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「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

10月26日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは30日 開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 16人に内外の経済・物価情勢、金融政策の展望を聞いた。質問内容は 以下の通り。アンケート回答期限は22日午前8時。エコノミスト予想 のまとめ記事は「CPと社債購入の停止を議論、物価は3年連続マイ ナスへ-30日に日銀」をご覧ください。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)実質G DP(国内総生産)成長率、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアC PI)前年比上昇率の見通し、13)経済・物価情勢の展望、14)金融政 策の展望

●三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年10-12月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.3% コアCPI:-1.7%」

2010年度「実質GDP:+0.9% コアCPI:-1.5%」

2011年度「実質GDP:+1.6% コアCPI:-0.1%」

13)日銀のコアCPI見通しは09年度については7月時点の-1.3%か ら-1%台後半へと下方修正するだろう。景気低迷による需給の緩和 (=大幅なデフレギャップ)や円高進行を勘案する。10年度も同様。 エネルギー価格の反落という押し下げ寄与が小さくなってゆく半面、 デフレギャップの残存によるコアコア部分の下押し圧力が代わって大 きくなるため、下落率の縮小は鈍い。

11年度はデフレギャップ解消の遅れを想定し、-0.3%~-0.2%と 3年度連続の下落を提示しよう。

14)企業金融支援策は打ち切り検討中。決定は11月19、20日の次々 回会合にずれ込む公算が大きい。

理由は①30日の次回会合は1日だけの開催、かつ主要議題は展望 リポートの取りまとめなので、検討時間を確保しにくい②9月決算発 表で企業収益の底打ちを、7-9月のGDP統計(11月16日発表)で 実質プラス成長の持続などを確認できれば理解を得やすい③企業金融 支援特別オペの打ち切りはなお入念な地ならしが必要(一方、当方は 年度末までの再延長を予想している)。

●日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.30%(同) 11) 11年9月末 :0.30%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.6% コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-1.2%」

2011年度「実質GDP:+1.4% コアCPI:-0.3%」

13)日銀の地域経済報告では、表面的には9地域すべてで景気判断を 上方修正となったが、秋の支店長会議の報告からは雇用・所得環境は 依然厳しく、先行きの政策効果の息切れを不安視する声も出ていた。 既に発表された9月の国内指標では、新型インフルエンザや天候不順 の悪影響が少しは和らぎ、足元の受注に下げ止まりの兆しが見え始め たなど、明るい点もある。

しかし、新政権による公共事業の削減方針で、今年度(目先)の 成長率は-0.2%弱の押し下げが見込まれよう。一方、所得の減少が続 く状況下で、エコポイントの景気押し上げ効果も需要の先食いに過ぎ ず、持続力は期待できない。21日の西村副総裁の講演では「新興国か ら景気に持ち直し、それが先進国に波及して、政策効果が消えるころ には緩やかに民間需要の持ち直しへとつながる」との見方が示された。

しかし日本では、政策効果が消える来年前半の弱さが懸念されよ う。個人的には日本がマニフェスト不況とならぬことを願っている。 昨秋以降の需給ギャップの大幅拡大により、その改善には時間が必要 であり、日本のデフレ圧力が長期にわたる可能性は高い。日銀もコア CPI見通しで、3年連続の前年比マイナスを出すと予想する。

10年度は新政権がガソリン税暫定税率の廃止、高速道路の無料化 等を実施することが正式決定となれば、09年度のマイナス幅並みにな る可能性もある。政権交代により国内要因の不確実性も高いと言わざ るを得ない。

14)白川総裁は14日の会見で「時限措置の取り扱いのいかんにかかわ らず、現在の超低金利を維持する」と述べた。日銀は緊急時モードを 解除しても、金融緩和策の出口ではないことを明確にするため、超低 金利施策の維持を繰り返し強調しよう。その前提として、展望リポー トでは10年度はまだ自信のない景気回復、11年度に景気回復が確実 になる姿、デフレ圧力は残っても弱まる方向性が示されるとみる。

よって、現時点では国内で金利正常化に進むのは11年度以降を予 想する。米欧のバランスシート調整の行方を見極め、米国の利上げ実 施から3-6カ月程度遅れるタイミングとなろう。一方、白川総裁は 時限措置について「経済・金融環境を全体的に包括的に点検し、でき るだけ誤解のない形で発表したい」と説明した。

応札額が減ったCP・社債買い入れの終了に反対者は少なくても、 それ以外の支援特別オペや適格担保範囲の拡大等の見直しについては、 日銀内でも意見が分かれていると思われる。9月会合時に景気判断の 下振れ要因から金融環境を削除し、執行部主導で始まった市場への地 ならしだったが、新政権との政策協調の意味合いでは中小企業の資金 繰りにも配慮も見せている。

企業支援特別オペという名前が、その効果以上に過度な期待を抱 かせること、共通担保オペとの技術的な相違点は理解され難いこと等、 日銀サイドが政府への説明に苦労している印象だ。おそらく最終的に 全会一致となる包括的な判断はCP・社債買い入れの終了(もしくは 中止宣言)と、支援特別オペの来年3月までの延長(適格担保拡大等 も延長)になるのではないかとみている。

ただし、30日は展望リポートに専念したい考え方も根強く、意見 を慌てて集約するには適切なタイミングではないように思われる。11 月会合に判断を先送りする可能性の方が高いのではないか。その間の 市場動向を確認できること、11月第1週の米連邦公開市場委員会(F OMC)、イングランド銀行(BOE)、欧州中央銀行(ECB)理事 会を経て、国際決済銀行(BIS)会議で意見交換が可能となる。

仮に30日の会合で企業支援特別オペを終了決定すれば、早めの対 応に一時的な短期金利の上昇もあろうが、低金利継続を強調すること で一時的に終わるだろう。それ以外の場合、CP・社債買い入れ終了 や支援特別オペ等の延長決定であれば波乱はないとみる。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年7月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.1% コアCPI:-1.7%」

2010年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-1.6%」

2011年度「実質GDP:+1.3% コアCPI:-1.0%」

13)物価は人口減・少子高齢化を背景に国内需要が「地盤沈下」を続 け、慢性的なデフレ構造に陥っているところに、米国発のショック、 さらに為替の円高が加わるという複合的なデフレ状況である。11年度 にかけてコアCPIはマイナスで推移しよう。

先の年度のCPI予測が高い数字になるという「CPIの法則」 とでも呼ぶことのできる過去の展望リポートのパターンに沿う形で、 11年度のコアCPI日銀予測のマイナス幅は、10年度よりも小さくな る可能性が高い。

10年度からのいわゆる「ゲタ」にもよるが、11年度の前年度比マ イナス幅が相当小さなものにならないと、日銀としては「年度平均で はマイナスだが、年度後半には月次でプラスになることを織り込んだ 予測数値である」といったような説明は難しいだろう。

仮にそうした説明が成り立つような小さなマイナス幅を日銀があ えて予測する場合でも、少なくとも11年度前半のうちは日銀が利上げ に動くのは困難だろうと市場は受け止めるのではないか。

14)10月第1回の会合で見直し決定が見送られた背景には、政府側の 一部閣僚からのけん制発言が影響していると考える。日銀法第4条に 定められている「意思疎通」が不十分な状態が現出しているとも言え る。次回もしくは次々回の会合で、政府側の理解を得た上で、CPと 社債の買い入れについて年末打ち切りが決まるとみる。

企業金融支援特別オペについては、共通担保資金供給オペへの事 実上の振り替えによる規模縮小が、市場へのショックが少ない妥当な 落としどころ。白川総裁が「偽りの夜明け」を警戒する姿勢を崩すよ うなことでもない限り、市場に及んでいる事実上の「時間軸」効果は 引き続き安泰だろう。

ただし、共通担保資金供給オペについては、落札レートがいつも

0.1%というわけにはいかない。0.1%プラスアルファの金利が足元で の日銀オペによる平均的な調達金利になっていくわけで、若干ながら 短期市場の各種レートを持ち上げる影響はある。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年度後半以降(2011年半ば以降) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(0.25%)

12)2009年度「実質GDP:-3.1%、コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+1.3%、コアCPI:-0.9%」

2011年度「実質GDP:+1.2%、コアCPI:-0.3%」

13)回答なし

14)現在の日銀は時間軸政策を採用していないが、事実上、超低金利 が長く継続されるという時間効果軸効果は円金利に最も表れている。 主要通貨の2年物OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ) レートを比較すると(21日現在)、円0.2125%、ドル1.085%、ユー ロ1.386%、ポンド1.628%である。

10月14日の白川総裁会見、21日の西村副総裁講演で説明されて いるように、日銀は出口戦略の定義づけを行っている。日銀は早けれ ば時限措置の「包括的な見直し」を10月末の決定会合で発表する可能 性があるが、それは出口戦略とは異なることを強調するだろう。

日銀は同時に発表する展望リポートで景気には上振れリスクより も下振れリスクの方が強いことをあらためて示し、11年度までCPI がマイナスと予想されることを提示しよう。その結果、事実上の時間 軸効果を強く市場に与えることになると思われる。なお、日銀は潜在 成長率を1%を下回る水準で推計していると思われるため、12年度に はCPIがプラスになるとイメージしているのではないか。

時限措置の見直しに関しては、担保範囲の拡大、当座預金への付 利は継続、CP、社債の買い入れは年末で停止だろう。日銀幹部の発 言を考慮すると、日銀は企業金融支援特別オペの見直しにも意欲的で あるように見える。ここで民主党政権との間で強い摩擦が起き、日銀 が政府からの信頼を失うと、先行きの(当分先だが)真の“出口政策 ”の際に問題が生じる恐れがある。

このため、特別オペを見直す場合は、マーケットに動揺を与えな いように、丁寧に他のオペで代替的な資金供給を行うようにすべきだ ろう。特別オペを12月で停止することはせず、1-3月は共通担保オ ペへの移行期間とすべきと思われる。

例えば、これまでおおよそ毎週オファーされてきた特別オペの頻 度を徐々に減らし、代わりに3カ月物の共通担保オペを増額気味に、 かつ市場が予見できるスケジュールで実施していくという手法が考え られる。来年4月以降に完全に共通担保オペに移行させるか否かは、 市場の様子を見ながら2月ごろに決定すればよいのではないか。

特別オペをやめることで短期金利が上がるか否かは、結局は日銀 の金融調節の“さじ加減”次第だ。移行期に市場で不安が高まらない ように、他のオペを増額したり、日銀当座預金残高を一時的に増加さ せるなどすれば、全体のレートの上昇は抑え込まれるだろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.0% コアCPI:-1.8%」

2010年度「実質GDP:+2.0% コアCPI:-1.7%」

2011年度「実質GDP:+1.6% コアCPI:-0.7%」

13)日本の景気循環は輸出の影響を最も大きく受けるが、最近のアジ ア諸国の輸出は堅調に推移しているので、当面日本の鉱工業生産の腰 折れを過度に懸念する必要はなさそうだ。また民主党政権による10 年度の財政支出は当初予想を上回る可能性が高まっているため(ただ し09年度は公共事業の削減などにより09年度GDPを0.1%ポイン ト下方修正した)、財政支出削減による景気下振れ懸念も薄らいだ。

さらに、ポジティブサプライズとして、資本財出荷の増加を挙げ ることができる。第3四半期のコア資本財出荷(輸送機械を除く)が 前期比プラスになりそうなので、設備投資の底打ち時期はやや早まり そうだ。10年度GDPの弊社予測2.0%の蓋然(がいぜん)性は高い。 今後数カ月の焦点は雇用だ。有効求人倍率がほぼ底を打ち、雇用者数 (労働力調査)も2カ月連続で増えるなど改善の兆しが見える。

失業率も第1四半期までにはピークアウトが見込まれる。雇用が 増え始めると消費者マインドもさらなる改善が期待できる。もっとも 需給ギャップは依然大きく、成長率の多少の上振れでは物価下押し圧 力は消えない。日本のフィリップスカーブは不安定だが、基本的に需 給ギャップが消えない限り、コアCPIのマイナスは続く。

日銀は展望リポートで11年度もコアCPI前年比マイナス基調 が続くと予想しよう。ただし需給ギャップが縮小するのに伴い、コア CPI前年比(大勢の見通し)は-0.5%から-1.0%の間に縮小するで あろう。09年度、10年度の見通しは4月展望リポート並みを予想する。

14)30日にはCPと社債の買い入れ停止(12月末)が決定されるだろ う。特別オペについては、いずれ共通担保オペに吸収されるであろう が、30日の会合では検討はされるものの決定には至らず、来年3月ま で期限延長されると予測する。主要銀行貸出動向アンケート調査や企 業から見た銀行の貸し出し態度が改善されていない状況下で、特別オ ペを停止するのは困難だ。

特別オペを停止すれば短期金利が若干(数ベーシスポイント)上 昇しようが、実体経済への影響はほとんどないだろう。問題は、市場 が日銀の利上げを織り込み始める可能性だが、デフレが続く状況から 見て10年度に利上げする可能性は極めて小さい。日銀は展望リポート の11年度コアCPI前年比見通しがマイナスであることを強調し、市 場に対し利上げは「まだまだ先」であることを印象付けるだろう。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年1-3月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.25%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)2009年度「実質GDP:-2.9% コアCPI:-1.6%」

2010年度「実質GDP:+1.4% コアCPI:-1.4%」

2011年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-0.3%」

13)二番底懸念があるが、企業部門についてはアジアなどの輸出増に 支えられて堅調に推移し、「景気腰折れ」ではなく、10年初めは「景 気減速」の範囲にとどまるのではないか。日銀は11年度も低成長、物 価下落の展望を示し、金融緩和をなるべく長期化させるアナウンスを 発するとみられる。

14)日銀は次回会合でCP・社債の買い入れを停止する措置にチャレ ンジする可能性は高い。前回も後から藤井財務相は寛容姿勢に変わっ た。ここは民主党との意思疎通が試される。一方、特別オペはいった ん期限延長という条件設定で段階的なアプローチを採ると考えられる。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年10-12月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.0% コアCPI:-1.7%」

2010年度「実質GDP:+0.8% コアCPI:-1.8%」

2011年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-1.0%」

13)現在の景気の持ち直しはあくまで国内外における在庫復元の動き や各国の財政政策の効果によるものであり、日銀も認識している通り、 自律回復メカニズムが作動し始めているわけではない。本来、経済が 不況によって大幅な負の需給ギャップを抱えている場合、自律的な景 気回復が始まれば、成長率は潜在成長を上回るペースへ加速する。

今回の展望リポートでは、11年度の見通しが初めて示されるが、 最大の焦点は予想期間内において成長率の加速をもたらす自律的な景 気回復が示されるかという点だろう。結論を先に言えば、10年度、11 年度の成長率見通し(政策委員の大勢見通しの中央値)は、日銀が 「1%前後」とする潜在成長率を多少上回る程度の緩やかな回復に とどまり、自律的な回復のもたらす成長率加速は描かれないだろう。

10年に入ると在庫復元や財政政策の効果がはく落するため、成長 率が抑制される(筆者は景気が踊り場入りするリスクは高いと考えて いる)。民主党政権の歳出組み替えに伴い短期的に総需要が抑制され る可能性がある。公共投資など政府支出削減を財源に家計部門向けの 所得移転が予定されているが、長期的な効果はともかく短期的には減 税の政策乗数は歳出に比べ低いため、総需要が抑制されるかもしれな い。

日銀がこの点を「踊り場」をもたらすリスクとして明示するか、 非常に興味深いところだ。ちなみに、非効率な政府支出の削減を財源 に家計部門向けに所得移転が行われるのであれば、長期的な乗数はむ しろ高いかもしれない(家計は効用を高めるべく、望ましい支出行動 を取るはずである)。

また、自律的回復のメカニズムが始まるためには、企業業績のみ ならず、家計の所得(主に雇用者所得)にも回復が波及する必要があ る。それが新たな支出へとつながる。しかし、企業業績は最悪期を脱 し黒字化しつつあるとは言え、収益率は相当に低い状態であり、人件 費を含めコストカットをなお余儀なくされている状況である。

この結果、雇用者所得については下げ止まりの時期を模索するの が精一杯であり、明確な回復の見通しを示すことは難しい。日銀のG DP成長率見通しは09年度-3.2%、10年度+1.2%、11年度+1.2%。コ アCPIは09年度-1.5%、10年度-1.0%、11年度-0.6%と予想する。

14)展望リポートでは3年連続の物価下落が示されると思われるが、 「中長期的な物価安定の理解」との整合性から、追加的な金融緩和が 必要と考える向きもあるだろう。ただし、日銀の掲げる「中長期的な 物価安定」とは、持続的な景気回復と整合的な状況である。

現在のデフレを一気に収束させるためには、短期的に大幅な経済 変動が必要となるが、そうした状況はバブルや資源価格高騰などの望 ましくない帰結を引き起こす「持続的ではない景気回復」というのが 日銀のスタンスだ。金融危機やデフレスパイラルが懸念される状況に 陥らなければ、現在の超低金利政策の継続で対応すると思われる。

企業金融支援策については、経済状況や信用市場が回復を続けて いるため、年末に期限の来るこれらの措置は再延長を行わない可能性 が高い。景気の先行きは依然として不透明で、ダウンサイドリスクは 少なくないが、そうした不確実性が完全に解消されることはあり得な いため、ある程度、割り切った判断が行われるだろう。

資源配分に歪みをもたらすという長期的なコストを考慮すると、 不透明さが続く限り異例の措置を続けるのは不適切、というのが日銀 のスタンスだ。政府の政策との整合性次第ではあるが、11月以降、年 末打ち切りの決定が行われる可能性が高い(期限は年末であるため、 急いで10月末に決定する必要はないのでは)。

●モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :2009年10-12月(同) 3)利上げ時期 :2011年1-3月(同) 4)09年12月末 :0.05%(同) 5)10年3月末 :0.05%(同) 6)10年6月末 :0.05%(同) 7)10年9月末 :0.05%(同) 8)10年12月末 :0.05%(同) 9)11年3月末 :0.25%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.5% コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+0.9% コアCPI:-0.9%」

2011年度「実質GDP:+0.9% コアCPI:-0.3%」

13)国内経済は1-3月の景気の谷から半年にわたる回復を経て、遅 行指標である雇用・消費関連データに持ち直しの兆しが見られる一方、 一致指標の鉱工業生産および製造工業生産予測調査は既に回復局面の スイートスポットを過ぎつつあることを示唆している。

景気は過去半年間の在庫復元による急角度の回復期を終え、先行 き09年度下期は、在庫復元需要のピークアウトや政策需要のはく落か ら10年1-3月にかけややもたつくことが懸念される。米国経済もI SM等の一致指標の改善が国内同様ややもたついている上、遅行指標 である雇用が引き続き悪化しており、こちらも10-12月はやや足踏み 感が出る可能性がある。

7-9月以降の需要の持ち直しを受け、コアCPIは徐々に伸び 率を回復すると見込まれるものの、雇用・生産設備といった生産資源 の過剰感が根強い中、物価も結局は伸び悩もう。中期的には、商業用 不動産の価格下落等、資産価格の下落から派生する一般物価への下押 し圧力が懸念されるところだ。

縮小しない需給ギャップを背景に、日銀の物価予想は10年度に続 き11年度も「物価安定の理解」の下限0%を大きく下回ろう(弊社の見 込む日銀予想:09年度-1.4%、10年度-1.0%、11年度-0.8%)。そう した予想は先行きの政策コミットメント(約束)に関するメッセージ性 を持とう。

すなわち、コアCPIが中長期的な「物価安定の理解」の下限0% に近づくめどが立つまで、出口戦略は封印されるとの市場の期待から、 量的緩和時(特に03年10月に解除条件を定量的に定めてから)にみ られた「時間軸効果」があらためて強力に発揮されよう。

14)今年5月以降、日銀が景気の現状判断を連続して上方修正したこ と、株・為替市場が足元比較的安定していることから、弊社が見込む 追加緩和の可能性が後退していることは否めない。しかし、賃金デフ レが生活必需品中心に一般物価に広範に影響する中、デフレに真剣に 対峙(たいじ)しないと見られがちな日銀の姿勢は政治サイドからの 批判にもさらされやすいだろう。

また、主要国でデフレが最も深刻な日本が企業金融支援措置の見 直しによりいち早く出口戦略の行使に乗り出そうとしているため、海 外投資家は日本のマクロ政策が非整合的であるという厳しい見方を示 している。従って、金融市場の動向に加え、例えば雇用情勢の一段の 悪化から政治的圧力が強まり、日銀が追加緩和を実施する可能性は依 然否定できない。

その際、量的緩和拡大や時間軸政策の再採用といった方策が考え られよう。09年度の税収の大幅未達で国債の大幅増発が不可避となる 中、国債市場が仮に不安定化すれば、国債買い入れの一段の拡大とい った選択肢も排除できない。一方、白川総裁が意欲を示す企業金融支 援措置の見直しは、政策委員会の合意形成の困難さから30日の会合で は決定が先送りとなる可能性がある。

政官界との合意形成も困難で、同措置は11月会合で3月末まで延 長の可能性が高いとみる。仮に見直しとなる場合、CP、社債買い取 りは金融機関からの入札がほとんどなく残高も大きくないため、買い 入れ停止は単なる手続きにすぎず、影響はほとんどないと考えられる。 しかし、企業金融支援特別オペの廃止・見直しは、ターム物金利やC P・社債の信用スプレッドに少なからぬ影響を与えるとみられる。

白川総裁は、共通担保オペなど他の変動金利方式の資金供給手段 との差は小さくなっていると述べたが、固定金利型入札と変動金利型 入札とでは金利への影響はやはり異なるし、特別オペがあるために共 通担保オペの金利が低下している面もあろう。従って、特別オペが廃 止されればターム物金利やフォワードレートの上昇が懸念される。発 行体の信用力によってCPスプレッドが拡大する可能性もある。

国内CP市場は流動性がさほど高くないため、金利はおおむね一 方向に動く。現在は日銀の特別オペの影響や市場の流動性不足から、 CP利回りが短期国債利回りを下回るという異例の状況にあることは 総裁も指摘の通りだが、先行きは、日銀の担保政策次第で発行体の銘 柄や業種によってスプレッドに格差が生じ、不動産やノンバンクなど、 一部業種のスプレッドが拡大する可能性がある。

白川総裁は先行き市場参加者に誤解のない形で発表の在り方を検 討すると述べたが、市場は日銀がデフレの真っただ中で他の主要国の 中銀に先駆けて金融引き締めに転じると受け止める恐れがある。中小 企業向け金融が政治的に微妙な状況にある現在、日銀のタイミング的 に微妙な判断が政治的に裏目に出る可能性もあろう。

●HSBC証券の白石誠司チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年度以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.3% コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+1.1% コアCPI:-1.4%」

2011年度「実質GDP:+1.1% コアCPI:-0.7%」

13)以下の諸点において10年前半における景気踊り場入り公算は高ま っていると判断している。①大デフレギャップ下での民間最終需要停 滞基調継続②大デフレギャップ下で時間の経過とともに期待成長・期 待インフレ率が着実に低下する公算③本邦生産モメンタムに3-6カ 月先行する米製造業ISM新規受注指数の8月ピークアウト公算④内 外財政政策効果の減衰⑤民主党の補正予算一部凍結方針⑥円高進行。

物価は当面、前年原油・商品市況高の反動としてのデフレは秋口 以降縮小するが、コア・コアデフレ、サービスデフレ圧力はむしろ強 まる方向。10年度の揮発油税廃止、11年度のCPI基準改定など、テ クニカルなデフレ圧力も続く。

日銀コアCPI見通しは09年度-1.4%、10年度-0.9%、11年度 -0.4%を予想。10年度は政策効果によるデフレ圧力(揮発油税廃止等) を反映させると想定。11年度は10年度をやや上回る成長率想定の下 で緩やかなデフレ縮小継続を想定するのではないか。

14)デフレ下での、または米連邦準備制度理事会(FRB)より先の 利上げは考えにくい。一方、日銀はデフレギャップが縮小傾向にある 限りにおいては追加緩和策の必要はないと考えているもよう。ただ、 今回の循環回復局面で世界的にバランスシート調整が終わるとも考え にくく、日銀指摘の下振れリスクの幾つかが実現して利上げの前に追 加緩和措置を取る必要が生じるリスクも少なからずある。

企業支援策については、30日会合で社債、CP買い入れの年内中 止、中小企業金融改善の遅れに配慮して特別オペを縮小した上での3 月までの継続、短期金融市場機能確保の観点から補完当座預金制度の 延長などが決定されよう。以上の決定内容であれば市場の反応はない に等しいだろう。

仮に特別オペが廃止される場合、一方で09年度2次補正による国 債増発が短期ゾーンに集中する可能性をも踏まえると短期金利水準に 影響が出る公算があるが、短期金利は伝統的資金供給によるグリップ が効く領域であり、大混乱には至らないだろう。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-2.3% コアCPI:-1.6%」

2010年度「実質GDP:+2.2% コアCPI:-0.9%」

2011年度「実質GDP:+0.9% コアCPI:-0.6%」

13)短期的には景気二番底のリスク。輸出ピークアウト、個人消費反 落、公共投資減少が背景。10年1-5月の景気がかなり弱くなる可能 性。コアコアベースのCPIは-1%近傍で来年央まで推移。世界景気 は片肺型飛行。新興国景気は堅調ながら米欧の内需は脆弱。ドル安基 調は継続。

中期的な景気見通しは悪化傾向。10年度は子ども手当などの各種 所得補てん措置によって2%成長を達成するだろうが、11年度は1% 弱に減速。財政引き締め(各種増税措置)の効果が顕在化へ。賃金デ フレの傾向は終息せず。

日銀はバックワード・ルッキング的に景況感を改善させており、 基本シナリオでは景気の持続的回復を展望。10年度、11年度ともに 1%台半ば~後半の成長を描くことに。CPI見通しは11年度にゼロ 近傍とし、追加緩和論をけん制へ。

14)国内景気はアップダウンを伴いながら、緩やかに回復する可能性 はあるが、需給ギャップは大幅なマイナスで推移する見込み。デフレ 深刻化のリスクは大きい。また、財政赤字は趨勢(すうせい)的に膨 張へ。一定のプラスのインフレ率を早期に達成することが望まれてお り、金融政策は緩和度合いをむしろ強める必要がある。

しかし、日銀が金融緩和度合いを強める可能性は当面低い。金融 システムが安定しており、デフレ期待が強まっているわけではないと いうのが日銀の考え方。逆に言えば、国内金融システムにストレスが かかり、家計・企業のデフレ期待が強まれば、追加緩和あり、という ことになる。タイミング的には来年度後半が有力。しかし、利下げは なく、輪番オペ増額や購入資産メニューの拡大へ。

企業金融支援策に関しては、12月末をめどに停止することを基本 方針としながらも、機動的、柔軟に延長できるオプションも残すとい う中途半端なものになろう。結局、来年3月末までは延長することに。

●大和総研の田谷禎三特別理事 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年4-6月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.25%(同) 11)11年9月末 :0.25%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.0% コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+1.5% コアCPI:-1.0%」

2011年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-0.5%」

13)鳩山政権下での歳出拡大がより明確になってきた。当面の景気下 支えにはなろうが、需給ギャップを2年程度で解消するには力不足だ ろう。ただ、実際のコアCPI変化率は為替レートの動きやエネルギ ー以外の商品市況に左右されるので予想は難しい。日銀の想定する物 価変化率は-1.5%(09年度)、-1.0%(10年度)、0.0%(11年度)。

14)CP、社債の買い入れ停止はいつ行われても不思議ではないし、 そのインパクトはほとんどないだろう。企業金融支援策を止めるのは 難しいだろうが、担保の見直しは行われるだろう。政策金利の引き上 げは物価が下落する下ではやはり難しいだろう。ただ、円安や商品市 況の高騰などによって物価が上がれば、来年度以降のどこかのタイミ ングで引き上げのチャンスがあるかもしれない。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2010年10月以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.30%(同) 9)11年3月末 :0.30%(同) 10)11年6月末 :0.30%(同) 11)11年9月末 :0.50%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.6% コアCPI:-1.4%」

2010年度「実質GDP:+0.4% コアCPI:-0.8%」

2011年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-0.5%」

13)米国経済はフロー面では最悪期を脱したと考えられる。金融機関 の決算等を好感し、NYダウが一時10000ドルを超えた。一方、商業 用不動産価格の下落などによって金融機関、特に地方の中小金融機関 が抱える不良債券などストック面に調整はまだ完了していない。中小 金融機関の破たんスピードも緩和しておらず、クレジットリスクに対 する警戒感は根強い。今後の株価調整の可能性は否定できない。

日本は10月の月例経済報告で3カ月続けて景気は持ち直してい るとされたが、景況感の本格的な回復はもう少し先になろう。特に8 月上旬以降の円高により、企業業績への圧迫感が強く、失業率も高止 まりしている。日本経済の成長期待は低く、企業のリストラ圧力によ って雇用・所得環境の回復は遅れている。それに伴い、デフレ圧力の 高まりも懸念される。今後、需要低迷による物価下落圧力が残る。

展望リポートでは09年度のGDP、物価ともに前回近辺の予想に 落ち着くだろう。10年度は雇用環境の弱さと企業収益の悪化懸念の高 まりにより、前回内容からやや下方修正される可能性もある。11年度 も高い成長率は期待できず、1.0%近辺の成長になると予想される。物 価は11年度もマイナス水準が予想される。

14)CP、社債買い入れに対する札割れの状況や、わが国企業のこれ らの金融商品に対する依存度の低さを勘案すると、日銀内部でもこの 2つの非伝統的措置に対する市場からのニーズは低下しており、扱い を停止したとしても大きな悪影響は発生しないとの見方が有力になっ ているとみられる。そのため、今後、当初設定された期限を前提とし て、買い入れの停止を実行することが俎上(そじょう)に上るだろう。

ただ、世界経済の状況を考えると、安易に政策変更のサインを出 すことに懸念があることに加え、政府からの強い要請があることを考 慮することになろう。背景要因の1つに、民主党政権による貸し渋り・ 貸しはがし対策法案が4-5年をその対象期間としていることもあり、 金融機関は全般的にクレジットリスク管理に対してより厳格な姿勢で 臨むことが予想される。

そうなると、金融機関の収益回復期待が低い中で、中期的にはク レジットリスクへの警戒感は高水準で推移する可能性が高い。そのた め、企業の連鎖的な破たんや投資家心理の一段の悪化、信用収縮懸念 が再燃する可能性も完全には払拭(ふっしょく)できない。金融市場 の最後の貸し手としての日銀は依然、重要な存在と考えるべきだ。

次回の決定会合で、CP、社債買い入れ策を年内に停止するとの 結論に達する可能性は高いものの、株式市場が不安定な動きを示すよ うな場合には、企業金融の安定化だけでなく、今後の投資家心理の安 定を狙った措置として、企業金融特別オペの継続が議論されることが 考えられる。

ただ、その場合でも、より厳格な基準、例えばメーンバンクがそ の企業に対してどのような見方をしているかなど、より詳細かつ厳密 な適用基準とオペの期限を明記した上での延長となることも考えられ る。日銀としても経済の自律回復が遅れ気味な状況下、市場機能を維 持させつつ、投資家心理の急激な悪化を防ぎ、経済活動を支えていく のかという難しい政策コントロールを模索することになるだろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :CP・社債オペ停止、特別オペ停止ないし上限設定 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年8月(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.2%、コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+0.8%、コアCPI:-1.3%」

2011年度「実質GDP:+1.9%、コアCPI:-0.2%」

13)民主党の補正予算一部執行停止の影響もあり、景気二番底のシナ リオが濃厚。業況感は戻っているが、肝心の設備投資計画は下方修正 中。日銀の見通しも09、10年度についてはほとんど7月と変わらず。 11年度も潜在成長率は超えるが、物価はマイナスだろう。米国は9月 に自動車減税停止の影響で製造業活動が減速したが、その後の指標を 見るとまだモメンタムは維持されている。

14)執行部は信用緩和策の停止に向けた地ならしを進めており、次回 会合で決定するだろう。だが、あえて次回会合で決定するのは、慎重 な景気・物価見通しの提示と、デフレ対策としての低金利継続へのコ ミットを同時に示すためだろう。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2011年7-9月(2011年7月) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.30%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.3% コアCPI:-1.5%」

2010年度「実質GDP:+1.0% コアCPI:-1.5%」

2011年度「実質GDP:+1.5% コアCPI:-0.6%」

13)日米景気ともに二番底や腰折れは想定しない。とはいえ、国内景 気持ち直しのスピードは今年4-6月、7-9月と比べると明確に鈍 化する可能性が高く、経済活動の「絶対水準」は直近ピークを中期的 にかつ大幅に下回り続けることが避けられなくなっている。この点は、 生産設備や雇用・人件費の過剰感の継続を通じ、民間内需を圧迫し続 けると同時に、大幅な需給ギャップを通じて物価を強く下押しよう。

全国CPIで下落品目(前年比ベース)の比率は直近で50%を上 回る水準まで上昇しており、物価下落圧力は「強まり」と同時に「広 がり」を見せている。今後は賃金の下落傾向が続く中、経済活動は基 調としては持ち直していくため、単位労働コストが大幅に下落、これ が追加的な物価下落圧力になると予想される。日銀もわれわれと同様、 11年度のコアCPIは前年比-0.5%程度を予想するとみている。

企業はグローバルにみても「大幅な値下げをすればシェアが取れ る(値下げしないとシェアが取れない)」との認識を強めているように 思える。米国の年末商戦も企業による大胆な値引きにより、数量ベー スでは底堅く、金額ベースでは厳しいという姿になるのではないか。

14)次回の利上げは2011年7-9月を予想している。日銀は単なる物 価下落(デフレ)とデフレスパイラルを峻別(しゅんべつ)しようと する傾向が強いが、スパイラルではないにせよ、現在のデフレの「強 まり」と「広がり」は正常な経済情勢とは判断し難い。金利政策につ いては企業金融支援措置の停止・見直しに合わせて、現行政策へのコ ミットメントをより明確な形で発信することも一案と言えよう。

先行き不透明感が根強く残るこのタイミングで、企業金融支援措 置の終了・見直しを行うことにはやや違和感があるが、最近の日銀幹 部による情報発信をみれば、その可能性が高くなっていると判断され る。外生的要因で国内経済・金融情勢が悪化すれば、これらの措置の 停止・見直しは金融環境に相応の悪影響をもたらす可能性があるが、 そうでない限り、影響はmanageableだろう。

●バークレイズ・キャピタル証券森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持、企業金融オペの一部停止 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2011年後半以降(同) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(同)

12)2009年度「実質GDP:-3.0%、コアCPI:-1.6%」

2010年度「実質GDP:+1.5%、コアCPI:-1.1%」

2011年度「実質GDP:+1.2%、コアCPI:-0.3%」

13)アジア経済の回復は依然として日本経済にとってのポジティブ要 因だが、米国向け輸出の伸びには陰りも見え始めている。設備稼働状 況が十分な水準まで戻っているのは一部のハイテク関連だけという現 状では、引き続き設備投資、物価、賃金等の見通しは暗い。日銀のC PI見通しは09年度-1.6%、10年度-1.0%、11年度-0.2%といった数 値を予想する。

14)CP、社債買いオペの停止と、企業金融支援特別オペに年限短縮、 ボリュームに制約を付けるような見直しを行った上で、3月末の状況 次第で4月以降の停止といったスケジュールを想定。特別オペの修正 があっても、既に共通担保オペのレートが0.1%に接近してきている 状況からすると、短期金融市場へのインパクトはそれほど大きくはな らないはず。

●ゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフエコノミスト 1)今回会合 :CP、社債買い入れ等の企業金融支援策の停止 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 : 2011年12月(2011年度以降) 4)09年12月末 :0.10%(同) 5)10年3月末 :0.10%(同) 6)10年6月末 :0.10%(同) 7)10年9月末 :0.10%(同) 8)10年12月末 :0.10%(同) 9)11年3月末 :0.10%(同) 10)11年6月末 :0.10%(同) 11)11年9月末 :0.10%(0.30%)

12)2009年度「実質GDP:-2.5% コアCPI:-1.6%」

2010年度「実質GDP:+1.2% コアCPI:-0.7%」

2011年度「回答なし」

13)コアCPI上昇率は09-10年度にかけマイナスの領域で推移した 後、下落幅は11年度には縮小へと向かうものの、なお高水準の需給ギ ャップを背景に下振れるリスクが大きい状況が続く。

14)CP、社債買い入れ停止については、基本的には同オペの満期到 来を待って終了する可能性が高い。企業金融における逼迫(ひっぱく) 感は、大企業を中心に大幅に後退しているため、同オペの中止が即金 融市場、実体経済に大きな影響を及ぼす状況は考えにくいが、市場が これを量的緩和策解除の布石ととらえる場合には、スプレッド拡大等 不慮の影響が及ぶリスクが残る。

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