【コラム】ゴールドマンCEOは「神の使い」のバンカーか-Jワイル

米コメディー映画の傑作「ブルー ス・ブラザーズ」(1980年)を思い出させる発言だった。

米ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクフェイ ン最高経営責任者(CEO)は英紙サンデー・タイムズの記者に、自 分は「神の仕事をしている」1人のバンカーにすぎないと語った。同 紙はもちろん、この言葉を先週末のゴールドマンに関する記事の見出 しに使った。ブルース・ブラザーズでは、ダン・エイクロイド扮する エルウッドが「おれたちゃ神の使いだ」と言い放ったが、この2つの 発言に違いはあるのだろうか。

ゴールドマンの広報担当者、ルーカス・バンプラーグ氏は、ブラ ンクフェインCEOは言葉が額面通りに受け取られるとは考えていな かったとして、質問に対して「皮肉」で答えたのだと電子メールで説 明した。近況を聞かれ、冗談で「夢が実現しているよ」と答えるよう なものだと述べた。

同氏は「サンデー・タイムズは発言の文脈を完全に理解していた が、記事を面白くするために『ひねり』を効かせることにしたのだろ う」と付け加えた。ブランクフェインCEOにとっては迷惑な話だろ う。

同CEOの「神の仕事」発言は面白いキャッチコピーになった。 金融ウェブサイトのネーキッド・キャピタリズムはこの発言に対し「素 晴らしい! では皆さんに無報酬で働いてもらいましょう」と応じた。 ゴールドマンは今年、200億ドル(約1兆8000億円)以上を従業員の 報酬として支払おうとしている。

ロンドンの大きな教会ではこのところ、金融界の大物たちが招か れて説教し、しきりと神を引き合いに出して世界の銀行システムと、 それが生んだとされる不平等を擁護した。

自己愛

20日にはゴールドマン・サックス・インターナショナルの顧問、 ブライアン・グリフィス氏がセントポール寺院で自己愛を説いた。ブ ルームバーグ・ニュースが報じたところによると、同氏は「自分を愛 するのと同じように他者を愛せというイエスの教えは、自己の利益を 肯定している」と語り、「より大きな繁栄を達成するため、またすべて の人に機会を与えるため、不平等を受け入れなければならない」と論 じた。英銀バークレイズのジョン・バーリー最高経営責任者(CEO) もロンドンの教会で、「利益は悪魔的なものではない」と説いた。

「大き過ぎてつぶせない」組織と神様に、いったい何の関係があ るというのだろう。だが考えてみると、損失を社会のものに、富を自 分のものにした銀行業界への民衆の怒りが神学論争へと発展するのは 不可避だったのかもしれない。クレジット・デフォルト・スワップ(C DS)やダークプールなど、ウォール街の一部の発明品はあまりにも 複雑で、銀行経営者も完全には理解できない。ボーナスについて宗教 的に説明する方がずっと簡単だ。そうすれば一般の人々にも、少なく とも彼らが何を言っているのかが分かる。

理解可能な説明

わたしは、CEOの発言についてゴールドマンから何らかのもっ ともらしい説明があることを半ば期待した。例えば、ブランクフェイ ン氏は自分の時間をすべて神の仕事に割いていると言ったわけではな かった、銀行経営の合間にしているのだ、とか。

もう1つの妥当な説明として、ゴールドマンを笑い話のネタにす ること自体が神の仕事だというのも考えられる。そして、ブランクフ ェイン氏は自身の発言によって世間にこの機会を提供したのだと考え てもいい。

しかしブランクフェイン氏は、この「神の仕事」発言を貫こうと はしなかった。ひどく目立った記事の見出しに巻き起こった批判の前 に、同氏は引き下がった。ゴールドマンやその仲間たちの分割を望む 人々は、同氏が再び引き下がる日が来ることを願っているに違いない。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル 氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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