日銀総裁:流動性供給だけで物価は上昇しない-デフレ脱却

日本銀行の白川方明総裁は20日 午後の会見で、政府がデフレ宣言を行ったことについて、持続的な物 価の下落は需要の弱さの結果生じる現象であるとした上で、「需要自体 が不足しているときは、流動性を供給するだけでは物価が上がってこ ない」と述べ、金融政策だけでは限界があるとの考えを示した。

白川総裁は「景気は持ち直している」としながらも、「設備投資や 個人消費の自律的回復力はなお弱い」と強調。物価は「今年度前半ま での需要の落ち込みが極めて大きかっただけに、下落圧力がかなり長 い期間残存する可能性が大きい」と語った。政府は同日午後の月例経 済報告で、物価情勢は「緩やかなデフレ状況にある」と宣言した。

白川総裁は政府の見解について、日銀の考え方と「異なっていな い」とした上で、物価の持続的な下落は「需要の弱さの結果生じる現 象」であり、そうした状況を改善するためには「根本原因に働きかけ る、つまり設備投資や個人消費といった最終需要が自律的に拡大する 環境を整えることが不可欠だ」と述べた。

さらに、設備投資や個人消費といった最終需要が自律的に拡大す る環境を確保するために、「家計の将来の安心感や、企業の成長期待を 確保することが最も大事な課題だ」と言明。「こうしたことを意識しな がら、政府、中央銀行といった政策当局と民間経済主体がともに努力 をしていくことが必要である」と述べた。

追加的な緩和措置も排除せず

白川総裁は一方で、「需要自体が不足しているときには、流動性を 供給するだけでは物価が上がってこない。この点は今回の米国の経験 を見ても分かる」と述べ、金融政策だけでは限界があると強調。具体 例として、中央銀行が供給している超過準備(当座預金の所要準備を 上回る額)の対GDP(国内総生産)比率に言及した。

同総裁によると、この比率は日銀が2001年3月から06年3月ま で行った量的緩和政策のときが5.8%、米連邦準備制度理事会(FR B)は現在6%台。「日本の量的緩和時代、それから現在のFRBも超 過準備、流動性をたくさん供給しているが、そのこと自体によって物 価を押し上げていく効果は乏しい。流動性制約が経済活動を縛る状況 でない局面では、物価を上げる力はない」と語った。

白川総裁はさらに、金融政策が効果を発揮するには「1年半から 2年、あるいはもっと長いかもしれない。加えて、現在は世界的に加 わったショックが大きいので、さらに時間がかかるかもしれない」と 指摘。重要なことは「今の経済の経路が、最終的に物価安定の下での 持続的な経済成長を展望できる軌道にあるのかどうか」であり、不確 実性はあるものの、「そういう展望が開けていく」との見方を示した。

貢献できることがあるか常に考える

白川総裁はこのように述べる一方で、「中央銀行としてその時々の 環境の中で、中央銀行として貢献できることがあるかどうかは常に考 えていく。中央銀行はそういう組織だ」と言明。追加的な金融緩和政 策の可能性を排除しなかった。

日銀は20日開いた金融政策決定会合後の公表文で「極めて緩和的 な環境を維持し、わが国経済が物価安定の下での持続的成長経路に復 帰していくことを今後とも粘り強く支援していく」方針を示す一方で、 先月30日の公表文にあった「当面、現在の低金利水準を維持する」と の文言を削除した。

白川総裁はその意図について「前回の金融政策決定会合では、コ マーシャルペーパー(CP)、社債の買い入れなど各種時限措置の取り 扱いの見直しを決定した。その際、時限措置の見直しが直ちにマクロ の金融緩和措置の変更につながるものではないことを明確にする趣旨 から、当面、現在の低金利水準を維持する方針を示した」と述べた。

政策面でのスタンスに変化ない

その上で「今回は時限措置の取り扱いうんぬんという案件がない 中で、本日の公表文では従来同様の発表方式を踏襲し、先行きの金融 政策運営方針として、極めて緩和的な金融環境を維持していくととも に、わが国経済が物価安定の下での持続的成長経路に復帰していくこ とを粘り強く支援していくことを示した」と言明。「政策面でのスタン スに変化は全くない」と強調した。

日銀は同日開いた金融政策決定会合で、景気は「持ち直している」 として、3カ月連続で情勢判断を上方修正した。先月30日開いた金融 政策決定会合では、12月末を期限とする企業金融支援のための時限措 置のうち、コマーシャルペーパー(CP)と社債の買い入れについて は年内で停止し、企業金融支援特別オペは来年3月末まで延長した上 で完了することを決めた。

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