ゴールドマン元女性幹部が祖国に錦-果てなき野望でドミニカ証取改革

ダリス・エストレラモルダンさん (40)はゴールドマン・サックス・グループを退社し、祖国ドミニカ 共和国の証券取引所の最高経営責任者(CEO)に就任した。彼女の 目標は透明性に基づく市場文化の定着だ。

エストレラモルダンさんはカルチャーショックがどういうものな のか、よく理解している。1987年にドミニカ共和国から米国に留学し た際に味わったからだ。当時17歳のエストレラモルダンさんは英語を ほとんど話せなかったが、すぐに環境に適応。大学と大学院の学位を 得てウォール街で15年のキャリアを積み、ゴールドマンで要職に上り 詰めた。

2007年に祖国ドミニカ共和国の証券取引所の最高経営責任者(C EO)に就任するため帰国したときは、これほど難しい移行になると は予期していなかった。「最初は自分のペースに職員が合わせるのを 望んだためとても苦しい状況に陥り、周囲の人々をいら立たせていた」 と振り返る。ゴールドマン時代は猛スピードで大量の仕事をこなすこ とに慣れていただけに、それとは対照的なドミニカ共和国証券取引所 の「ペースに合わせるのは自分にとって大きな軌道修正だった」と語 る。

エストレラモルダンさんはドミニカ証取に順応したが、野心家で あることに変わりはない。価格情報の公開拡充を推進し、店頭取引が 主体の同国市場で証取での売買拡大を提唱している。「集中型のプラ ットホームと価格を見に行けるスクリーンがあれば誰でも勝てる」と 話す。

こうした取り組みは功を奏しつつある。同証取の取引は、08年に 430億ドミニカ・ペソ(約1075億円)と06年の16億ドミニカ・ペソ の25倍に急増した。同証取が扱っているのは主に確定利付き国債と一 部社債のみ。

エストレラモルダンさんのCEO就任時の上場銘柄は6社の債券 だけだったが、今年10月時点では16銘柄に増加。10月の同証取の取 引全体に占める既発債取引の割合は89%と、06年の約3割強から上昇 している。

逆境をチャンスに

世界的な信用危機はエストレラモルダンさんにとって、企業に国 内市場での資金調達の実行可能性を売り込むチャンスをもたらした。 ビール醸造会社セルベセリア・ナシオナル・ドミニカーナは08年に米 ドル建て債借り換えのため国内で起債した。

ドミニカ財務省は今年、電子取引可能な証券の発行を開始、取引 の利便性向上で大きな一方を踏み出している。中央銀行の発行する証 券はドミニカ市場の最大の部分を占めるが、これも今後電子取引可能 な証券として発行される予定で、「市場に多くの流動性をもたらす」 とエストレラモルダンさんは期待する。

投資家基盤を拡大するためエストレラモルダンさんはドミニカの 債券への投資を国民に奨励する広告に自ら登場したほか、最低投資額 を引き下げる制度改革を実施してリテール(小口)投資家の呼び込み を図るなど、「資本の民主化」と呼ぶ政策を推進。さらに、中米諸国 の規制当局や取引所トップらと連携し、域内のブローカーが市場情報 を共有できるよう取り組んでいる。

ドミニカ証取で現在可能な取引は債券だけだが、複数の企業から 株式上場の可能性について照会を受けており、2011年までには同証取 初の新規株式公開(IPO)が実現するとエストレラモルダンさんは 予想している。

3児の母

3児の母でもあるエストレラモルダンさんにとって、ドミニカ証 取のCEO就任は帰国のチャンスだった。同氏は渡米後ニューヨーク 市立大学のラガーディア・コミュニティー・カレッジで2年間学び、 バッサー・カレッジに編入して92年に卒業。ニューヨークのデルテッ ク・アセット・マネジメントに就職し新興市場国債券を専門とした後、 2000年に退社してミシガン大学ビジネススクールに入学。02年に米債 券担当者としてゴールドマン入りし、同部門でバイスプレジデントに 昇格。その後同社の人材採用チームに参加したほか、多様性とリーダ ーシップの研修にも携わった。

ニューヨークで働きながら同郷人とのつながりも維持し、97年に は祖国の資本市場の発展を支援する「ドミニカンズ・オン・ウォール ストリート」を共同で立ち上げた。こうした経歴が新CEOの選定作 業を進めていたドミニカ証取の取締役会の目に留まったようだ。CE O職を提示されたときは祖国に錦を飾るチャンスだと思ったという。

「まだ行わねばならないことがずいぶん多いと自分自身に言い聞 かせている」という言葉の陰には達成感も感じられる。「この2年で 起きたことを考えれば、自分は幸せだと思わねばならないだろう。幸 せという言葉が適切かどうかは分からないが、満足する必要がある」。 エストレラモルダンさんに後悔はない。

(英語原文「Emerging Marketer」は「ブルームバーグ・マーケッツ」 誌12月号に掲載)

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