若者が主導、「マイクロファイナンス」日本でも-直接金融へ新たな扉

東京・渋谷のカンボジア料理店。 10月のある週末、若者ら約30人が集まって、日本初の「マイクロフ ァイナンス」ファンド誕生に祝杯を上げた。

マイクロファイナンスは、貧しくて銀行では口座を開けない人た ちに、担保や保証人なしで小口融資やサービスを提供、事業や就労を 支援する金融の手法だ。2006年にグラミン銀行のムハマド・ユヌス 総裁がノーベル平和賞を受賞して有名になった。グラミン銀は貸付規 模でマイクロファイナンス世界3位。貸付金利は20%、貸倒率は

2.34%という。

日本でようやく生まれた第1号ファンドは、カンボジアを対象と した「カンボジアONE」。1口3万円で9月に募集を開始。予定の 2100万円はすでに集まったが、20日まで募集を続ける。手掛けたの は証券化ビジネスを展開するミュージックセキュリティーズ。

パーティーに参加した音楽ライターの富沢えいちさん(49)は、 「3万円で会社の一部になれる点に引かれて購入した。利回りを意識 するというよりも投資を通じて得られる情報や交流が面白い」と魅力 を語る。小松真実代表取締役(34)によると、投資家は「他の商品に比 べ女性の比率が高く20代の若者が小口で買うケースも目立つ」。

ミュージックセキュリティーズにファンド組成を促したのは貧困 削減に取り組むNPO法人リビング・イン・ピース。メンバー30人 の平均年齢は28歳。ほとんどが社会人で週末夜のミーティングなど を通じて構想から9カ月でファンド組成にこぎ着けた。メンバーの6 割は外資系を含む金融機関出身だ。

金融機関を飛び出して

理事でミュージックセキュリティーズに勤務する杉山章子さん (32)は国際協力銀行で専門調査員として2年間働いた経験を持つ。 「コロンビア大学の大学院でマイクロファイナンスを学び、国際協力 銀行で取り組んでみたかったが、なかなか実現への道のりが見えず飛 び出してしまった」と話す。

カンボジアONEは、現地のマイクロファイナンス機関サミック に匿名組合を作って投資する。サミックの2010年から12年末まで の運用利益に連動して13年に分配されるクローズ型。杉山さんは 「分配金が戻れば、それを元手に新たな事業への再投資が可能で、寄 付よりも継続的な支援が可能になる」という。

格付会社マイクロレートによれば、2008年末時点で、ファンド などを通じた投資残高は50億ドルあるが、日本では個人が小口で投 資できる途上国対象のマイクロファイナンスはなかった。

海外のマイクロファイナンス事情に詳しい日本総研の村上芽研究 員は「カンボジアONE」を、「金融商品としてだけでなく社会を啓 蒙(けいもう)する意味でも大変意義がある」と評価。その上で「顧 客も価格上昇だけを求めて商品を買うわけではないので、運営会社は 資金がどのように使われているのか、現地の様子などを詳細にリポー トすることが求められる」と述べた。

人材育成も

マイクロファイナンスを担う人材の育成も動き出している。アラ イアンス・フォーラム財団では、バングラデシュで専門家養成コース を地元のブラック大学と共同でこの秋開設した。2週間のカリキュラ ムは、グラミン銀のユヌス総裁らの講義のほか、農村やスラムの訪問 が組み込まれた。2年後をめどに修士課程も設定する予定だ。

3倍の倍率をくぐり抜けた参加者は29人で、約半数は内外金融 機関の社員だった。カリキュラムを企画した野宮あす美さん(26) も昨年9月までゴールドマン・サックスの投資銀行部門で3年間働い ていた。慶応大学在学中から海外への短期留学で人種問題や途上国支 援を学び、いずれ国際貢献に携りたいと考えていた。

野宮さんは「リーマンショックで金融業の在り方が問われる中、 金融の原点ともいえるマイクロファイナンスに携わる仕事にかかわり たいという参加者は少なくない」と話す。

大手証券会社も参入

大手証券会社の参入も始まった。大和証券は11月5日から「マ イクロ・ファイナンス・ボンド」の販売を開始。商品企画部の山本聡 次長(35)が、社内留学先の米国でマイクロファイナンスビジネスの現 状を目の当たりしたことがきっかけで生まれた。山本氏は「社会貢献 だけでなくビジネスとしても十分成立することを社内で周知できたの ですんなりとスタートできた」と語る。

日本では、世界銀行が財務管理したワクチン債が好評。2006年 以来の発行残高約1200億円のうち約半分は日本で起債された。資金 は途上国の医療や予防接種に使われる。山本氏は「貧困救済というキ ーワードであれば、日本でも『貯蓄から投資』への裾野が大きく広が るのではないか」と指摘。「インデックスを見れば、既存金融商品と の分散効果もある」として、マイクロ・ファイナンス・ボンドも最高 3億豪ドル(約250億円)の販売を目指す。

雑誌「投資信託事情」の編集長で投信業界に詳しい島田知保氏は、 「社会貢献というテーマでは10年前に日本でもエコファンドやSR Iファンドの組成が行われたが特徴がアピールできず伸びなかった」 のに対し、マイクロファイナンスは「支援相手が見えるという意味で 分かりやすい」と指摘。ただ「金余り時代に貧乏人に高利で金を貸す 構造はサブプライムローンと全く変わらず過熱すれば貸出金の回収率 も下がるだろう。金融機関は商品をじっくり育てる気概が必要」とみ ている。

--取材協力Go Onomitsu, Aki Ito, Editors:Kenzo Taniai, Takeshi Awaji

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