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【コラム】増資夢見るBOAに忍び寄るリーマンの亡霊-Dライリー

今回の金融危機では、痛手の大 きかった金融機関の幹部は増資の機会が訪れた際に幾度となくためら った。株式を安い価格で売却し、既存株主の希薄化につながることを 極度に懸念したためだ。

米証券リーマン・ブラザーズ・ホールディングスやフレディマッ ク(連邦住宅貸付抵当公社)など一部のケースでは、誤った判断が致 命傷となった。米銀大手バンク・オブ・アメリカ(BOA)も今、同 じような失敗を犯しかねない。その結果がそれほど悲惨なものにはな らないとしても。

BOAは政府の金融安定化基金への一部返済を早く開始して、最 大の出資者として専制君主的立場である政府の介在を元の状態に戻し たいと考えている。それは当然のことだ。

BOAは増資しなくても返済に十分な資本があると自身では考え ている。しかし、最近の米紙ウォールストリート・ジャーナルの記事 によると、政府の見解はその逆だ。

BOAの株価が3月の安値から5倍に上昇していることを考えれ ば、BOAは希薄化を気にするのはやめて、できる時に資本を増強す べきだ。たとえ株主がいらだちを示しても、最終的には受け入れるだ ろう。

確かに、BOAの資産は同行や他の銀行が政府の救済を受けて以 来、改善した。BOAは今年、400億ドル(約3兆6000億円)の追加 増資も実施している。

バランスシート

それでもBOAのバランスシートは万全には程遠い。「大き過ぎ てつぶせない」という点からみて、BOAは資本に関する一部の指標 でJPモルガン・チェースやシティグループに後れを取っている。既 存の資本を政府への返済に利用すれば、銀行の健全性を測るもう1つ の指標である有形株主資本の面で、ウェルズ・ファーゴにも届かない。 金融危機の最悪期には、金融機関が危機を乗り越えられるか判断する 際に、規制対象の資本ではなく、有形株主資本を投資家は重視した。

買収に伴うのれん代などを除いた有形株主資本比率は少なくとも 4-5%が望ましい水準との見方が一般的だ。7-9月(第3四半期) 末時点で、BOAの同比率(住宅ローン回収の権利除く)は3.86%だ った。一方、この夏に政府の優先株の一部を普通株に転換したシティ グループは5.41%だ。

BOAが、政府保有の優先株のうち200億ドル相当を買い戻した 場合、有形株主資本比率は3%未満に低下する。何か問題が起きれば、 BOAは危ない橋を渡ることになる。

これに対して、BOAが150億ドルを増資し、その資金を政府の 優先株450億ドルの一部買い戻しに充てれば、同比率は4.6%近くに 上昇し、JPモルガンを上回る。

不良債権

増資をしなくても、堅実な収益拡大を通じて資本を拡充できると の見方もあろう。結局、超低金利が銀行の利益押し上げに寄与してい る。

しかしこれは、貸し倒れ損失がピークに達しつつあるとのBOA の見方が正しいとの想定に基づく。厄介なのは、住宅市場や消費の行 く末はせいぜい曇り模様ということだ。

すでにBOAは不良債権の損失処理について問題を先送りしてい る。不良債権に対する貸倒引当金の比率は7-9月期末時点で110% と、前期の115%から低下。1年前は152%に達していた。BOAは不 良債権がピークにあるとの希望的観測からこの比率を縮小し、損失計 上を遅らせている。

小さな対価

そうでなければ、業績に表れるだろう。同比率を4-6月期の水 準にとどめておけば、7-9月期の税引き前損失は2倍の約37億ドル に達した可能性がある。

最悪の状況がBOAに訪れるとは限らないし、第2のリーマンを 期待する者などはいない。BOAは資本増強に向けてできることをす れば、状況は一層良くなるだろう。

納税者がBOA救済に巻き込まれたことを考えれば、増資による 希薄化は、BOAが切望する自由を手に入れる際の小さな代価にすぎ ない。 (デービッド・ライリー)

(ライリー氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 コラムの内容は同氏自身の見解です)

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