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アダルトビデオから野菜生産者に転身、元社長が挑む農業改革

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アダルトビデオの制作販売会社 在籍時代に10億円を稼ぎ出した元社長が農業生産者に転身、独自流 通を通じて、年間450億ドル(約4兆700億円)の税金が投入され る日本の農業制度の変革に挑んでいる。

この元社長は高橋がなりさん(50)で、10億円を元手に意識の 高い消費者を対象にした野菜と果物の生産・流通を手掛ける「国立フ ァーム」(東京都国立市)を立ち上げた。

現在、世界で最も多額の補助金がつぎ込まれている国内の農業制 度に頼らず、農業共同組合を通じてではなく自社流通で消費者に直接 販売することを目指す生産者が増えており、高橋さんもその1人だ。

「農業もポルノと同じ。収益を上げていくには、イメージを変え ないといけない」。2006年に設立した国立ファームで高橋さんはこ う語る。「ダサイから、かっこいいというイメージにしないといけな い」。なすやピーマンはオンライン販売のほか、直営の野菜レストラ ンでも直売されている。

高橋さんのような農業生産者は、日本におけるコメと野菜の流通 で独占的な地位を占め、組合員に供給する肥料などの価格を決定する 農協に挑んでいる。東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教 授は、このような動きが今後、農業補助金の縮小だけでなく、農産物 の価格低下や農業貿易交渉の合意促進にもつながり得ると指摘する。

農業新規就労者は増加

本間教授は、「こうした動きは既に起こっている」とした上で、 「こうした生産者は賢い。市場を調べ、独自の判断を行っている」と 説明した。

5月に発表された調査によれば、JA組合員の過半数が、流通経 路に関する不満を抱いている。JAによると、07年までの2年間で 組合員数は10万人減り、490万人になった。一方、農林水産省の統 計によれば、08年の農業新規就労者は1万400人と、06年の8700 人から増加している。本間教授によると、その多くは独立した野菜生 産者だという。

経済協力開発機構(OECD)の日本農業に関する報告書の共著 者であるロジャー・マルティニ氏は21日、東京で開かれた記者説明 会で「支援を最も受けていないこれらの生産者が成功しつつあること は意外ではない」と述べ、「彼らは消費者に重点を置いており、独自 の供給ルートとマーケティングを作り上げた」と説明した。

ポルノと野菜

JAに頼らず、独自の野菜直売店を通じて販売する生産者グルー プ「ベリベジ」の代表、齋藤正明氏(30歳)は、「自分としては補 助金を受け取るつもりはないし、農業は衰退していると人に思われた くない」と語る。JAの組合員でもある同氏は「生産者は生産からこ ん包、販売に至るまで主導権を握る必要がある」と述べた。

一方、JA全中の甲斐野新一郎・総合企画部部長は、「大規模農 家や企業的な農家が育たなかったのは農協のせいだ」との批判がある が、これは農業構造が原因であり、農協は「組合員の選択に合わせた 事業をしてきた」と反論する。

高橋さんは農業を始めたことで、職業を子どもに隠す必要がなく なったと語る。現在、完熟しても白い「ホワイトいちご」の販売に力 を入れているが、多額の起業コストがかかったことなどから利益を出 すには至っていない。目指すのは「野菜を嗜好品にすること」だ。 「AVでお客は刺激を買っている。同じように刺激物を売るという意 味で、嗜好品として提供したい」と抱負を語っている。

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