3Dに賭けるソニー、売上高目標1兆円超-懐疑的な声も(Update2)

ソニーは映像が飛び出して立体的 に見える3D(3次元)関連商品を2010年度(11年3月期)から本格 展開する。3D対応の液晶テレビ、ゲーム機、放送機器などを投入し、 12年度(13年3月期)に映画などのコンテンツを除く3D関連商品で 売上高1兆円超を目指す。同社が19日開いた経営説明会で表明した。

ソニーは10年度中に3D対応の液晶テレビ「BRAVIA(ブラ ビア)」、ブルーレイディスク(BD)再生機を世界で発売する予定。 パソコン「VAIO(バイオ)」や家庭用ゲーム機「プレイステーショ ン3(PS3)」、新規の携帯端末などにも順次3Dを展開する。家庭 用だけでなく、業務用の放送機器分野でも3D対応のビデオカメラや編 集機材を販売する計画だ。

ソニーを含む日本株を運用する米大手運用会社フェデレーテッ ド・アドバイザリーの光井祐宏シニアアナリストは、12年度に3D関 連商品で1兆円という売上高目標の達成は難しいとみる。光井氏は「3 Dは方式によっては専用メガネをかけなくてはならない。ゲームには有 効だろうが、スポーツやドキュメントなどの映像には不向き」とみてい るためだ。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹投信グループ長も、 3Dに対して「理想は分かる」としながらも、ソニーの収益性改善を求 めている株式市場とは「かい離がある」とし、3D事業には懐疑的だ。 フェデレーテッドの光井氏は「ゲームやテレビの黒字化は過去何年間も 言い続けて実現していない。3Dという夢を語る前に、ちゃんと利益を 出してほしい」と厳しい注文をつけた。

前期は14年ぶりの営業赤字に転落、今期は950億円と2期連続の 最終赤字に陥る見通し。人員削減や工場集約のほか、テレビは生産委託 比率の拡大、ゲームは新型の半導体搭載でコスト削減を進める。来年度 にテレビとゲーム両事業を黒字化、12年度には営業利益率5%を目指 す。だが、ともに厳しい事業環境にありながら業績好調な韓国サムスン 電子はすでに前期で5%に届いており、ソニーの収益力は見劣りする。

2010年は3D元年か

ソニーのほか、パナソニックも3D対応のテレビやBD再生機を来 年発売する方針。東芝も来年度中の3D対応テレビの発売を目指してい る。来年は3Dで店頭は賑わいそうだが、ソニーが3D市場で主導権を 握れるかどうかはまだ不透明だ。

映画では北米を中心に3Dの人気が高まっている。AMCシアター ズ、リーガル・エンターテインメント・グループなどの映画館チェーン 大手が数年内に全スクリーンを3D対応にする方針で、ソニーが3D用 プロジェクターを大量に受注している。

ソニーの安京洙・業務執行役員は18日に開いた説明会で、3D対 応のデジタル方式プロジェクターの受注が米国で1万台超、国内で100 台以上に達したことを明かした。デジタルシネマ映写機や撮影・編集機 材など3D対応の業務用機器の売り上げが予想以上に伸びているとい う。

ソニーはデジタルシネマ上映システムの初期導入費用を映画配給 会社と共同負担し、映画館のデジタル化を支援するサービスも10月か ら開始。導入コストを抑えることで自社システムの普及を促している。 来年2月には3D撮影用の小型・軽量カメラを投入する。

パナソニックも、映画「タイタニック」で有名なジェームス・キャ メロン監督の12年ぶりの新作で、3D技術を駆使した映画「アバター」 とタイアップ。テレビの販売で共同キャンペーンを打ち出している。パ ナソニックの西口史郎デジタルSVCマーケティング本部長が「来年は 3D元年」というように、各社が3Dによる市場の活性化を期待してい るのも事実だ。

ハードとソフト両方持つソニー

ハワード・ストリンガー最高経営責任者は19日の会見で、「ソニー は3Dについて映像制作からコンテンツを顧客に届けるところまでで きる唯一の企業だ」と3D戦略に自信を示す。JPモルガン証券の和泉 美治アナリストは「ソニーはハードもコンテンツもデバイスもすでに持 っており、3D事業の拡充にそれほど投資はかからないのではないか」 と肯定的にみている。

ソニーは3Dテレビの発売にあわせ、3Dゲームも販売する。ゲー ムやパソコンなどネットワーク商品を統括する部門のトップ、平井一夫 氏によると、手持ちのPS3でもソフトウエアをアップデートするだけ で3Dゲームが遊べるようになり、ハードを買い換える必要がない。こ のため、和泉氏は「顧客にも負担は少ない」とみており、1兆円の目標 達成は「それほど大変ではないのかもしれない」との見方を示した。

ハードの品ぞろえはすでに豊富だが、新しいハードとしては電子書 籍閲覧端末「リーダー」もある。ソニーは今期の電子書籍端末市場を 300万-400万台と予測、12年度にはシェア40%を目指す。このリーダ ーでも3D対応の展開が見込まれる。調査会社フォレスター・リサーチ によると、米国の電子書籍端末市場でのシェアは現在ソニーが35%、 インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末「キン ドル」は約6割。

証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は「ハード、ソフトそれぞれ の技術や質の高さがソニーの強みであり、そこをつないで業績を伸ばす のはソニーにとって理想的な戦略」と指摘。「これまでの失敗は個々の 優位性を1つのもので展開できなかったことにあった。今回の3Dは 個々を融合して生み出せる具体的な事業としてイメージしやすく評価 したい」と話した。

--共同取材:Masaki Kondo, Pavel Alpeyev,駅義則

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