政府のデフレ宣言で高まる日銀への圧力-国債買い入れ増額の可能性も

【記者:日高正裕】

11月18日(ブルームバーグ):日銀が19、20日に開く金融政策決 定会合では、ブルームバーグ・ニュースの調査で有力日銀ウオッチャ ー17人全員が現状維持を予想した。民主党政権は近くデフレ宣言に踏 み切るとみられている。財政赤字拡大への懸念から長期金利に上昇圧 力がかかる中、日銀に一段の金融緩和圧力が高まる可能性がある。

16日発表された7-9月の実質国内総生産(GDP)は前期比年 率4.8%増と事前予想(2.9%増)を大きく上回り、2四半期連続のプ ラス成長を維持した。大和総研の田谷禎三特別理事は「GDPで設備 投資が下げ止まったらしいこと、消費が予想以上に好調だったことを 確認したことは、先行きの不透明感を若干小さくした」と語る。

一方、日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノ ミストは「設備投資の下げ止まりは朗報だが、政策効果による消費押 し上げと想定外の在庫増は先行きに対し慎重にならざるを得ない」と 指摘。景気の足取りは年明け以降緩やかなものにとどまり、「在庫復元 の反動減が大きく出るタイミングでは、マイナス成長の可能性も否定 できない。来年前半は踊り場局面になる可能性がある」とみる。

日銀は先月30日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート) で、2010年度の実質GDP成長率がプラス1.2%、11年度がプラス

2.1%(いずれも政策委員の中央値)と徐々に上向いていくとの見通し を示した。ただ同時に、「10年度初めごろには、公共投資や耐久財消 費に反動が生じるとみられること等から、実質GDPが一時的に弱ま る局面もあり得る」として、踊り場入りの可能性も示唆した。

政府がデフレ公式宣言へ

こうした中、菅直人経済財政担当相は16日の会見で「デフレ的な 状況に入りつつあるのではとの懸念を持っている」と述べた。9月の 消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年同月比2.3%低 下。7-9月の名目GDPは前期比年率0.3%減と6期連続のマイナ スで、国内需要デフレーターは前年同期比2.6%低下した。

菅経済財政担当相17日の会見で、デフレに対する政府の認識につ いて「最終的には月例経済報告の中で何らかの表現がされる」と述べ た。政府は20日に月例経済報告を発表する。みずほ証券の上野泰也チ ーフマーケットエコノミストは「政府が約3年ぶりに、日本経済はデ フレであると公式宣言する可能性が高まっている」とみる。

野村証券の松沢中チーフストラテジストは「物価マイナスが続い ても、成長が続いていればデフレスパイラルではないというのが日銀 のロジックだが、来年前半に成長率が潜在成長を下回った場合、この 説明が苦しくなる。選択肢としては時間軸導入か長期国債買い入れ増 額だろうが、機動性からみて後者を選択する可能性が高い」とみる。

長期金利に上昇圧力

日興コーディアル証券の岩下氏も「来年前半に景気の踊り場を迎 えるような局面となれば、来夏に参院選を控えた政府からも協力要請 の可能性はある」と指摘。また、「急激な円高進行による企業収益の一 段の下押しの可能性が高まった場合には、何もしないという選択より、 長期国債買い入れ増額を検討することになるだろう」という。

こうした長期国債買い入れへの思惑が高まっている背景にあるの は、長期金利の上昇だ。国債増発懸念を背景に、10月上旬から1カ月 あまりの間に1.24%から1.5%近くに上昇。足元では落ち着きを取り 戻しているが、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「財政赤 字が無節操に膨張していくイメージを回避しないと、長期金利にとっ て危険な事態が生じる恐れがある」と語る。

三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテジストは「民主党の 経済政策は来夏の参院選にらみという多分に近視眼的な印象がある。 中長期的な成長・財務戦略が致命的に欠如しており、歪みは新規国債 発行額の膨張リスクとなって顕在化しつつある」と指摘。「このまま走 っていけば、膨張する国債残高のファイナンスというツケを日銀に回 すことになりかねない。危うさが漂う」と懸念する。

来年3月までに国債買い入れ増額も

HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストも「民主党の経済政 策は弱者重視の所得分配政策であり、マクロ経済政策とは言いにくい。 セーフティーネットの名を借りた平時における非効率部門への資源集 中は、日本経済の中長期的な生産性低下、財政悪化加速リスクをかな りの確率で高めてしまうだろう」と指摘する。

白石氏はその上で、「市場の国債消化能力は無限ではないとの認識 が民主党にあると仮定すると、いずれは日銀に対して国債引き受け的 な圧力が強まる展開も十分想定される。デフレ宣言はその初動かもし れない」とみる。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミス トは、国債買い入れ増額の可能性が「十分にある」として、来年3月 までに月額2000億円の増額を予想している。 ============================================================= 利下げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年4-6月】モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコ ノミスト ============================================================= 利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年10-12月】信州大学真壁昭夫教授

【2011年1-3月】三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長

【2011年4-6月】JPモルガン証券の菅野雅明調査部長、第一生命 経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、大和総研田谷禎三特別理事

【2011年7-9月】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミ スト、モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト、野 村証券の松沢中チーフストラテジスト、シティグループ証券の村嶋帰 一チーフエコノミスト

【2011年10-12月以降】三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラ テジスト、日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノ ミスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、BNPパリバ証 券の河野龍太郎チーフエコノミスト、HSBC証券の白石誠司チーフ エコノミスト、クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト、 バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト、 ゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフエコノミスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                     09   10   10   10   10   11   11   11
                    12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末
-------------------------------------------------------------
調査機関             17   17   17   17   17   17   17   17
 中央値             0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
 最高               0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.35 0.50 0.50
 最低               0.10 0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.10
-------------------------------------------------------------
三菱UFJ 石井     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
日興コーディアル岩下     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.50
東短リサーチ 加藤   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25
第一生命経研 熊野   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.50
BNPパリバ証 河野  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガンS証 佐藤      0.10 0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.25
三菱UFJ景気研 嶋中  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.35 0.35 0.35
HSBC証 白石     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
大和総研 田谷       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25
信州大 真壁         0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.30 0.50 0.50
野村証 松沢         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
シティG証 村嶋     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30
バークレイズC証 森田   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
ゴールドマンS証 山川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

アンケート回答期限は17日午前8時。「日銀サーベイ」金利予想、 経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを18日朝に送信しています。

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