関空などの財投機関債に売却の動き、政府支援後退で信用不安

公的セクターが発行する債券市場で 関西国際空港債などの財投機関債の一部に売却の動きが出ている。民主 党政権が進める空港政策の見直しの中で、信用力の支えとなっていた政 府からの補給金などが凍結されるといった事態に陥っているためだ。投 資家は補助金や事業・組織の見直しに伴う発行体の信用力低下や組織の 行方を懸念している。

関空が発行した財投機関債は20本。同機関債の国債利回りに対する スプレッド(金利上乗せ幅)は、前原国土交通相が10月12日に空港政策 の変更を明言して以降、債券への売り圧力から拡大基調を強めている。

今年9月4日起債の第20回債(100億円、10年)では、発行条件の 利回りは対国債比+17bpで決定したが、スプレッドは投資家離れを背景 に11月10日までに+26bp程度拡大した。さらに16日には事業仕分けで政 府からの補給金が凍結の方向で見直されたことを受けて一時+28bp程度 まで拡大した。

みずほ証券の伴豊シニアクレジットアナリストは、「日本航空の路線 数の減少や景気低迷などで経営環境が悪化する中、補給金凍結は関空の 収益力に少なからず影響を与えるだろう。政府支援の低下で信用力は厳 しくみざるを得ない」と指摘。スプレッド拡大については、「事業仕分け の結果が具体的に出てきたことなどで、発行体の組織が変わるなど先行 き不透明感から投資に慎重な投資家が増えているのだろう」と言う。

実際、シティグループ証券の江夏あかねシニアクレジットアナリス トは、「財投機関債市場において、臨時国会が10月26日に召集され、公 的セクターのクレジットに関連する可能性がある報道や閣僚の発言など が散見される中、政府保証債や地方債と比較してやや慎重な姿勢を維持 する投資家が散見された」と指摘した。

命の綱

政府はこれまで、毎年90億円の補給金を交付して関空の経営を下支 えしてきた。自民党政権下では、国土交通省は今年8月の10年度概算要 求に対して補給金を160億円に増額することを盛り込んでいた。

しかし、この関空にとって命の綱ともいえる補給金は行政刷新会議 の事業仕分けの対象となり、16日には伊丹空港を含めた抜本的な解決策 が得られるまで、関西国際空港への補給金の凍結が決まった。

国内有力格付け会社R&Iは同日の発表資料で、補給金凍結との判 定を受けて、「関空に対する政府の支援姿勢については不確実性がやや高 まっている。大阪府をはじめ関連自治体などの対応も不透明」などとして 、関空の格付け(AA-)の方向性をネガティブに変更した。

国土交通省の渡辺一洋空港部長は、テレビ朝日が同日の番組で報じ た事業仕分けの場で、「補給金がなくなると関空の信用力が低下する。償 還を迎える社債や借入金の返済や資金調達が難しくなる」と語った。

信用リスク再考

「01年春に始まった財投機関債市場にとっては、初めての政権交代 に伴う各機関のクレジット再考という意味から、テストケースと言える だろう」と、江夏アナリストは語る。

安田投信投資顧問の朝順浩ポートフォリオマネージャーは、「補給 金が満額出れば実質無利子か、というくらいのインパクトはあったので 、それがなくなるというのは短期的にはネガティブ。政権が変わって翻 弄されているので、持っている投資家はいったん関空債のエクスポージ ャーを外したいところだろう」と述べている。

関空の08年度末の有利子負債は約1兆1175億円。有利子負債/EB ITDA倍率は22倍で、民間企業では例を見ないけた外れの水準となっ ている。みずほ証券金融市場調査部の調べでは、金融・保険を除く全産 業(規模は10億円以上)の同倍率は、金融危機の影響を受けて業績が大 幅に悪化した09年3月末時点で8.4倍だった。

政府系機関の使用力

補給金凍結の判定を受けて、関空の福島伸一社長は16日、「大変遺 憾で非常に残念」としたうえで、「ぜひ、再考をいただき、政府の予算案 決定に際して国家戦略に基づき要求を満額認めていただくよう強く要望 する」とのコメントを発表した。

民主党政権が誕生してから、高速道路無料化や日本航空再建などの 議論が盛んに行われ、成田国際空港、関西国際空港などの国際拠点空港 や日本政策投資銀行、日本高速道路保有・債務返済機構など政府系機関 の信用力に影響を及ぼす可能性がある政策の見直しが連日のように起き ている。

日本の資本市場で債券を発行している財投機関債の残高は約23兆37 80億円(日本証券業協会、2009年9月末)と国内普通社債市場の約59兆 1296億円(同)の4割近くに相当する。

ヘッドライン・リスク

11日からは、予算編成に向けて事業の無駄を洗い出す「事業仕分け」 が行われており、その中には、都市再生機構、住宅金融支援機構、福祉 医療機構など財投機関債を発行している独立行政法人や、関西国際空港 補給金、国際協力機構に対する運営費交付金、雇用・能力開発機構に対 する運営費交付金、地方交付税交付金など公的セクターの発行体の信用 力にかかわる事業見直しも行われている。

R&Iは10日に発表した資料で、「格付対象の政府系機関について は政策上の重要性が高く、事業や組織が継続される可能性は高いと判断 しているが、鳩山民主党政権は独立行政法人をゼロベースで見直す方針 であり事業仕分けの方向によっては信用力に下押し圧力がかかる可能性 がある。事業仕分けの動向を慎重に見守っていく」との見解を示した。

--取材協力 宮沢祐介 Editors:Hidekiyo Sakihama Fukashi Maruta

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 鞠子 和枝KazueMariko +813-3201-3466 kmariko1@bloomberg.net 東京 上野 孝司 Takashi Ueno +813-3201-8696 tueno@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +813-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net Singapore William Mcsheehy(65)6212-1140 Wmcsheehy@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE