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夢運ぶボーイング787迷走-開発遅れの現実に忍耐のチタン業界

初飛行日程が何度も延期さ れ、航空会社への納入が大幅に遅れるなど、いまだに迷走を続け る米ボーイング社の最新鋭中型旅客機787「ドリームライナー」。 夢を運ぶと期待されたがいきなり失速、機体の製造を担う国内チ タン業界は開発遅延という現実に振り回されている。

ボーイング社は、初飛行を2009年末までに実施、初号機の 納入は2年半遅れて10年10-12月に行うと公表している。しか し、787型機の開発スケジュールは、これまでに5度も延期され ているため、チタン業界関係者は疑心暗鬼だ。炭素繊維を多く使 用した開発における機体軽量化の過程で、強度不足などが生じ、 設計変更を余儀なくされているという。

ボーイングや欧エアバスの機体などに使われる高品位チタン で世界1位、大阪チタニウムテクノロジーズ。787型機は従来の 航空機に比べ、チタンの使用量が1機当たり110トン程度と約4 倍に相当。エンジン回りだけでなく、炭素繊維を支える骨格部分 にも使用される。787型機の開発や一般産業機械分野での需要の 高まりなどに備えるため、同社は08年10月、年産能力を2万 4000トンから3万2000トンに拡大した。

ところが、遅々として進展しないボーイング社の開発計画に 加え、昨秋来の世界的な景気後退が追い討ちをかけ、チタン需要 が急減。そのため、大阪チタンは減産を決定、今年4月に40% 強、7月からは50%強に減産幅を拡大した。競合するチタン大 手、東邦チタニウムの玉井和典理事も開発の遅れは業績に「大き な影響がある」としている。

アドバンスト マテリアル ジャパン・ユーラシアチームのチ タン担当者、西野元樹チームリーダーは「787は受注残が何年分 も大量にあるということで、チタン原料、製品の取り合いになり、 チタン業界は色めきたった。日本のスポンジチタン価格も20- 30%上昇するなど、航空機需要が引っ張って値段を引き上げた」 と指摘する。

内憂外患の下請け企業

岐阜県各務原市には、1917年に開設された、現存する国内 最古の飛行場がある。周辺には航空機工場が集まり、日本有数の 航空宇宙産業拠点だ。同市役所・産業政策室の和田雅仁係長によ ると、市の航空関連下請け企業は787型機の開発に備え「日本中 で期間工や派遣切りを行っている中、2年前に片っ端から人員を 採用した。専用社屋を増築したところもある」。787型機は、機 体の35%程度の製造を三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の 日本勢が担う。

航空機の部品組み立てなどを行う岩戸工業(各務原市)の井 納誠社長は、787型機に使用する部品の下請け注文を受けて航空 機担当スタッフを10人程度増やし計100人以上の規模にした。 部品の製造作業は熟練工の手作業によるところが大きく、最先端 の技術を駆使した次世代航空機といえども例外でないためだ。 「しんどい思いをして確保した人員が宙に浮いてしまった。開発 の遅れが長引くと命取りになる」という井納氏。

厳しい環境下に置かれるチタン業界だが、一条の光も見え始 めている。日本チタン協会の筒井政博・専務理事によると、航空 機部品などに使われるチタン展伸材の2008年の世界出荷量は11 万7000トン程度と推定され、日本はそのうち2万トン近くにな る。住友商事の調査では787型機の受注残は850機以上に上る。 年間100機程度生産され、チタン展伸材の需要は年間10%程度 増加するという。ボーイングによる年末の初飛行が本当に実施さ れるかどうか、チタン業界関係者は忍耐強く見守っている。

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