マニフェスト一部先送りへかじ切る、新規国債枠の厳守で

マニフェスト(政権公約)にある 必要財源の減額か、来年度新規国債発行額44兆円枠の放棄か-。来年 度予算編成が本格化するなか、鳩山政権は先の衆院選で掲げたマニフ ェスト関連予算の一部見直しによる歳出圧縮へとかじを切った。国債 増発圧力から長期金利が神経質な動きを見せており、国債発行枠を放 棄すれば政権への信頼が崩れかねないとの危機感が背景にある。

藤井裕久財務相は17日昼すぎ、国会内で一部記者団に対し、来年 度予算に盛り込むマニフェスト関連予算(約7兆円)の取り扱いにつ いて「減額もあり得る。当然だ」との認識を示した。対象となる新政 策については高速道路の無料化を挙げた。

これに先立ち、財務相は衆院財務金融委員会で、マニフェストで 来年度に実施予定している事業について「数字そのものよりも事柄が 問題だ。事柄によっては、実施はするが、数字を減らせるかもしれな い」と述べ、来年度予算でマニフェストを実施するものの、一部は減 額せざるを得ないとの認識を示した。

平野博文官房長官は同日午前の閣議後の記者会見で、マニフェス トで掲げた重要政策の財源問題について検討する副大臣級の検討チー ムの設置を明らかにした。週内にも動き出す見通しだ。

同チームの主要メンバーの1人、野田佳彦財務副大臣は自らのホ ームページで「来年度予算の国債発行額は、ぜひとも今年度第1次補 正予算後の44兆円以下に抑えなければならない」と強調。このため、 子ども手当や高校授業料の無償化、農家の戸別所得補償などの主要な 項目について「優先順位をしっかりつけた上で、できるだけ効率的に 実行していく必要」があると指摘している。

世論も後押し

財務省内では、長期金利への影響だけでなく、政権への打撃が大 きいため、今さら44兆円枠を撤回できないとの見方が強まっていた。 残る選択肢として指摘されていたのがマニフェストの「聖域なき見直 し」。民主党は初年度の所要額として7.1兆円を明示していた。

一方、読売新聞が今月行った世論調査で、マニフェストに掲げた 新政策について「国債の発行を増やさないように、一部は実現を見送 るべきだ」との意見が85%に達するなど、世論の後押しもあった。

カリヨン証券の加藤進チーフエコノミストは「44兆円が守れなけ れば、鳩山政権に大きな政治的ダメージを与える」とした上で、「税 収が来年度も減るという見通しの中で44兆円以下に抑えるのは不可 能だと思う。歳出を減らしていかなければならないが、公約を一部先 送りするというような選択肢しかない」との見方を示す。

市場に国債増発懸念

来年度一般会計の概算要求総額は過去最大の95兆円に上る一方、 税収は40兆円を下回る見通し。新規国債収入44兆円を上積みしても 84兆円程度にとどまる。加えて今年度1次補正予算で捻出(ねんしゅ つ)した執行停止額2.9兆円のほぼ全額を2次補正で使い切る見通し が強まったことから、市場では一気に増発懸念が強まった。

新発10年債利回りは10日に一時、約5カ月ぶりの1.485%まで 上昇した。藤井裕久財務相は会見で「非常に危惧(きぐ)している。 国債市場の信頼を失えば国益を失う」と警戒感をあらわにした。その 上で「44兆円をめどに国債市場の信頼を維持できるよう頑張る」と述 べ、来年度新規国債発行額を今年度以下に抑制する考えを強調した。

その一方で、政策的経費である一般歳出約55兆円の増加要因は、 計4.4兆円に上るマニフェスト関連事業にほかならない。来年度から 実施予定のガソリン税などの暫定税率の廃止に伴う減収分2.5兆円と 合わせれば、6.9兆円に上る歳出増要因となる。鳩山首相は概算要求 の際、各閣僚に「査定大臣」として既存予算の徹底した削減を指示し たものの、削減額はわずか1.3兆円にとどまった。

望みの綱は税外収入

鳩山政権が望みの綱として託したのが「税外収入」。鳩山由紀夫 首相は16日、藤井財務相と会談し、行政刷新会議が進めている「事 業仕分け」で指摘されている独立行政法人や公益法人の余剰基金など の「埋蔵金」で「税外収入」を確保するよう指示した。

藤井財務相はすでに税外収入を今年度当初の約9兆円以上確保す る方針を示していた。今年度4.2兆円計上した財政融資資金特別会計 の残る積立金3.4兆円は基礎年金の国庫負担引き上げの財源などに転 用され、来年度でほぼ底をつく。財務相は「特会は前政権が相当、使 っている」と指摘しており、特会に絡んだ「埋蔵金」以外の税外収入 をどの程度確保できるかが焦点の1つとなる。

仙谷由人行政刷新担当相は一般会計総額を「できれば92兆円ぐら いに収めたい」と発言した。行政刷新会議で「事業仕分け」を着々と 進めているが、削減額がどの程度積み上がるかはまだ見えない。「検 討チーム」は「事業仕分け」の結果も受け、マニフェスト案件の見直 しに向けて「政治決断」を行うことになる。

政府は17日、「予算編成に関する閣僚委員会」における合意事項 を発表、来年度の「予算編成の基本方針」およびマニフェストの主要 事項、3党連立政権の合意事項などについては同閣僚委で議論し、そ の取り扱いを決定することを明らかにした。同閣僚委の下に、国家戦 略室が国債発行額の上限を含む基本方針の原案を作成。マニフェスト の扱いについても同戦略室が中心になり論点整理するとしている。

--取材協力 広川高史 Editor:Hitoshi Ozawa, Masaru Aoki

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