【コラム】オバマ大統領アジア初歴訪、「借金返せ」コールも-ペセック

世界的なリセッション(景気後 退)と自由貿易、安全保障、気候変動、アフガニスタン、イラク、北 朝鮮。

オバマ米大統領はこれらの多くの議題を抱えて就任後初のアジ ア歴訪に12日出発するが、アジア諸国の胸中にある真の問題に比べ れば、どれも雑談にすぎない。アジア諸国にとって実際に問題なのは、 ドルの不安定さで自国マネーが危険にさらされていることだからだ。

今回の歴訪を米国に融資する銀行への訪問と考えれば、嫌な旅か もしれない。アジアは米国に急拡大する債務の返済とドル急落防止を 実現できると確約させたい考えだが、米国の借り入れは制御不能の状 態で、オバマ大統領はそんな約束をできないという現実が見え始めて いる。

最高潮に達しつつあるドル不安は、将来にかかわる重要問題を骨 抜きするものだ。今こそ何か対策を打たねばならない。アジアにはド ル依存症から脱却する計画が必要だ。

今週シンガポールで開催されるアジア太平洋経済協力会議(AP EC)首脳会議で大きな成果が出るという空想は無用だ。貿易摩擦は 強まっている。米国はリセッションから抜け出せず、日本はデフレに 見舞われ、気候変動問題や北朝鮮の非核化問題の合意は見込み薄だ。

今回の首脳会議の最高の活用法は、出口戦略を協議することだ。 政府の景気刺激策からの出口ではなく、1997年と98年の危機後に 出現したアジア通貨をドルに連動させる通貨システムの解消だ。「ブ レトンウッズ2」体制と呼ばれるこのシステムは効果よりもむしろ害 が多い。

為替リスク

2009年のアジアの外貨準備拡大競争は大部分がリスクだ。以前 ならば巨額のドル準備を蓄積するのが賢明であることは明らかだっ た。ドル準備は混乱の時代に経済を守る城壁となり、国際通貨基金(I MF)に頭を下げることを避けるのに必要だった。アジアは今、わな に陥っている。

IMFは最近、ドルが依然として過大評価されていると指摘し、 問題を明確に説明した。米国の債務負担や事実上のゼロ金利政策、失 業率の上昇を考慮すれば、ドルは明らかに強過ぎる。ドルの軟化は理 にかなう動きであり、それが世界経済には必要だ。アジアはそれに対 応しなければならにない。

アジアにはこうした取り組みを監督する政策インフラを持たな い。鳩山由紀夫首相が欧州連合(EU)のアジア版創設を目指すのは 素晴らしいことだが、10年以上先の話だろう。アジアが多額の資金 を本国に送還し、米国の融資者であることをやめるために、APEC にはまだ道を開くチャンスがある。

分相応

それは簡単にはいかないし、ガイトナー米財務長官が冷たい反応 を見せる公算が大きい。だが、その資金があればアジアの債券市場を 深化させ、道路や橋、港湾、電力網といったインフラ整備に活用でき る。教育や医療の向上に非常に必要とされる財源にもなるだろう。

アジアが貯蓄を米国に振り向けるのをやめる必要があるのと同 様、米国はアジア・マネーなしで暮らす方法を学ばねばならない。こ れは米国に分相応の暮らしを迫ることになる。

確かにこれは現実離れした考えで、そのプロセスに着手するため の広く受け入れられた方法があるわけではない。重要なのは、金融の 不均衡を是正するつもりなら、極端な取り組み方が必要ということだ。 これは、アジア諸国が自国通貨の上昇とドル安を容認することを意味 し、このシフトがスムーズに展開することが市場安定化には最善だろ う。

近隣窮乏化政策

世界銀行のチーフエコノミスト、林毅夫氏は最近の発言で人民元 高が世界経済の回復を頓挫させると述べたが、これは無益なコメント だ。中国の近隣窮乏化政策がすべての国にプラスになると真顔で論じ ることがどうしてできるのか、皆目見当がつかない。日本が自国通貨 高を受け入れることを学んだ今、中国もそうする必要がある。

アジアが保有する米国債を売るといううわさだけでも市場は動 揺しかねない情勢だ。アジア各国の中央銀行が金など実物資産の購入 を増やしている兆候も同様に市場を揺るがしかねない。そうした意味 では、アジアのドル離れのプロセスは既に始まっている。

中国やロシア、アラブ諸国では新たな準備通貨を探すという声も 高まっている。よく聞かれるのはIMFのSDR(特別引き出し権) の利用を拡大する案だ。アジアはIMFによって管理される外貨準備 売却権のようなものを創設する可能性についてIMFと協議できる かもしれない。

このメカニズムは定めた目標に比べると重要性に劣る。この問題 で市場を混乱させずに成功を収めるためには、多くの意見交換が必要 になるだろう。世界の不均衡は抜本的な措置を講じなければ悪化し続 ける。

オバマ大統領は13日に訪問する東京で、ドルについてたっぷり 苦言を聞くことになると心得ておく必要があるし、それはシンガポー ルや北京、ソウルでも同じだ。こうした話は非公開で行われるだろう し、当局者は為替問題が協議されなかったと言い張るだろうが、アジ アの経済的・財政的見通しにこれ以上重要に関係する問題はないはず だ。何か手立てを講ずるべきときだ。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニ ストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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