三菱ケミ:三菱レの買収で合意-買収額は最大約2174億円(Update3)

国内化学最大手の三菱ケミカルホ ールディングスは19日、アクリル樹脂原料で世界シェア1位の三菱レ イヨンを買収することで合意したと発表した。株式公開買い付け(TO B)などを実施し、三菱レの完全子会社化を目指す。買収額は最大約 2174億円。三菱ケミカルは基礎化学品や医薬品に合成繊維を加えた売 上高3兆円を超える総合化学メーカーとなる。

三菱ケミHは、来年2月上旬から三菱レ株のTOBを実施し、3月 末の全株取得を目標に傘下に収める。買収完了後に三菱レは上場廃止と なる見込み。

TOBの買付価格は1株380円。三菱ケミカル広報・IR室の萬卓 也氏によると取得対象株数は約5億7223万株で、ブルームバーグ・ニ ュースの計算で買収額は最大約2174億円となる。事業全体の高付加価 値化を目指す三菱ケミHは三菱レが持つ炭素繊維事業などを取り込み、 総合力を高める。

会見した三菱ケミHの小林喜光社長は2174億円のうち、半分は手 元資金、半分はつなぎ融資で賄い、つなぎ部分は後日に社債もしくは長 期借入金で対応する。のれん代と無形固定資産は最大1000億円を見込 み、毎年40-50億円を20年かけて償却するという。

また、物流、購買や拠点統廃合で30億円、水処理事業や炭素繊維 など類似事業の統合で70億円のシナジー(相乗)効果を見込む。手始 めに10年10月を目標にエンジニアリング事業、水処理事業の統合を目 指す。

同社長はシナジー効果でのれん代などの償却は吸収できるとしてい る。両社は統合の合意で15年には売上高4兆円、営業利益2800億円に なるとしているが、小林社長は「シナジー効果を考えると15年で売上 高5兆円以上、営業利益4000億円があるべき姿。詳細は新たな中期経 営計画で今後示していく」と述べた。

日本の化学業界は、安価な原材料で攻勢をかける中東やアジア勢な どに押され、体質改善を迫られている。三菱ケミHの小林喜光社長によ ると、化学業界は国内でも「他産業に比べて20年、構造改革が遅れて いる」という。石油化学事業の再構築を目指す三菱ケミHと、脱繊維化 により飛躍を目指す三菱レの利害が一致した。

新生証券シニアアナリストの松本康宏部長は今回のような統合は必 然とみる。「国内市場は縮小し、海外の主要市場だった中国でも現地企 業が力をつけてきているので、日本の化学会社が競争力をつける必要が あった」と指摘。「三菱ケミは炭素繊維やアクリル樹脂原料など成長性 のある商品が手に入るし、三菱ケミの傘下に入ることで三菱レイヨンも 資金力の心配がなくなる」と述べた。

三菱ケミHは品ぞろえ強化、三菱レは財務力補完

三菱ケミHはエチレンなどの基礎化学品事業を集約する一方で、炭 素繊維、リチウムイオン電池材料など高機能素材の事業を強化する方向 を打ち出している。既に田辺三菱製薬や三菱樹脂を傘下に収めて業態を 広げたが、さらに2010年度までに事業拡大の買収や提携に2500億円を 投資することを表明していた。

一方、三菱レも、国内繊維の低迷から脱繊維化を指向。水族館の大 型水槽などに使用されるアクリル樹脂原料で、世界シェア1位を目指し て今年5月、1600億円を投じて、英国のルーサイト社を買収。負債が 一気に倍増していた。

ただ、会見した三菱レの鎌原正直社長は「中長期的なグローバル展 開の中で、炭素繊維や水処理施設への大きな投資を控えている」ことが 三菱ケミHの傘下に入る最大の意義だと説明した。

同じ化学の領域にありながら、両社には重複する主要事業がない。 三菱ケミHは炭素繊維などでより事業が強化できるばかりか、世界1位 のアクリル樹脂原料事業を取り込み、成長事業を強化できる。三菱レは ルーサイト買収で悪化した財務力を補完できる。09年3月期の両社の 売上高は三菱ケミHが2兆9090億円、三菱レが3450億円。合計で3兆 2540億円となる。

買収の発表を受けて直嶋正行経済産業相は、両社の基本合意を歓迎 するとしたうえで、これを機に構造的な変化に直面している「日本の化 学産業各社が、事業再編を含む競争力強化の様々な取り組みを積極果敢 に進めること期待したい」とするコメントを発表した。

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