【コラム】米金融規制改革への6つの簡単な手順-ローウェンスタイン

米金融規制改革をめぐる議論が 大きく揺れている。法案は提示されているものの、複雑で冗長だ。提 案された解決策の大半は漸進的な変更であり、将来のバブル発生を阻 止できそうにない。

上院と下院は、どの連邦機関が銀行監督で主導権を握るかをめぐ って争っている。政府も議会も、すべてを解決しようとして落とし穴 にはまっている。それよりは、最も重要な改善策で合意すべきだろう。

金融危機は6つの深刻な問題を顕在化させた。

1、住宅金融の規制は緩過ぎ、一部のケースでは存在しなかった。

2、銀行の自己資本比率規制は低過ぎた。

3、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などのデリバ ティブ(金融派生商品)取引が、巨大な見えざるリスクをもたらした。

4、債務担保証券(CDO)などの仕組み証券の信用格付けに大 きな欠陥があった。

5、過剰な報酬がバンカーをリスクテークへと駆り立てた。

6、政府の危機対応がモラルハザード(倫理観の欠如)を引き起 こし増幅させた。

返済能力

第1の問題である住宅金融には、すでに米連邦準備制度理事会 (FRB)などの規制当局が取り組んでいる。頭金なしのローンを借 りるのは以前よりもかなり難しくなった。議会は「住宅ローンは、借 り換え見込みではなく、借り手の返済能力に基づいて承認されるべき だ」との簡単な原則を法制化し、改正を確かなものにする必要がある。

第2の問題である資本規制にも、進展の兆しがみられる。主要 20カ国・地域(G20)は、世界経済が回復すれば銀行の自己資本規 制を強化すると明言した。米国はそれを待つべきではない。議会は今、 より高い基準を主張しなければいけない。レバレッジはすでに危機前 の水準から下がっており、規制は銀行がかつての高レバレッジに戻ら ないことを確実にするだろう。

大人の監視

議会に提案されている法案は、第3の問題であるデリバティブに ついて、取引所での取引を義務付けることで解決を目指している。そ うすることが「大人の監視」につながるという考え方だ。この法案に 批判的な向きは、多くのデリバティブがカスタマイズされた非公開の 取り決めで引き続き取引されることになると批判している。

しかしデリバティブがどこで取引されるかはあまり重要ではな い。米保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AI G)のCDS契約が月面で交わされたとしても、政府による救済が必 要になっていた。AIGが問題に陥ったのは、ポジションが裏目に出 て、数百億ドル相当の担保を追加で差し出さなければならなくなった ためだ。したがって重要なのは、各取引を裏付けている担保の額だ。

格付けをやめよ

第4の問題は、ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタ ンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングス などが、住宅ローン担保証券(MBS)に過度に甘い格付けを付与し たことが住宅バブルを増大させたことだ。これら格付け会社は、証券 化商品を組成して販売するのに格付けを必要した金融機関から報酬を 得ていた。

米当局は少なくとも、こうした利益相反だらけの取引を是認する のをやめる必要があろう。米証券取引委員会(SEC)が「全国的に 認められた」企業を指定し、このお墨付きを得た企業が多くの事業を 手掛けることができるようにする。議会は、利害のない相手から報酬 を得ている格付け会社のみが、そうした認定を得る資格を有するよう にしなければならない。

高額報酬への回帰

第5の問題である報酬の膨張は、金融機関に限られたものではな い。しかしそれは、ウォール街で過度のリスクテークを促し、高レバ レッジにつながる。

政府はさまざまな方法で報酬を抑制しようとしているが、それは 機能していない。ウォール街では多額のボーナスが再び支払われるよ うになっている。

より簡単な解決策は、例えば500万ドル(約4億5000万円)以 上の高額報酬について、株主の承認を義務付けることだ。そうすれば、 多くの銀行は株主投票を避けるため、報酬をそうした上限を若干下回 る水準にとどめるだろう。バンカーは年499万9999ドルの報酬でも 人生は悪くないと気付くかもしれない。

最後の問題はモラルハザード。米当局は2008年にベアー・スタ ーンズとファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)、フレディマック(連邦 住宅貸付抵当公社)を救済した際、将来の救済の前例になるものでは ないと強調した。バーナンキFRB議長は「大き過ぎてつぶせない」 問題への対応は「最優先課題」であるべきだと語っている。完璧な世 界であれば、すべての銀行は破たんが許されることになる。

規模の縮小促す措置

われわれは最近の経験から、そうではないことが分かる。特権的 な地位を与えることは、無謀な行動を促すことにつながる。

政府は、銀行にとって当局の保護下にとどまることは望ましくな いようにすべきだ。大手金融機関に多額の保険料を請求し、自己資本 規制をさらに強化することでそれは達成可能だろう。そうすることに より、破たんしても脅威とはならない規模に縮小するよう促すことが できる。

政府にウォール街を内側から運営させる必要はなく、新しい連邦 機関や官僚主義もいらない。われわれに必要なのは、適切なインセン ティブと制限の回復につながる注意深く選択された少数の規則だ。 (ロジャー・ローウェンスタイン)

(ロジャー・ローウェンスタイン氏は、ブルームバーグ・ニュ ースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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