【経済コラム】ヘッジファンドはバブルで育つ、今が好機だ-M・リン

【コラムニスト:Matthew Lynn】

11月10日(ブルームバーグ):新たな厳しい規制の導入が近い。 スキャンダルや逮捕者も相次いだ。信用収縮によって揺さぶられた投 資家はリスクテークに神経質だ。

その通り。履歴書や靴に磨きをかけ、新しくヘッジファンドをス タートさせるのに、これほどの好機が訪れたことはかつてない。世界 は明らかにヘッジファンドが今後5年間で莫大(ばくだい)な利益を 生み出せる様相を呈している。

新たなバブルの形成

資産価格は高値からまだ程遠い。低金利通貨で資金調達し、他の 通貨建て資産に投資する「キャリートレード」も戻ってきた。そして 何よりも世界中でバブルが沸々と生じ始めている。ヘッジファンドが 再び自ら富を生む準備が整った。唯一の問題は「バスにいつ乗るべき か」ということだけだ。

政治家らは新たな規制をちらつかせて業界に脅しを掛け、ロンド ンを拠点とする多くのヘッジファンドがスイスに脱出した。

ヘッジファンド業界はスキャンダルにも悩まされている。K1グ ループの創業者ヘルムート・キーナー容疑者が10月末にドイツで逮捕 され、ガリオン・グループの設立者で資産家のラジ・ラジャラトナム 被告も先月、インサイダー取引の疑いで米当局に身柄を拘束された。 こうした事件は、バーナード・マドフ受刑囚の巨額のねずみ講が世間 を騒がせた後だけに業界全体の信用を傷つけている。

このため、野心的な若い金融家が守りを固め、業界の見通しが改 善されるまで自分の職にしがみつくべきだと決心したとしても驚きで はなかろう。2005年と06年のヘッジファンドの流行に乗れなかった とすれば、今では遅過ぎるかもしれない。

悲観論は早計

「ご機嫌よう。幸運を祈ります」-。ヘッジファンドローンチ・ ドット・コムは4月15日付で、「金融システムはスキャンダルや内部 崩壊、公的救済、その他いろいろあって、あらゆる信認を失った。わ れわれはこれで終わりにします」と最後のコメントを掲載した。しか し、悲観論に陥るのは早過ぎる。

今月に入り、注目すべき動きがある。チューダー・インベストメ ントの元商品調査担当責任者スティーブ・マシューズ氏は、来年1月 に新たな商品ファンドの開設を計画している。また、スターク・イン ベストメンツの元上級ポートフォリオマネジャー、スチュアート・ウ ィルソン、テオール・エッズ両氏もシンガポールで、新たなファンド 「オーチャード・キャピタル・パートナーズ」を立ち上げようとして いる。

さらに、UBSのマネジングディレクターだったアンドルー・バ ーカー、レイモンド・マクガイア両氏は、世界最大の海運ヘッジファ ンドを運用するタフトン・オーシャニック・ファイナンス・グループ の支援を受けて、トランスポート(運輸)ファンドの設立準備に動い ている。

好機

正気を失っているわけではない。安定した職をやめ、ヘッジファ ンドをスタートさせる好機かもしれないのだ。正当な理由が3つある。

まず、ヘッジファンドは株式相場が安値水準にあるか、価格がま ずまずの状況で開設する必要がある。ヘッジファンドが通常請求する 20%の手数料は、ファンドの運用成績がプラスになって初めて有効だ。 市場がバブルでない状況でファンドをスタートさせることによっての み、莫大な利益を生むことができる。

2番目の理由として、キャリートレードの復活が挙げられる。米 英両国で低金利の資金を調達し、高利回りの通貨と資産に再投資する ことが可能だ。ヘッジファンドは過去10年、円を用いてキャリートレ ードを行うことが多かったが、今はドルと英ポンドが利用できる。

3番目の理由は、世界経済の勢いを回復させるため、量的緩和を 通じて市場に大量の流動性供給を行う各国の中央銀行の決定が、至る 所で資産バブルを生み出している状況だ。バブル発生は一目瞭然(り ょうぜん)で、そのペースも速いため、グリーンスパン前米連邦準備 制度理事会(FRB)議長でさえ、それに気付くことができるだろう。 オーストラリア・ドルでも、新興市場の株式でも、金でも、好みの投 資先を選べばよい。

成功の秘訣

こうした状況をうまく利用する上で、ヘッジファンドほどうって つけの投資手段はない。バブルの発生を見分けることがヘッジファン ド成功の条件だ。唯一の秘訣は、バブルに早く気付き、それが崩壊す る前に逃げ切ることだ。バブルが多ければ多いほど容易になる。

ファンドは不規則な相場変動で育つが、それは現在あちこちに存 在する。ヘッジファンドが今後数年で生み出すことのできる富が目の 前にある。課税と規制が根絶された場所を拠点とすることができさえ すれば。 (マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE