(第6段落に市場関係者のコメントを追加しました)

【記者:小笹俊一、山崎朝子】

11月11日(ブルームバーグ):「日本人としては残念だが潜在 成長率が0%台半ばの日本で投資対象になる企業はもはや100社も ない」。73歳の吉野永之助氏が最高投資責任者(CIO)を務める 投資信託が30銘柄に絞った運用で1月の設定以来32%の利回りを達 成した。

この投信は独立系のコモンズ投信の「コモンズ30ファンド」で、 運用残高は現在約4億円。1月19日の運用開始以来の運用成績は東 証株価指数(TOPIX)の6.45%を25ポイント以上上回っている。 吉野氏は投資戦略について「世界成長の恩恵を享受できる企業を中心 に投資している」と説明。「コマツやマキタのような海外売上高比率 が70%を超える企業で、海外生産比率が50%を超えていれば為替リ スクもヘッジできるのでさらに望ましい」と話す。

吉野氏は、米国の運用会社キャピタル・グループの元日本代表。 引退後5年の「ブランク」を経て復帰した。日本の高度成長真っ盛り の1960年に当時の日本勧業証券に入った吉野氏は、運用経験が50 年近い国内最古参のファンドマネジャーの1人だ。

吉野氏は当時の投資環境について「高度成長のころは政府が予算 を重点配分している産業に投資していればよく、例えば不動産業界は 成長そのもの、株式を持っているだけで幸せな時代だった」と振り返 る。

国際競争力

しかし、吉野氏は「日本だけでは成長が見込めない時代に国際競 争力のないセクターには投資できない」と語り、不動産、金融、通信 セクターには1社も投資していない。実際、日本の時価総額上位30 銘柄からなり不動産、金融、通信会社を9社含むTOPIXコア30 のパフォーマンスを、設定来で32ポイント上回っている。

いちよし投資顧問の秋野充成運用部長は「今の日本市場は短期売 買か吉野氏のように30社程度に絞り集中投資するぐらいしかできな い状況になっている。グローバルに考えて価値のある銘柄は少ないの が現状で、長期の投資資金を呼び込むには景気回復が伴わなければな らない」と話した。

日本株投資を再開するに当たり吉野氏が考えたのは、既存の産業 分類から考え直すこと。「10年先の議論をするならば今の業種でな く10年先の業種で議論したい」という。そのノートには「未来移動 体」「電機・新エネルギー」「環境インフラ」など10の独自セクタ ー分類が並ぶ。「企業自身も5年以上先のことは予測できない。そこ で投資家は実務家として企業の成長をイメージし創造していくしかな い」と語る。

この結果、吉野氏は、トヨタ自動車やホンダは単なる自動車メー カーではなく未来移動体セクター銘柄として、コマツ、クボタ、ダイ キン工業、日揮は既存の業種の枠を超えた環境インフラセクターの銘 柄としてそれぞれ分類している。

キャピタルが実現したことを

1931年創業キャピタル・グループの運用資産残高は2009年3 月末時点で約10.5兆円。旗艦ファンドであるアメリカン・ファンド は、吉野氏によれば1934年の設定以来、年平均で約12%の投資リ ターンを記録しているという。

吉野氏は、「企業をグローバルで比較するのはキャピタルに20 年在籍したことで自然と身につけた手法」と話す。コモンズでは企業 の現状調査にとどまらず、30年にわたる財務データなどの歴史や過 去の経営判断をさかのぼる。本質的な競争力、経営者のリーダーシッ プ、ビジネスモデルなどを見極めることをたたき込まれたキャピタル での手法をコモンズで継続、発展させることを目指す。

吉野氏は「キャピタルは創業以来、プロクター・アンド・ギャン ブルを保有し続け、配当や分割を考慮すれば株価が実質100倍にな った実績を持つ。コモンズ投信で同じことを実現し、貯蓄と投機しか 知らない日本人に投資文化を根付かせたい」と話している。インタビ ューは10日に行った。

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