Stephanie Bodoni Editor:Hitoshi Ozawa, Masaru Aoki

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