日本のCDS市場に信用崩壊の声、アイフルADR手続きで

消費者金融アイフルの経営再建問題 をきっかけに、日本のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市 場の信用崩壊につながりかねないとの懸念が浮上している。債権の損失 保証の要件を巡って、デリバティブ業界のルール作りで世界的に権威を 持つ国際スワップデリバティブ協会(ISDA)が判定を下すのに時間 がかかっているためだ。

アイフルは9月に事業再生ADR(裁判外紛争解決)手続きによる 債務返済猶予を申請しリストラ策を発表した。同社の倒産などに備えて 債権を保証してもらえるCDSや関連商品の取引残高は最大で16億ドル (約1438億円)に上るが、保証決済は行われないままとなっている。

法律事務所メイヤー・ブラウン(シカゴ)のデリバティブや仕組み 商品の手続きの共同責任者であるポール・フォレスター氏は、「この状 態が長期化して、今後も潜在的に重大な問題点をさらし続けるようなら ば、この商品の信用低下につながるだろう」と述べた上で、「議論の決 着に時間がかかるようなら人々は信用保証の価値を疑うようになる」と 指摘した。

米有力格付け会社のスタンダード&プアーズは、アイフルの事業再 生ADR申請を受け、同社の格付けを選択的債務不履行に引き下げた。 債務の支払い不履行は、保証の売り手が買い手に対して損失相当額を支 払う要件のひとつのはずだ。

しかし、事情に詳しい関係者によると、ISDAは、債務不履行を 証明する公開情報がないことを理由にアイフルのCDSに関する信用事 由(クレジットイベント)の判定を見送っている。

日本初のCDS入札の可能性

BNPパリバ証券の野川久芳ストラクチャードクレジットストラテ ジストは、仮にクレジットイベントと判定されれば、日本初のCDS入 札が行われる可能性があると指摘している。

日本銀行によると、6月30日時点のCDSの国内取引残高は8873億 ドル(約86兆円)と前の年の5542億ドルから大幅に膨らんだ。債権の焦 げ付きに備えた一種の保険ともいえるCDSは、同商品を購入した投資 家が保証料を払う代わりに、クレジットイベントが起きた場合に売り手 側から元本などの損失保証をしてもらう仕組みとなっている。

ニューヨークを拠点とするデポジトリー・トラスト&クリアリング ・コーポレーションによると、11月6日現在、アイフル関連のCDS商 品の純取引残高は13.6億ドル(約1222億円)で日本の民間企業を対象 にした商品では最大となっている。また、アイフルを構成するインデッ クス取引を通じて、最大2億3900万ドル相当が保証対象となっている。

ISDAは、クレジットイベントの判定のために今年3月に15人の ディーラーと投資家からなる地域ごとの委員会を組織した。判定の判断 材料として、規制当局への提出書類、プレス・リリース、ニュース記事 などといった公開情報が前提となっている。

ADR手続き

総資産ではプロミスに次ぎ消費者金融第2位のアイフルは、貸出上 限金利の引き下げや来年6月までに導入予定の利用者1人当たり融資額 の総量規制など経営環境の逆風をまともに受け、金融機関で初めて私的 整理の一種である事業再生ADR手続きの申請に踏み切った。

同社は2007年3月以来、公募社債を発行しておらず、2009年4-9 月期の連結純損失は2823億円と、半期ベースでは過去最大の赤字を計上 した。9月18日には事業再生ADR手続きが事業再生実務家協会に仮受 理され、取引銀行などには約2800億円の債権残高の維持と返済期限の延 長を要請している。

S&Pは9月24日、アイフルの格付けを選択的債務不履行に引き下 げたと発表した。同日付で事業再生ADR手続きが受理されたことを受 けたもので、「金融機関の借入債務の元本返済を停止することに伴い期 日どおりの支払いが行われない債務が発生する」としている。

アイフルの小宮勝之広報部長によると、ADR手続の対象となって いる金融機関は66機関で、今月24日に第2回債権者会議が予定されてい る。同社の発表資料によると、事業再生計画案の決議を行う第3回は12 月24日に開催が予定されている。

クレジットイベント

10月15日。匿名の企業からISDAに対し、アイフルのCDSが支 払不履行によるクレジットイベントにあたるのではないかとの問い合わ せがあった。ドイツ証券の清水純一リサーチアナリストによると、この 企業は、アイフルが金融機関に提示した9月24日から30日の間の借入金 の元本返済予定額の金融機関別一覧表を証拠として提出した。

事情に詳しい関係者によると、ISDAで日本市場を管轄している 委員会はいったん問い合わせを受理しながらも、アイフルがISDAに 対して一覧表は機密文書だと苦情を出したのを受けて、翌日受理の判断 を覆した。一覧表はISDAのウェブサイトから削除され、アイフルに 支払不履行があったとの公開された証拠がないとの理由で、委員会は10 月19日、審査を拒否した。

清水氏は、ADR手続きに踏み切ったということは「支払不履行が あることは推察できる」と話した上で、「しかし、アイフルと債権者の どちらからも不履行の詳細が公開されていない」と指摘する。

審査拒否

アイフルの小宮勝之広報部長は、債務支払いの一覧表について、同 社から「正式に公開されたものではないので、このことについてコメン トできない」と述べている。

CDSの決済を試みる市場関係者のクレジットイベントとしての判 定要請は、委員会から10月19日の件を含め3度の審査拒否を受けている 。同月5日には、アイフルの件が「倒産」事由に抵触するのではとのあ おぞら銀行からの問い合わせに対し十分な公開情報がないとして棄却。 また、同行からの「債務の条件変更」事由の是非についても同月7日に 審査を拒否した。

今年12月で満期を迎えるアイフルのCDSは、クレジットイベント の判定時期は時期早尚との観測を背景に保証料が急低下している。市場 関係者によると、12月20日期限の同CDSの前払い保証料は10月15日時 点の水準と比べ42.5ポイント低下の12.5ポイントだった。これは、1億 円相当の債権に対するCDSの損失保証料が1250万円と、以前の5500万 円から4分の1程度に減ったことを意味する。

判定の行方

BNPパリバ証の野川氏は、「ISDAに問い合わせをしてきた市 場関係者はなるだけ早い段階でのクレジットイベントを望んでいるだろ うが、期待通りに行きそうにない」と指摘する。

あおぞら銀広報室の原田政明室長は、同銀行が正式に発表している 以上のコメントはできないと述べた。

アイフルが開く12月24日の債権者会議後には、ISDAの委員会が クレジットイベントのひとつである債務の条件変更が行われたとして、 「早ければ年末にも」判定できる可能性があると野川氏はみている。

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