「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

11月18日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは19、 20日開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャ ー」17人に内外の経済・物価情勢、金融政策の展望を聞いた。質問内 容は以下の通り。アンケート回答期限は17日午前8時。エコノミスト 予想のまとめ記事は「政府のデフレ宣言で高まる日銀への圧力-国債 買い入れ増額の可能性も」をご覧ください。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済・ 物価情勢の展望と、最近の長期金利上昇の背景と今後の見通し、13) 民主党の経済政策の評価と、同党の日銀の金融政策に対するスタンス、 14)金融政策の展望と、長期国債買い入れ増額の可能性。

●三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年10-12月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)世界経済の焦点は対策効果の一巡後における反動がどの程度表れ るか。各国ともリバウンドの動きが一服となり減速、踊り場へ。米国 経済は家計のバランスシート調整が道半ばで、自動車買い替え支援や 住宅減税による需要先食いの反動が消費・生産面に顕在化する見通し。 商業用不動産価格の下落基調を背景に金融システムの資本不足問題も 依然くすぶる。10-12月実質成長率は前期比年率▲0.2%と反落へ。

欧州経済は米国と同様の構図。実際ドイツでは11月のZEW景況 感指数の先行きが2カ月連続で悪化し、国内向け資本財受注も軟調に 転じている。中国景気は景気対策頼み。インフラ投資は来年の上海万 博を目指して底堅さが持続しそうだが、輸出は世界的な景気低迷の影 響で引き続き鈍い。人民元切り上げの可能性も不確実性を高めている。

日本経済は対策効果の一巡とともにデフレ(スパイラル)懸念が 強まっている。鳩山政権の政策の迷走も先行き不透明感を募らせてい る。景気は二番底の可能性を引き続き否定できない。景気回復の象徴 的指標だった景気ウォッチャー調査のDIピークアウトに転じた。

長期金利は1.20-1.60%というコアレンジ内での上下動が続く。 ファンダメンタルズ(期待成長、期待インフレ)面から低下圧力が優 勢になると低下、リスクプレミアムの拡大(財政規律の喪失懸念や国 債増発/消化懸念)が優勢になると上昇。年末にかけては弱含み、1 -3月は下げ止まりから反発傾向へ。

13)民主党の経済政策は来夏の参院選にらみという多分に近視眼的な 印象。中長期的な成長・財務戦略が致命的に欠如している。歪みは新 規国債発行額の膨張リスクとなって顕在化しつつある。一方、無駄を 根絶して財源を捻出(ねんしゅつ)という公約は事実上ほごにされて いる。

鳩山首相は年内に成長戦略を、菅副総理・国家戦略担当相も5、 6月ころ中長期的な財政戦略を策定すると表明したが、もっとスピー ド感を持って現実路線への軌道修正を随時行っていく必要がある。

民主党は中長期的な成長・財務戦略を国民に提示し、日銀には金 融政策面からの協力を求める、というスタンスが望ましい。しかし、 前述の通り前提が欠如している。このまま走っていけば、膨張する国 債残高のファイナンス(政府債務のマネタイズ)というツケを日銀に 回すことになりかねない。危うさが漂う。

14)金融政策は景気低迷/需給緩和による真性デフレリスクに備え、

0.1%の超低金利政策を堅持。真性デフレが家計や企業の中長期的なイ ンフレ期待を一段と押し下げデフレスパイラル(=需要減退と物価下 落の同時進行)の蓋然(がいぜん)性が高まった場合(リスクシナリ オ)は追加緩和を検討する。ただし完全ゼロ金利への追加利下げは見 込まれない。

一方、利上げを探るのは、拙速と批判されたゼロ金利解除時の経 験にかんがみ、物価下落の根本原因であるデフレギャップが解消し、 消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率が安定的 にプラスで推移する(デフレに逆戻りしない)と見通される経済・金 融情勢になってから。早くて2012年以降か。長期国債買い入れオペの 増額可能性はリスクシナリオの一つで、現在の可能性は20%程度。

●日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年10-12月以降(2011年4-6月以降) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(0.30%) 11) 11年9月末 :0.10%(0.30%)

12)米国では製造業主体に景気回復を進めているが、金融危機による バランスシート調整の厳しさは企業から家計に移行し、所得と雇用の 厳しい状況は続こう。米連邦準備制度理事会(FRB)が低金利政策 の時間軸の説明で3つの条件を付けた。注目すべき指標は失業率と設 備稼働率、コアPCE指数となる。

設備稼働率は今年6月をボトムに3カ月連続上昇する一方、10月 の失業率は10.2%と上昇はまだ止まっていない。90年代以降で見ると、 稼働率のボトムと失業率のピークのタイムラグは1年3カ月から1年 半程度はある。FRBの出口戦略はまだ遠い。

7-9月の国内実質国内総生産(GDP)成長率は予想を上回る 前期比年率4%超の成長を遂げた。供給統計の設備投資の下げ止まり は朗報だが、政策効果による消費押し上げと想定外の在庫増は先行き 慎重にならざるを得ない。今後は冬季賞与の大幅減少と消費面の政策 効果のはく落、増産ペース鈍化、補正予算圧縮の影響等が見込まれる。

輸出比率の高いアジア新興国経済の堅調持続はフォローの風だが、 資源高による交易条件の悪化は懸念材料となる。年明け以降の国内経 済の足取りは緩やかにとどまるだろう。在庫復元の反動減が大きく出 るタイミングでは、GDPの前期比マイナスの可能性も否定できない。 来年前半は踊り場局面になる可能性があるとみている。

日本の長期金利は10月上旬から1カ月余りの間、国債増発懸念を 背景に上昇した(1.240%⇒1.485%)。米国10年債入札週を契機に切 り返した点は、今年6月時に1.560%をつけた時と同じ形である。漠 然とした需給懸念は、実際に米国債入札をこなすことでいったんは和 らぎ、運用ニーズのある国内投資家は押し目では買い出動した。

新政権による予算編成の最終地点が見えてくるまでは、引き続き 漠然とした需給懸念はぬぐえないと思われる。しかし、当面内外の景 気判断と金融政策予想が大きく転換する可能性は低く、既存レンジ内 (1.25-1.50%)で需給要因に動くことになろう。

13)民主党の政策は企業よりも家計に優しい政策だが、財源を確保し 将来不安を解消できなければ、子ども手当等の所得増も貯蓄に回り、 消費を増やすことは難しい。日本の中長期的なグランドデザインを示 し、期待成長率を高める方法を考える必要がある。

金融政策については日銀の専管事項として任せている印象。目先 の気掛かりな点は、国会同意人事である日銀審議委員(欠員1名と水 野委員の後任の計2名)の選考話が進んでいるように聞こえてこない ところか。

14)日銀は展望リポートで、コアCPI前年比上昇率の3年連続の前 年比マイナス見通しを示した。11年度には潜在成長率を明確に上回る 成長が見えても、物価のマイナス見通しが変わらない状況下では、す ぐに利上げを検討するとは考え難い。白川総裁は4日の講演で「リス クはバランスする方向に向かっている」と述べたが、金融政策の粘り 強い支援は、長期戦となりそうだ。

むしろ、来年前半に景気の踊り場を迎えるような局面となれば、 来夏に参院選を控えた政府からも協力要請の可能性はあるとみる。当 面は所得・雇用環境の厳しい状況下、新興国頼みの時間帯となるだけ に、例えば資源高による交易条件の悪化、もしくは急激な円高進行に よる企業収益の一段の下押しの可能性が高まった場合には、何もしな い選択より、長期国債買い入れの増額を検討することになるだろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年7月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)春から上向いてきた景気のベクトルは徐々に横から下へと変わっ ていく途中段階にある。鉱工業生産の息切れが徐々に明確になってく るだろう。市場では今後、景気二番底の懸念が浮上しやすい。物価は デフレが慢性化しており、その背後には人口動態からくる内需の「地 盤沈下」継続がある。

長期金利の10月中旬からの上昇は明らかに「悪い金利上昇」。財 政運営に対する不安や不信が国内投資家の債券買い意欲を減退させた。 ただし、長期金利は結局のところファンダメンタルズと金融政策の見 通しに沿って形成されてくる。来年1-3月の長期金利は現状よりも 一段低下しているだろう。

13)民主党の経済政策の考え方は基本的に正しいとしても、具体策は マニフェストにこだわり過ぎて柔軟性を欠いている。政策全体として まとまりがない。最も憂慮すべきは財政運営の拡張バイアス。10年度 予算編成がどのように決着するかは今後数年間の財政運営に影響して くるだけに極めて重要。民主党の対日銀スタンスはまだ不明確。

今後設置されるとみられる政府・日銀の定期協議の場でどのよう な話が出てくるかに注目。

14)超低金利政策の長期化は動かないだろう。市場が動揺する場合、 必要に応じて「時間軸」の付加が検討される可能性が潜在。長期国債 買い入れの増額はすべきでないと考えている。日銀券ルールは堅持し た方がよい。しかし、鳩山内閣の姿勢いかんで、もっともらしい理屈 をつけての買い入れ増額に日銀が追い込まれる可能性は否定できない ので、注視が必要。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年度後半以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)財政赤字が無節操に膨張していくイメージを回避しないと、長期 金利にとって危険な事態が生じる恐れがある。財政支出の仕分け作業 は透明性を高める点で評価できるが、今後はマニュフェストに記載し た支出に対しても同様の厳しさで望む公平性が必要だろう。予算を削 られた人々は政権に恨みを抱く可能性があるので、世論全般の支持を 確保するには議論の透明性をできるだけ高く維持していくべきだろう。

先日、中国に出張してきたが、財政政策、金融政策のサポートに より、内需関連産業は活況を続けている。世界銀行の見通しによれば、 今年のG3(米、欧、日)のGDP減少の4分の3を中国のGDP増 加が相殺するもよう。税収は増加しており、中央政府の財政赤字はま だ深刻ではないため、来年も財政刺激策は継続されるだろう(中長期 的には地方政府の財政に不安があるが)。

不動産ブームの過熱に当局は神経を尖らせているが、輸出が本格 回復するまでは緩和スタンスは基本的に継続されると予想される。金 融引き締め方向の動きは当面は微調整、あるいは投機の行き過ぎに警 告を発する程度の範囲にとどまると思われる。

米欧経済は新興国・資源国と異なり深刻なバランスシート調整を 抱えているため、バンピーかつ非常に緩やかな回復にとどまると思わ れる。日銀は現行の超低金利政策を長く継続する姿勢を示し続けるだ ろう。先進国の中では利上げのタイミングは最も遅いと考えられる。

14)一般的に国債の利回りは単に債券市場の需給関係だけではなく、 先行きの成長、インフレ、財政赤字プレミアムなどを織り込んでいる。 中央銀行の国債の買いオペで長期金利を低下させるためには、①中央 銀行が国債市場で価格形成を支配できるほどの圧倒的に巨大な購入者 になり、かつ②それでも財政赤字の維持可能性や、金融政策のクレデ ィビリティに投資家が疑念を抱かない-という条件が必要になる。

その条件が成立していないと、FRBの国債買入オペのようにい ったんは始めてみたものの、撤退を余儀なくされることになると思わ れる(米国では8月にFRBが国債買い入れオペの停止を発表したら、 国債の利回りが低下したと指摘するFEDウォッチャーもいる)。 そ ういった観点から考えると、日銀は国債買い入れオペの増額に消極的 だろう。しかし政府との間では今後懸案事項になる可能性はあろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)従来の見方と特に変化なし。10年は平均して米国は3%強、日本 は2%程度の成長率で推移する一方、ユーロ圏の回復テンポがやや下 振れる可能性。長期金利の上昇は景気回復期待に加え、財政の悪化懸 念が背景にあるとみられるが、世界的なディスインフレ傾向(日本は デフレ傾向)の下では、長期金利上昇には限界がある。基本的には一 定のレンジ内(日本国債は1.3-1.6%)の動き。

13)民主党が「無駄遣い是正」のために歳出を丹念に見直す姿勢は評 価できるが、次に必要なことは、今後社会保障関係費の持続的な増加 が予想される中、中長期的な財源をどこに求めるか、という点。 「節約」と「増税」だけでは限界がある。消費税率引き上げと名目経 済成長率3%が実現できないと将来、財政の資金繰りが大幅に苦しく なり、財政破たんの可能性も出てくる。

14)11年度までは現状の政策金利維持。日銀が歯止めなく国債を買い 増すことは問題。確かに政府が財政支出を拡大する一方、日銀が国債 の購入を増やせばデフレ脱出は容易になるが、出口戦略なき日銀の国 債購入増額は危険。1930年代(軍事支出増大と日銀の国債引き受け) と1990年代(公共事業支出増大)はいずれも政治の歪みをもたらし、 かえって大きな政治的問題を生み出した教訓を忘れるべきではない。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月以降(2011年1-3月) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(0.25%) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)マクロは生産動向を見る限り、景気腰折れではない。その一方、 個人消費は冬のボーナスを期に悪化してもおかしくはない。10年初め から雇用改善に向かうかどうかの重要な見極めどころにいる。長期金 利はやや落ち着いてきた印象。しかし、株価が上昇すれば、相対的に 長期金利上昇に悩まされる。日銀は「粘り強く」という表現を繰り返 し、長期金利上昇をけん制するとみられる。

13)衆院選のマニフェストは成長政策が不十分。年内に別途、成長政 策を描くとみられるので、それに注目したい。

14)さらなる長期国債の買い入れ増は見込みづらい。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年10-12月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)中国を中心に新興国経済が想定以上の回復を見せており、アジア 向けを中心に輸出はこれまでの予想を上回って伸びる可能性が高い。 背景には、各国の積極的な景気刺激策の効果もあるが、それに加えて 米国の超低金利政策の継続観測を背景としたドル・キャリートレード による資本流入により、新興国で一段と緩和的な金融環境が作り出さ れていることがある。

健全性、持続性はともあれ、アジア経済の内需は当面力強い回復 を続けそうな情勢であり、当初思った以上に輸出が日本経済をけん引 することになりそうだ。

長期金利については①実質均衡金利(≒1人当たりの潜在成長率) ②長期のインフレ期待③財政リスクプレミアムの3つの要因に分解す ることができる。世界的な信用バブル崩壊を背景に日本のトレンド成 長率(≒潜在成長率)が大幅に低下し、同時に総需要ショックのもた らした需給ギャップの大幅悪化でインフレ予想も低下している。

実質均衡金利が大幅に低下し、長期のインフレ期待が低下してい るとすれば、長期金利は大幅に低下しても不思議ではないが、過去1 年、長期金利は総じて横ばいである。低下してもよいはずの長期金利 が横ばいを保っているのは、市場が公的債務の持続可能性の低下を織 り込み、財政リスクプレミアムが上昇しているためだと解釈できる。

13)民主党はマニフェストで掲げた新たな歳出の財源を歳出構造の見 直し・組み替えによって調達するとしており、社会保障政策の充実が 必ずしも放漫財政を意味するわけではない。具体的には、行政刷新会 議を活用し、これまで業界関係者、各省庁、政治家の限られた関係者 の間で決定されていた歳出を国民の前にオープンすることで、その決 定メカニズムを変え、既得権益を打破しようとしている。

かつては望ましい歳出であったものが、時代の変化と共に既得権 益化していった例は少なくない。無駄を排除し、限られた財政資金を 時代の要請に応じた歳出へと振り替える作業それ自体が、財政再建の 第一歩ともなる。行政刷新会議における「事業仕分け」を成功させる ことで、新たな「ミクロの財政規律」が生まれる可能性はある。しか し、こうした「ミクロの財政規律」だけで果たして十分だろうか。

例えば、日本経済が「二番底」に陥ることや「踊り場」入りする ことを懸念し、政権内には、それを避けるために追加経済対策を検討 すべきという見方がある。一時的な景気刺激のために、財政資金を費 消することになれば、歳出の組み替えや税制改革によって達成される 資源配分の効率化の努力は水の泡となる。

そもそも「踊り場」や「二番底」懸念の原因の一つは、麻生政権 下で取られた追加財政の効果はく落、あるいは民主党政権によるその 執行停止である。それらがもたらす景気減速への対応として新たに追 加財政を発動するというのは、永久に追加財政を行えと言っているよ うなものである。雇用のセーフティーネットの充実は必要だが、財政 出動によって需要を積み増すという発想そのものが誤っている。

拡張財政への誘惑が強く働く最大の理由は、来年夏に参議院選挙 を控えていることだ。そうした誘惑を断ち切ることができないのは、 「マクロの財政規律」を担保する手段がないためである。選挙に落ち れば「ただの人」となる以上、政治家が景気刺激的な財政政策を選択 するのは、彼らの利益最大化行動を考えれば当然のことだ。

連立政権においては、政治経済学的に考えると責任の所在があい まいになるため、財政膨張圧力が働きやすい。特にキャスティング・ ボートを握る少数政党が連立政権内において強い発言力を持つが、彼 らは将来の選挙での支持基盤拡大のために、ばらまき政策に熱心に取 り組む可能性が高い。

こうしたばらまき財政の問題は、社会全体の利益と(既得権益層 を支持基盤とする)政治家、政党の利益が必ずしも一致しないために 生じる。この利益相反(プリンシパル・エージェント問題)を補正す るために、中長期の財政再建プランの策定など、「マクロの財政規律」 を確保するためのスキームの導入が不可欠だ。

14)日銀は展望リポートで3年連続のマイナスインフレを予想してい ることもあり、現在の超低金利政策は当面は継続される見通し。ただ し、11年度の年度平均がマイナス0.4%ということは、11年度の終わ りにはゼロあるいはそれに近い水準を想定していることを意味する。 また、日銀は11年度に2%成長を予想しており、12年度の物価はプ ラスを見込んでいると思われる。

日銀は「中長期的な物価安定の理解」として、「0-2%程度(中 心値は1%程度)」を掲げており、11年末から超低金利政策の脱却を 模索し始めるとみられる。

追加的な国債買い入れについては、公的債務残高が未曾有の水準 に達しているにもかかわらず、日本の長期国債の利回りは低水準で安 定を保ってきた。いったい何が安定を支えてきたのか。デフレ傾向が 続いているということも理由の一つだろう。また、中央銀行である日 銀が超低金利政策を行っていることの影響も大きい。それでは、日銀 が低金利政策を続けていれば長期金利の低位安定は維持されるのか。

これまで歴史的に観察されてきたことから言えるのは、公的債務 が増え続け、金融市場でその持続性に疑念が持たれるようになると、 長期金利の上昇に加えて貨幣価値の大幅下落(物価の大幅上昇と自国 通貨の大幅減価)が生じる。仮にそうした状況で、長期金利の上昇を 抑制するために中央銀行が国債を購入しても(マネタイゼーション!) 、事態は悪化するだけだ。

意外に思われるかもしれないが、日本の長期金利が低位で安定し ている最大の要因は、政府が財政規律を保っていること、そして民間 部門(特に金融市場)がそう認識していることだ。この前提があって 初めて、中央銀行の低金利政策によって長期金利を安定させることが 可能となる。しかし、財政規律は徐々に失われつつある。

●モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :2010年4-6月(2009年10-12月) 3)利上げ時期 :2011年7-9月(2011年1-3月) 4)09年12月末 :0.10%(0.05%) 5)10年3月末 :0.10%(0.05%) 6)10年6月末 :0.05%(同) 7)10年9月末 :0.05%(同) 8)10年12月末 :0.05%(同) 9)11年3月末 :0.05%(0.25%) 10)11年6月末 :0.05%(0.25%) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)日本とアジアは米国に先駆け09年4-6月に回復局面入りし、足 元10-12月も日本の製造業はさほど減速らしい減速を示さない見通 しである(鉱工業生産は4-6月が前期比+8.3%⇒7-9月が+7.2% ⇒10-12月が+6%程度)。もっとも先行きは回復モメンタムを削ぐ材 料が目白押しだ。財政面では支出パターンの変化から公共投資は10 年1-3月以降明確に落ち込もう。雇用・所得環境も逆風が続こう。

製造業では依然低水準にとどまる設備稼働率を背景に、先行きは 余剰生産設備の削減や正規雇用の削減も進もう。下押しの兆候は既に 表れている。10月の景気ウオッチャー調査の現状判断DIは前月差で 再びマイナスに転じた。同DIは景気の方向性に約3カ月先行し、1 -3月の踊り場局面入りを示唆している。

一方、長期金利は政権交代後の財政政策に対する不透明感が強ま る中、09年度税収見通しの大幅悪化が明らかとなったことを契機にや や不安定な動きとなっている。とりわけ海外投資家の間で財政の持続 性に対する懸念が強まっているように見受けられる。しかし、海外投 資家の見方は恐らく一面的であったり、誤解に基づく部分もあろう。

第一に、日本のマクロバランスを語る際、悪化する家計部門のみ に焦点を当てるのは適切でない。むしろ、家計と企業部門を含めた民 間部門全体の貯蓄投資ギャップをみるべきだろう。その点、企業部門 の貯蓄投資ギャップはリーマンショック一巡後の企業の負債圧縮の動 きや設備投資の急減を受け、資金余剰幅拡大に拍車が掛かり、これが 前政権以降に一段と拡大した財政赤字のファイナンスに寄与した。

先行きは設備投資の急激な減少には歯止めがかかるが、最近の銀 行貸出や銀行の融資スタンスが象徴するように、企業の負債圧縮の動 きはなお続くと見込まれる。こうした負債圧縮はマクロ的には貯蓄の 増加であり、家計貯蓄と並んで日本のマクロバランスの頑健性維持に 貢献しよう。日本のマクロバランスの頑健性は海外投資家が想像する 以上に強く、経常収支は容易に赤字に転落しないだろう。

第二に、財政面では当初予算段階で92兆円は過去最大規模である ことに変わりはないが、09年度二次補正後の予算規模が恐らく現時点 の102.5兆円を上回ることを勘案すると、10年度当初予算は前年度か ら-10兆円超の大幅緊縮予算となる。国債費等の固定支出項目は削減 困難であることから、緊縮圧力は一般歳出に向かうこととなろう。

それに応じて、10年度の新規財源債の発行規模も予算上は10兆 円規模で削減されるとみている。この場合、国債市場の需給は09年度 の歳入の補正による増発で目先3-6カ月間は需給悪化懸念が先行し やすい地合いとなろう。しかし、10年央以降は需給逼迫(ひっぱく) 感が出ることが見込まれ、長期金利の上昇にも歯止めがかかることが 期待される。

ただし、日本の国債市場の信認を高めるためには、新政権が中期 的な財政均衡目標にコミットすることも必要であろう。現時点でそう した動きが感じられない点はリスクではある。

13)新政権の経済運営はコンセンサスに反し緊縮気味となる見通しだ。 10年7月の参院選後はその傾向がさらに鮮明となり、金融政策面では 政治的緩和圧力が強まりやすい。リスクは、参院選で与党が過半数確 保に失敗すれば財政規律確保の上でマイナス影響が見込まれることだ。

金融政策に対する民主党のスタンスは現首脳陣への任命責任もあ り足元中立だが、政府がデフレ宣言を行うことが見込まれることもあ り、現政権は先行き日銀に対して緩和圧力を強めることが見込まれる。

14)日銀が主要国中銀に先駆け、コマーシャルペーパー(CP)、社債 買い入れといった異例な措置の年内解除に踏み込んだことで、金利政 策面でも追加緩和策が打たれる可能性は後退した。日銀は10月末の金 融政策決定会合で、米国流のソフトな時間軸政策に正式にコミットし た可能性がある半面、展望リポートではリスクバランスを上方修正し、 将来の出口戦略もにらむ硬軟両にらみの対応を行っている。

もっとも10年はデフレ克服が主要な政策課題となる中で、緩和的 な金融環境維持への政治的風圧は強まる見通し。その意味で10月末の 企業金融支援のための各種の措置打ち切りの決定は、引き締めの始ま りというよりは新たな緩和の始まりとなる可能性がある。国債市場の 状況に応じ、日銀は利下げの可能性も含め国債買入れ増額や時間軸へ のより明示的なコミットメント等の緩和メニューを逐次実施しよう。

その場合、長期国債の保有額上限を定めたいわゆる「日銀券ルー ル」も増額と同時に見直されよう。足元、日本の財政政策への懸念から 長期金利がやや不安定化していることもあり、長期金利の急上昇で金 融緩和効果の継続に不安が生じる場合に、そうした政策がとられる可 能性が高まろう。

一方、出口のタイミングについては、展望リポート中で日銀自身 が11年度まで3年デフレを予想していることもあり、11年7-9月 以降に先送りとなる見込み。もっとも、この時期にデフレが収束する 展望はなく、この時期の出口政策実行でさえいささか無理があること は事実。しかし、金融市場の機能が正常化すれば、市場が見込むより 早い段階で正常化を図りたくなるのが中央銀行家の本能だろう。

また、海外中銀の出口政策行使のタイミングも重要な要素だ。海 外中銀が10年央以降段階的に利上げに動くとき、日銀が追随利上げの 誘惑に駆られても不思議ではない。もっとも11年以降もデフレが続く と見込まれる中、政策金利は予測期間中に0.25%まで引き上げるのが 精一杯で、追加引き締めは見込まない。

●三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2011年1月 4)09年12月末 :0.10% 5)10年3月末 :0.10% 6)10年6月末 :0.10% 7)10年9月末 :0.10% 8)10年12月末 :0.10% 9)11年3月末 :0.35% 10)11年6月末 :0.35% 11)11年9月末 :0.35%

12)景気は09年3月を底にした回復を続けており、中国経済の力強い 成長の持続と米国・欧州経済の7-9月からの回復もあって、日本の 輸出は順調とみられ、生産活動は活発だ。内需面で押し上げ効果のあ ったエコポイントやエコカー補助の制度継続が課題だが恐らく2次補 正予算で継続が決まろう。

直近はドル安の持続の下で人民元の切り上げ懸念がくすぶってお り、これが円高を招来している面があるが、基本的にはなお調整の範 囲内にとどまっていよう。7-9月の実質GDP成長率は前期比年率 で4.8%と高かったが、同時に内需デフレーターが前年比マイナス

2.5%と大きく下落したため、時ならぬ「デフレ」騒ぎとなった。

最近の長期金利上昇局面は事業仕分けに対する評価や円高の再燃 の中でとりあえず一巡したが、今後の財政状況や景気指標の出方によ っては再び上昇方向への動きが優勢になってこよう。景気回復はこの まま続き10年末ごろ山をつけるとみられ、09年度実質成長率はマイ ナス2.5%、10年度はプラス1.8%、11年度は同1.2%と見込まれる。

コアCPIは09年度マイナス1.5%、10年度マイナス0.2%、11 年度0.0%と見込まれるが、CPIの上方バイアスを考えると、デフ レ脱却は当分の間困難だろう。

13)民主党は景気がどのようなメカニズムで動いているかへの理解が 足りないように思える。財政支出の無駄を排除してより良い使い道に 回そうとする思いは分かるが、そのために地方では公共事業圧縮が中 小建設業の業況を圧迫し、マインドの低下や無用な先行き不安を醸成 している。

一方、削られた予算を元手にした2次補正予算で何をやるのかが なかなか見えてこない中、すぐに藤井財務大臣が2次補正分は後で削 減する旨発言するなどしたため、債券市場に対しては良いとしても、 株式等の市場心理にはかなりの悪影響を与えている(ようやく16日に なって菅副総理が「住宅のエコポイント」の検討などを口にしたが)。

円高に対しても積極的に阻止しようという気が全くないように見 受けられ、中長期的な成長戦略も策定中とはいえ、なかなか企業の視 点が見えてこない。個人消費や家計への思い入れは見られるので救い はあるものの、これが災いして超低金利政策を解除すれば、家計の財 産所得が増えて個人消費が増えるとか、トンチンカンな方向を向いて いる政治家も見られる。

雇用も賃金も大事だが、それらを経済の中で創出していく役割を 担う企業社会に対する理解がなさ過ぎるように思われる。鳩山首相の CO2の25%削減目標も派手ではあるが、どうやってそれを達成しよ うとしているのかの戦略が見えない。全体的に言ってもう少し企業や 市場の社会的な機能をも見据えたバランスの取れた政策対応が欲しい。

14)現在はドル安円高が進行しており、マネタリーベースの3カ月前 比年率の伸びも8月マイナス6.8%、9月マイナス4.2%、10月マイ ナス5.3%と3カ月連続のマイナスとなっており、明らかな過少供給 となっているため、べき論としては今すぐにでも国債買い入れ増額を やってもらいたいが、残念ながら日銀が実施するとは思われない。

ただ、今後さらなる円高や長期金利上昇の波が襲ってきた場合に は、マーケットがSOSを発することにより、日銀が長期国債買い切 りオペの増額に踏み切る蓋然性が全くないと言い切れまい。

●HSBC証券の白石誠司チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年度以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)7-9月GDP高成長の背景は引き続き①政策効果(個人消費、設 備投資)②海外財政刺激を受けた在庫復元需要(輸出)、そして③歴史的 な低活動水準からの反動-の3点でしかない。一方で過剰設備、過剰 雇用は厳然と存在し続けており、政策効果はく落後の(特に個人消費 での)反動減余地は大きい。

前政権前倒し執行後の公共投資枯渇、新政権による今年度一次補 正予算一部凍結、子ども手当の消費下支え効果が4-6月には期待し にくいこと、有力先行指標(米ISM製造業新規受注指数、景気ウオ ッチャー調査)の今年夏場におけるピークアウト感なども踏まえると、 アジア向け輸出が堅調を維持したとしても、来年前半はマイナス成長 含みの踊り場到来が予想される。

欧米では歴史的バランスシート調整下で財政政策効果が自律回復 に結び付く可能性は低く、財政政策が効いている間は緩やかな回復、 効果はく落時のダウンサイドリスク表面化、それを回避するための財 政再出動というパターンが見込まれる。バランスシート調整が進まな い限り、国債累増が加速し、欧米経済の日本化リスクが高まる。

13)民主党の経済政策は弱者重視の所得分配政策であり、マクロ経済 政策とは言いにくい。セーフティーネットの名を借りた平時における 非効率部門への資源集中は、日本経済の中長期的な生産性低下、財政 悪化加速リスクをかなりの確率で高めてしまうだろう。

市場の国債消化能力は無限ではないとの認識が民主党にあると仮 定すると、いずれは日銀に対して国債引き受け的な圧力が強まる展開 も十分想定される。菅副総理のデフレ宣言はその初動かもしれない。

14)デフレ長期化公算の中、現行政策が淡々と継続される。信用不安 が強まる局面では企業金融支援策の復活もあり得る。明確な時間軸政 策へのコミット公算、量的緩和再採用の公算はいずれもさほど大きく ない。

残存1年未満の長期債を長期債と認識しないことによる日銀券ル ールの余裕増加は7兆円程度と見込まれ、日銀券ルールの持続可能性 を中長期的に担保する措置とはいえない点において、採用余地は限定 的なのかもしれない。ただ、国債残高発散下においていずれ財政規律 維持を強調しつつも、政府が日銀に国債引き受け(あるいは買い切り オペ大増額)を求める展開は十分あり得る。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)10暦年前半に景気二番底のリスク。輸出ピークアウト、個人消費 反落、公共投資減少が背景。コアコアCPIの前年比マイナス幅は10 年央には1.5%程度まで拡大する可能性。賃金デフレの傾向は終息せ ず。世界景気は引き続き片肺型飛行。新興国景気は堅調ながら、米欧 (特に米国)の内需は脆弱(ぜいじゃく)。ドル安基調は継続。

中期的な景気見通しは悪化傾向。子ども手当などの各種家計所得 補てん措置は実質個人所得税増税によってほぼ相殺される見通し。財 政赤字問題が市場でより意識されるようになれば、財政緊縮化が加速 し、景気腰折れ要因になる。長期金利は名目成長率の下方屈折、デフ レ圧力の高まりの下でも下げ渋る展開に。財政赤字拡大に伴うプレミ アムが徐々に拡大へ。向こう1年程度、1.3-1.7%で推移へ。

13)財政健全化にとって最も重要なのは成長戦略、デフレ対策。無駄 な歳出のカットの優先度は低い。その意味で民主党の経済政策は誤っ ている。強力な金融緩和と都市部再開発型の公共投資が必要だが、そ うしたコンセプトはみられず、デフレをあおる方向。金融政策への働 きかけも全くしておらず、大きな問題。

14)デフレ期待の高まり⇒銀行券需要の増大⇒長期国債のさらなる買 い入れ増額という経路が働くことになる。可能性は十分にある。10年 3月までに月額2000億円の増額を予想。

●大和総研の田谷禎三特別理事 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)政府の経済活動が足元どうなっているのか、また近い将来どうな りそうなのかについて不透明感が強く、短期的な景気予測を難しくし ている。ただ、7-9月のGDPで設備投資が下げ止まったらしいこ と、消費が予想以上に好調だったことを確認したことは、先行きの不 透明感を若干小さくした。

長期金利は急騰後、急落したが、先月初めに比べればまだ高い。 財政悪化要因が大きいと思われる。今年度を含め毎年、政府の歳出規 模が90兆-100兆円、税収が40兆円前後で続く可能性がある。今後 の方向も上昇だろう。

13)まだ2カ月しかたっていない中で、さまざまな新機軸を打ち出し ている。まだ評価するのは早過ぎるだろう。今後は家計の可処分所得 を引き上げることがポイントで、経済界の協力を得る必要があるので はないか。日銀との関係はこれまでのところ順調にいっているのでは ないか。

14)短期的には長期国債買い入れ増額の可能性は薄いだろう。場合に よっては、時限的に増額は可能だろう。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2010年10月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.30%(同) 9)11年3月末 :0.30%(同) 10)11年6月末 :0.50%(0.30%) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)米国経済は7-9月期決算を終えて、企業収益はこれまでのリス トラ効果を受けて徐々に収益力が回復している。ただし、今後の展開 について楽観視することは適切ではない。米国の家計を取り巻く雇 用・所得環境の改善は遅れており、バランスシート調整が終了したと は考えにくい。けん引役である消費が盛り上らない限り、米国経済の 本格的な立ち直りまでには時間を要する。

12日発表されたミシガン大学消費者信頼感指数は予想レンジお よび前月結果を下回る66.0となった。失業保険申請者数は増加幅が縮 小してはいるが、企業が雇用を増加する明確な兆候は見られない。雇 用状況は今後も悪化する可能性が高い。ウォルマートの決算で既にク リスマス商戦の苦戦が示唆されている。景気対策の効果が薄れる来年 初以降、経済の回復傾向を維持できるかについては疑問符がつく。

一方、オバマ政権は来年11月の中間選挙をにらんだ政策運営を行 うとみられる。これまでの政策の効果のアピールと支持率維持のため には、現在の景気回復過程を継続することが必要になろう。早い時期 に追加景気支援策を打ち出さざるを得ない状況に追い込まれる可能性 がある。その場合、問題となるのは財政問題の悪化だ。10月の財政赤 字は約1764億ドルとなり、悪化は一段と加速している。

そうなると米長期金利の上昇圧力が気になる。足元の入札はそれ ほど強い内容ではないものの、今後も財政リスクの高まりは避けるこ とができず、財政政策の運営はより難しくなろう。長期金利は今後も 上昇圧力のリスクを内包していることになる。金融政策の出口戦略の 展開次第ではイールドカーブが急激にベアスティープする可能性もあ り、金融機関や事業会社への打撃が懸念される。

物価動向は消費の弱さ等によって下落圧力が強い。短期的には原 油価格の動向によってコアCPIが上振れることも考えられるものの、 日用品の価格が下落している米国の消費環境では、こうした原油価格 の上昇が追加的に消費者心理を圧迫してしまう懸念もある。消費者の 心理内容が明確に改善するまでデフレ圧力は弱まらないだろう。金融 政策の出口戦略は想定以上に先送りされる可能性がある。

国内では10月の企業物価指数が前年比-6.7%となり、物価下落圧 力はいまだ強い。7-9月も企業業績は大手自動車メーカーの収益力 回復が示されるなど明るい兆しも出てはいるが、JALのADR申請 をはじめ、先行きの不透明感が強く、デフレ圧力も根強い。来年の年 初以降、景気対策の効果はく落などによって、再びマイナス成長に落 ち込む可能性は否定できない。

長期金利は物価下落圧力の強さを前提とすれば、中期的には大き く上昇することは考え難い。民主党政権の政策運営によって今後財政 状況の悪化が加速する場合、長期的に金利が上昇する可能性はあろう が、そうした状況が長期化する可能性はそれほど高いとは思わない。 国内大手金融機関が国債発行済み残高の過半を保有していることを考 えると、長期金利上昇は米国に比べてバッファーが厚いと言えよう。

13)民主党の政策はプラス面・マイナス面が入り混じっている状況と 考える。まず郵貯人事については、これまでの民主党の発言と実行内 容が矛盾している。一方、事業仕分けに関しては、不要不急の支出削 減が大きくなっている。より民間に近い視点から公的な予算にメスを 入れることは、それなりのメリットはある。

物価下落と消費低迷、成長の大幅な鈍化という日本経済の弱さを 考えると、現時点での支出削減が雇用に与える影響には配慮が必要。 そうした配慮なく単純に支出削減しているだけだと、今後景気回復の 腰を追ってしまうことになりかねない。国民に耳障りの良い政策を並 べたマニフェストの制約もあり、概算要求などで支出全体が大きく膨 らんでいること気になる。財政悪化を加速させることも懸念される。

今後の日本経済がどのように進むべきなのか、このテーマを政策 に反映させようとする意図が見られないことにも不安を感じる。また、 わが国全体の経済成長を定着させるための政策、いわゆる成長戦略が 見当たらない。民主党政権は国内景況感の改善に向けた中期的政策と、 日本の成長を企図した長期的政策を早い時期に国民に示すべき。

14)国内の物価下落圧力、長期的な成長期待の低さ、企業収益を取り 巻く不透明な需給環境に鑑み、日銀は現在の低金利政策を相当期間維 持せざるを得ない。企業金融支援特別オペが本年度末で打ち切られる 見通しとなる中、今後も何らかの形で日銀は市場への流動性供給のチ ャネルを確保していくだろう。その一つの選択肢が、13日実施された 115日に及ぶ資金供給の実施だろう。

日銀は非伝統的政策の打ち切りを示すことで市場の自律回復を促 すと同時に、延命装置の外れた市場がショックを起こさないよう資金 供給策を確保することを考えているはずだ。長期国債の買い取り増額 は現時点ではそれほど可能性は高くない。足元の長期債市場が顕著に 悪化しているわけではなく、当面増額に追い込まれることはないだろ う。民主党からの増額圧力も日銀が耐えられないほどのものではない。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年8月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)製造業が引き続き好調だが、景気ウオッチャー調査などが経済全 体で見た回復モメンタムの弱さを示している。言い換えれば、政策の 下支え効果がはく落し、製造業の回復モメンタムが落ちてくる来年1 -3月に向けて不況感はかなり強まるだろう。日銀すら来年度前半に 景気の「踊り場」を予想している。

足元の長期金利上昇は最初こそ「財政破たん」がきっかけだった ものの、次第にそのテーマから離れ、市場ボラティリティを仕掛け的 に買う(上昇させる)動きが入り、これが投資家の債券売りやヘッジ を促す、すなわち「売りが売りを呼ぶ」という市場内部の要因へと変 化していた。

大勢の投資家はポートフォリオの本格的なヘッジに動くほど弱気 に傾いておらず、特定の利回り水準を待っていると言うより、市場の 安定(=ボラティリティの低下)を待って相場に戻ろうとしていた。 よってオプション市場でボラティリティ低下に賭ける取引が大量に出 始めたことをきっかけに、債券相場下落の流れは収束した。

民主党は債券市場の動きに対し、過敏とも言えるほど警戒感を示 しており、債券にとってネガティブ・サプライズとなるような施策を 打ち出してくる可能性は低くなっている。ファンダメンタルズ面でも 金利上昇を継続させるようなイベントは当分予想しづらい。

13)民主党の経済政策には向こう2、3年の成長を促す政策はほとん ど盛り込まれていない。財政中立の原則を崩し、財政拡張的な政策も とり得るが、長期金利上昇に対して過敏なほどに警戒しており、その 可能性も低いだろう。結果的に、金融政策に当面の景気刺激を頼ろう とする姿勢は来年前半に経済成長が鈍化するとさらに強まるだろう。

14)展望リポートでは11年度までのデフレ見通し、10年度前半の景 気回復ペースの鈍化見通しが示された。市場は向こう2年の利上げな しに対して自信を深めつつあるが、日銀がこの見方に修正を促してく ることも当面ないだろう。

物価マイナスが続いても、成長が続いていればデフレスパイラル ではない、というのが日銀のロジックであるが、来年前半に成長率が 潜在成長を下回った場合、この説明が苦しくなる。この場合、政策オ プションとしては「時間軸」導入か長期国債買い入れ増額だろうが、 機動性からみて後者を選択する可能性が高い。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2011年7-9月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.30%(同)

12)日米景気ともにいわゆる「二番底」の可能性は低くなっているよ うに見受けられる。米国では政策効果や一時的要因のはく落から10- 12月のGDP成長率は7-9月(前期比年率3.5%)に比べて減速す ることが避けられないだろう。

ただ、①政策措置のかく乱を受けている耐久財(自動車)支出を 除くベースでみると、個人消費に一定の安定感が出始めている②堅調 な途上国・資源国景気と既往のドル安が米国の輸出を押し上げ始めて いること-を踏まえると、金融市場に強いショックを与えるような「二 番底」の可能性は低いだろう。

国内でも①政策効果がはく落する②在庫復元が輸出を強く押し上 げる初期局面が一巡する-等から、10年春にかけて景気は一時的に足 踏み状態に陥ると予想される。ただアジア向けを中心に輸出が底堅い 増加基調を維持するとみられることから、景気の腰折れあるいは二番 底は考えにくいだろう。技術的要因ではあるが、新年度に入ってから は政府の家計向け支援策が個人消費を押し上げると予想される。

今回の長期金利上昇の背景には、日本の財政の持続可能性に対す る根強い疑念が存在している。また、世界的に財政への懸念が強まっ ていることが日本の財政状況への注目を強めた面もあろう。

しかし、①10年度の新規国債発行額を今年度1次補正の44兆円 以下に抑えることは可能とみられる②国内民間部門の貯蓄(特に企業 部門の貯蓄超過)が財政赤字をファイナンスする構図が続いている- ことを踏まえれば、財政要因が目先、持続的に長期金利を押し上げる 可能性は低いと判断される。

13)民主党の政策は企業部門から家計部門への需要の再配分、家計部 門内での所得の再分配という色彩が強く、経済再活性化への道筋をつ けるものではない。新政権と日銀との関係はまだ試運転期間という印 象が否めない。現在の経済情勢を踏まえれば、本来的にはより密な連 携が望まれる。

14)内外景気が曲がりなりにも持ち直しの動きを続けていること、ま た日銀のリスクバランスの評価が中立方向に修正されたことを踏まえ れば、追加的な緩和措置がとられる可能性は低くなっている。

もちろん財政状況への懸念から長期金利が急騰し、それが景気回 復を脅かす事態となれば話は別だが、その場合でもまずは時間軸の強 化等によりイールドカーブの短期~中期ゾーンを安定化させることを 目指すのではないか。長期国債買い入れの増額はその後のステップに なると推測され、簡単には実現しないように思われる。

●バークレイズ・キャピタル証券森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年後半以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)機械受注が通常より相当遅れて底打ち傾向だが、もともと景気の 遅行指標。先行指標では景気ウオッチャーの低下など、景況回復は頭 打ち傾向が徐々に強まる。二番底懸念は依然大きくはないが、10年前 半にかけての回復踊り場局面の入口に立っている。

長期金利上昇は短期的なスペキュレーションが大きい。実際の国 債発行急増は既に前政権下の7、8月に生じており、今後1年程度を 見通せば、伸びは緩やかになってくる。金利水準は今後徐々に回復傾 向の鈍化するファンダメンタルズのトレンドに収れん。

13)民主党の家計所得重視の政策は評価できる。ただ、長期的に家計 支出を堅調なものにするためには、消費増税も含めた社会保障制度の 抜本改革などで社会の中核層、あるいは若年層の将来不安を軽減する 長期ビジョンが必要。金融政策に関しては、現時点ではまだ政権とし てのスタンスを評価できる段階にない。

14)グローバル経済に大きな下振れリスクが生じることがなければ、 基本的には現状維持のスタンスを継続する。国債買い入れに関しては、 実質的に麻生政権下の政策によって財政赤字が50兆円規模に達した わけだが、民主党がこれをさらに60兆あるいはそれ以上の規模に引き 上げる状況となれば、日銀にも検討の余地が生じてくるのでは。

●ゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 : 2011年12月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)国内資金余剰が縮小する一方、構造的な財政赤字拡大により政府 債務の維持可能性は一段と後退している。短中期金利はともかく、長 期金利については根強い上昇圧力が続く。

13)個別の政策については評価される点はあるが、各々の政策間の整 合性等、全体像は極めてつかみにくい。10年度も再び税収欠陥に陥る 可能性が高いが、政府債務をいかに維持していくこと等、中長期的な (痛みを伴う)政策については、その帰すうがほとんど見えない。

14)「実質」金利上昇による金融環境タイト化等を勘案すると、日銀が 国債買い切り増額に踏み切るのは必至とみられるが、これを市場の「機 先を制する」形で実施するのか、あるいは実際の金利上昇に対し「反応 する」形で行うのかは不明。

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