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日銀の企業金融支援特別オペ長期化「モラルハザード生む」-経済学者

日本銀行が早ければ30日の金融 政策決定会合で、12月末を期限とする企業金融支援策の終了か見直し に踏み切るとの見方が強まっている。中でも0.1%の固定金利で企業 債務の範囲で無制限に資金が調達できる企業金融支援特別オペの行方 に関心が集まっているが、経済学者の間からは、同オペの長期化はモ ラルハザードを生むとして、早期終了を支持する声が出ている。

東大大学院の福田慎一教授は23日、都内で行われた討論会で、企 業金融支援特別オペは「ある意味での補助金付きで」金融機関に資金 を供給する仕組みであり、「必ずしもこの支援に依存する必要のない金 融機関も利用している面」もあると指摘。「あまり長く続けると、ある 種のモラルハザードのコストが大きくなる」と述べた。

日銀は企業金融支援のための時限措置として、特別オペのほか、 コマーシャルペーパー(CP)と社債の買い入れを行っている。CP と社債の買い入れについては、ブルームバーグ・ニュースがまとめた 調査で、エコノミスト16人中11人が30日の決定会合で打ち切りが決 まると予想したが、特別オペについては意見が分かれた。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは同じ討論会で、「特別 オペは銀行間市場で資金が逼迫(ひっぱく)したときに金利を抑える 効果があったが、現状では弊害の方も目立ち始めている」と指摘。「固 定金利で無制限というオペなので価格競争が起きず、CP市場で企業 の信用力や発行量に応じた金利形成がされないという不自然な状況で はあるので、いずれは解消する方向で対応すべきだ」と述べた。

今このタイミングでやめるべきか

加藤氏はただ、「今このタイミングでやるべきなのか、という議論 も当然出てくる。とりあえず来年3月の期末越えまで待っても良いで はないか、というのも無難な見方だ」と語る。さらに、「民主党政権と この問題でもめて、政治的資源を使ってしまうのはもったいないよう にも思える。ここでもめると、本当の出口政策、つまり利上げのとき に動きづらくなるようなことがあっては損だ」という。

一方、福田教授は日銀の企業金融支援策について、次のような整 理を行った。日銀のオペレーション(公開市場操作)は市場価格で売 買するのが原則だが、それでも日銀に売りたいというニーズがある。 例えば、今回の金融危機のように、市場が壊れて買い手が付かない場 合、日銀が市場から買い入れる。

福田教授は「CPや社債の買い入れは、今年年初は日銀のオファ ー(提示)に対し2倍近く応札が出るなど、金融市場の安定に寄与し たが、最近ではほとんど応札もなく、市場も安定しているので、その 役割は終えた」と指摘する。

特別オペには特殊な性格も

これに対して、「企業金融支援特別オペは特殊な性格がある」と福 田教授はいう。「必ずしも市場価格で日銀が購入するものではなく、む しろ、ある意味での補助金付きで日銀が金融機関から購入するという ものだ。金融機関にとっては、常に売れるものなら売りたいという性 質のものでもある」。

CPは過去3回の応札がゼロ、社債も直近の応札は15分の1にと どまったが、特別オペの残高は高水準を維持している。福田教授は「出 口戦略を考える場合、CPや社債はある意味で分かりやすく、売り手 がなくなってきたら必要ないと判断できる。しかし、特別オペには本 来必要ない場合でも常に需要が残るので、あまり長く続けると、ある 種のモラルハザードのコストが大きくなる」と指摘する。

一方、東大大学院の柳川範之准教授は同じ討論会で、異なる視点 から日銀の企業金融支援策を分析した。まず、「日銀が金融危機後にや ってきた緊急対策には、大きく分けて2つの目的があった」と指摘。 1つは資金繰り不安、あるいは流動性のひっ迫への対応。もう1つは 緊急景気対策という意味合いであり、「この両方が混在する形で行われ た。特別オペもその典型」という。

国民は「景気悪いのになぜやめるのか」

その上で「2つは違う動きをするので、いわゆる資金繰り不安や 流動性対策として出口を考えるのか、それとも景気対策的な意味合い でもって出口を考えるのかによって、どういうタイミングで出口とす るかが変わってくる」と指摘する。

柳川教授はさらに、「多くの国民が持っている印象は、これは景気 対策であり、景気はちっとも良くなっているようには見えないのにな ぜ出口だ、という話になる。ここをきちんと整理をしておかないと足 元が固まらなくなる。個人的には、日銀の企業金融支援策はやはり、 基本は流動性対策、資金繰り対策であって、景気対策で引っ張ってい くのはかなり難しいものがある」と語った。

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