コンテンツにスキップする

性的表現や隠語にも注意-新車名は1年半かけ100候補から絞り込み

「プリウス」「リーフ」「アイ ミーブ」。今年の国内販売店が取り扱っている四輪自動車は約180 車種に達する。車名にはそれぞれ由来があり、生みの親たちの思いが 込められている。命名に際しては性的表現や隠語のチェックも欠かせ ない。

今年6月、日産自動車の株主総会で質問が出た。「日産が満を持 して市場投入する電気自動車に、まだ名前が付いていないのか」。カ ルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「子どもが生まれ たら、おじいちゃん、おばあちゃんも親と一緒になって名前を付けた がるでしょう」と指摘し、「日産の電気自動車にも1000人ほどの親 がいる」と、命名の難しさを語った。

このエピソードを紹介した日産自ブランドマネージメントオフィ ス部長の中山こずゑ氏は、電気自動車リーフの命名に携わった。開発、 デザイン、株主まで巻き込んだ「1000人の親」の意見が「奇跡的に うまくまとまったケース」という。

命名に際しては商標登録の問題がある。苦労して考えても、すで に商標登録されていると使えない。中山氏によると、日産自では新車 に通常、60から100の名前を用意する。それを特許庁などのデータ ーベースで自動車カテゴリーに同名の登録がないかを調べると、その 時点で候補が半分に減る。

さらに、海外の販売予定国でも通用するのかどうか。日本で問題 がなくても、海外では性的な意味合いがあったり、暴力的な言葉だっ たりすることもある。読みやすさ、親しみやすさなども主要国でチェ ックした後、販売対象の比較的に小さな国について調査をする。

中山氏は「チェック対象の国や地域が国連加盟国より多いことも ある」と、命名作業の難しさを強調する。カナリア諸島や南米、カリ ブの小さな島もチェック対象になる。現地の弁護士事務所を通じて、 商標や言葉のニュアンスまで調べると、用意した100の候補は、3 から5になっているという。

リーフは奇跡的に条件をクリア

日産自が発売予定のリーフは英語で「LEAF」。植物の葉を意 味する短く単純な言葉だ。これが商標登録されていなかったことに、 中山氏は驚いた。LEAFはLeading Environmentally-friendly Affordable Family Car (環境にやさしく手ごろな価格のファミリー カー)の略にもなっている。さらに、「植物の葉は光合成でCO2を 吸って酸素を出す」という意味でも、電気自動車のコンセプトに合致 していたと振り返る。

世界すべての言語でまったく問題なしというケースはそう多くな い。一部の町や村で、本来の意味と違う使われ方をしていた場合、リ スクをとるケースもあるという。あえて、大きな市場でのイメージを 優先するということだ。

同じクルマが海外では違う名前も

一方、国によって名前を使い分けるケースも多い。ホンダの人気 車「FIT」(フィット)は、海外販売の際に「JAZZ」に変えた。 欧州の一部地域で、音の響きが良くなかったという。

また、日産自は2007年に海外で「キャシュカイ(QASHQA I)」という多目的スポーツ車(SUV)を発売した。イランのかつ ての遊牧民族を指す言葉だが、日本語で発音しづらく、「キャッシュ (現金)かい?」と尋ねているようにも聞こえるため、「デュアリ ス」に変えた。

トヨタ自動車の人気車「エスティマ」は、アジア地域で「プレビ ア(PREVIA)」、豪州で「タラゴ(TARAGO)」となる。 5ドアミニバンの「イプサム」は、アフリカや中東地域で「ピクニッ ク(PICNIC)」、欧州で一時「アベンシス・バーソ(Avens isVerso」で販売するなど、国によって使い分けている。

調査会社インテリジェンス・オートモーティブ・アジアのマネー ジングディレクター、アシュビン・チョータイ氏は「日本人以外には 違和感のある車の名前はたくさんある」という。ダイハツの軽乗用車 「ネイキッド」(99年-03年)は、「ありのまま」「むき出しの素 材感」の意味が込められているが、英語をそのまま受け取ると「裸 体」という言葉を連想してしまう。

トップダウン、だじゃれも

トヨタが約3750万円で発売予定の「レクサスLFA」には、豊 田章夫社長の思い入れがある。「LFA」は、LEXUS、Fシリー ズ、APEX(頂点)の頭文字で、Fシリーズとは、トヨタのハイパ フォーマンスエンジン搭載バージョン。また、FSW(富士スピード ウエイ)のFでもある。自らもレーサーである豊田社長の思いも車名 に反映した格好だ。

豪快なのはスズキの人気車「ワゴンR」。ワゴンタイプを出すに 際し、鈴木修社長は、スズキには「セダンもあるけど、ワゴンもある。 だからワゴンあーる(R)でいいんじゃないか」と提案したという。 鈴木社長は自らの著書「俺は、中小企業のおやじ」でこのエピソード を披露している。

ミズノ・クレジット・アドバイザリーの水野辰哉代表は「名前だ けで車が成功することはない。しかしながら、名前そのものは社運を 駆けていることを象徴する」とし、「消費者の潜在意識をうまくとら えて消費者の関心とマッチしているか」を見る材料にもなると、名前 の重要性について指摘している。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE